国土交通省は、2021年3月31日、令和2年末時点での「燃費の良い乗用車ベスト10」を発表した。
その上位に入る車種は、1位:ヤリス(WLTCモード燃費は36km/L)、2位:プリウス(32.1km/L)、3位:ヤリスクロス(30.8km/L)、4位:カローラスポーツ(30.0km/L)、5位:アクア(29.8km/L)と、1位から5位までは、すべてトヨタのハイブリッド車が占めた。
そしてベスト10車の内、7車がトヨタ車であった。
まさに低燃費車においては、トヨタの独壇場といってもいいのではないだろうか。しかし、なぜ他メーカーは、ここまで差を広げられてしまったのか? 他メーカーは追いつけないのか、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部 トヨタ
【画像ギャラリー】燃費良好のトヨタ車とライバル車との違いはどこにある?
■トヨタ車の燃費はなぜここまで凄いのか?
■燃費のよい乗用車ベスト10(普通・小型自動車部門)
1位:トヨタ ヤリス/36.0km/L
2位:トヨタ プリウス/32.1km/L
3位:トヨタ ヤリスクロス/30.8km/L
4位:トヨタ カローラスポーツ/30.0km/L
5位:トヨタ アクア/29.8km/L
6位:日産 ノート/29.5km/L
7位:ホンダ フィット/29.4km/L
8位:トヨタ カローラ/29.0km/L
8位:トヨタ カローラツーリング/29.0km/L
10位:ホンダ インサイト/28.4km/L
※WLTCモード燃費
プリウスに3.9km/Lという大差をつけて堂々1位となったヤリスハイブリッドXの36.0km/Lは、実用燃費でもライバル車を大きく引き離す。
装備の充実した最上級グレードのハイブリッドZでも35.4km/Lだから、ヤリスハイブリッドの燃費効率は全般的に優秀だ。少なくとも日本で購入可能な乗用車では、燃費が最も優れている。
WLTCモード燃費が36.0km/LのヤリスハイブリッドXであれば、二酸化炭素の排出量も64g/kmだから、平均を95g/kmとする欧州の規制値を大幅に下まわる。それにしてもヤリスハイブリッドの燃費性能は、なぜここまで優れているのか。
ヤリスとヤリスクロスのハイブリッドシステムは、M15A型直列3気筒1.5Lエンジンを含めて新開発された。アクアなどが搭載する直列4気筒1.5Lのハイブリッドとは本質的に異なる。
M15A型エンジンのベースは、RAV4やハリアーが搭載するM20A型直列4気筒2Lエンジンだ。M20A型から1気筒をカットすることで、3気筒の1.5Lを開発した。
そのためにM15A型が装着するシリンダーの内径寸法は80.5mmになり、行程寸法は97.6mmだ。M20A型と同じ数値になる。高いコストを費やして高効率なエンジンを開発したら、それを気筒数も変えることで幅広い車種に搭載すれば、開発費用まで含めて効率を一層向上させられる。
ヤリスのハイブリッドに組み合わせられるM15A-FXE型エンジンは、圧縮比を高めて燃費効率を向上させた。高効率吸排気ポート、レーザークラッドバルブシートなども採用され、燃焼効率を多角的に改善させている。
このほか多岐にわたる機能が刷新され、大幅に小型化された電動ウォーターポンプ、粘度の低いオイルなども使う。その結果、熱効率は従来の1.5Lハイブリッドに比べて2%向上しており40%に達した。
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