ダイハツ『ロッキー』のOEM車であるトヨタ『ライズ』。そして、ダイハツ『トール』のOEM車であるトヨタ『ルーミー』が大ヒットしている。トヨタの販売力もあるとはいえ、ここまで大ヒットするとは思わなかったのではないだろうか。
とはいえ、売れているのは本家ではなく、OEM先であるトヨタである。OEMをするメリットとは何か? そして気になるOEMを供給する側と受ける側では、どちらが儲かるのか? そもそもそんなにOEMとは儲かるものなのだろうか?
今回は気になるOEM事情について考察していきたい。
文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA、DAIHATSU、SUBARU、編集部
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■OEM車は営業力で儲かります!! だが、しかし……
OEMは「相手先ブランド製造」などと訳される。クルマの分野では、ダイハツが『ロッキー』の開発と製造を行い、内外装を少し変えてトヨタにも供給する。それがOEMだ。
今のダイハツは、トヨタが100%出資する完全子会社だから、OEMも活発に行う。コンパクトSUVの『ロッキー』に加えて、コンパクトカーの『ブーン』と『トール』も、『パッソ』と『ルーミー』としてトヨタに供給されている。
そしてダイハツは軽自動車、トヨタは小型/普通車の販売が得意だ。従って登録台数を比べると、製造メーカーとなるダイハツブランドの『ロッキー/ブーン/トール』よりも、トヨタブランドの『ライズ/パッソ/ルーミー』が圧倒的に多い。2020年における1カ月の平均登録台数は、トヨタ『ライズ』が1万503台で、ダイハツ『ロッキー』は2596台であった。トヨタ『ルーミー』は7270台で、ダイハツ『トール』は1642台だ。いずれもトヨタブランド車は、ダイハツブランド車の約4倍売れている。
ただし、トヨタとダイハツの小型車のように、OEM車の売れ行きが製造ブランド車を上まわることは珍しい。例えばスズキは、マツダに軽自動車を数多く供給している。商用車に関しては、日産と三菱にも供給を行う。この内、スズキ『スペーシア』は2020年の1カ月平均届け出台数が1万1654台であったが、OEM車のマツダ『フレアワゴン』は986台だ。OEM車は製造ブランド車の8%に留まる。
同様にダイハツは、スバルとトヨタに軽自動車を供給している。ダイハツ『タント』は2020年の1カ月平均届け出台数が1万807台だったが、OEM車のスバル『シフォン』は378台だ。OEM車は製造ブランド車の3%に過ぎない。
このようにトヨタ以外のOEM車は、大量に売れるわけではなのに、軽自動車では車種数が多い。特に軽商用車は活発で、スズキエブリイは、マツダ『スクラムバン』/日産『NV100クリッパー』/三菱『ミニキャブバン』として供給される。製造メーカーのスズキを含めると、同型の軽商用バンを4メーカーが扱う。乗用車メーカー8社の内、半数が実質的に同じクルマを販売しているわけだ。
スズキ『エブリイ』のライバル車となるダイハツ『ハイゼットカーゴ』も、スバル『サンバーバン』/トヨタ『ピクシスバン』として供給され、3メーカーが販売する。
そうなると8社の中で、軽自動車のOEM関係を結んでいないのはホンダだけだ。ホンダは軽商用バンとして、『N-BOX』をベースに開発した『N-VAN』を扱う。
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