■全方位での開発によって優れた燃費を実現
ハイブリッドシステムでは、中核的なメカニズムとなるトランスアクスルも新開発された。出力と効率を高めたモーター、高電圧化、潤滑方式の見直しなどによって効率を向上させている。
パワーコントロールユニットも改善された。駆動用電池は、従来の1.5Lハイブリッドはニッケル水素電池であったが、ヤリスハイブリッドは充放電効率の優れたリチウムイオン電池を採用している。
このほかヤリスハイブリッドの低燃費には、軽量化も大きな影響を与えた。まずプラットフォームは、TNGAの考え方に基づいたタイプに刷新された。効果的な補強をフロントサスペンション付近、ボディ中央のピラー(柱)、ドアの開口部、リアゲートの開口部、ボディの底面などに施している。
その効果として、走行安定性、操舵に対する車両の反応、乗り心地まで、さまざまな運転感覚を向上できた。
しかもボディ剛性の向上に加えて安全装備なども進化させた上で、従来型ヴィッツハイブリッドに比べて車両重量を軽減させている。ヤリスハイブリッドXの車両重量は1050kgだから、従来型ヴィッツハイブリッドFの1100kgに比べると、各種の機能を高めながら50kg軽くなった。
ヤリスの場合、ハイブリッドとノーマルエンジン車では、燃料タンク容量も異なる。ノーマルエンジン車は40L(4WDは42L)だが、ハイブリッドは後輪をモーターで駆動する4WDを含めて36Lに抑えた。
車両重量は満タンにした状態で計測するので、燃料タンク容量を小さく抑えると、数値上は車両重量を軽くできる。ヤリスハイブリッドは前述の通り燃費性能が優れているので、燃料タンク容量が36Lでも十分という考え方だ。
これらの効果もあり、3眼フルLEDヘッドランプ、6スピーカーシステム、シートヒーターなどを装着する最上級のハイブリッドZでも、車両重量は1090kgに収まる。WLTCモード燃費は35.4km/Lだ。Xの36.0km/Lは少し下まわるが、依然として抜群の燃費性能を誇る。
ヤリスハイブリッドXのWLTCモード燃費が36.0km/Lに達した背景には、タイヤの転がり抵抗を抑えたことも利いている。
ハイブリッドXが装着する14インチタイヤ(175/70R14)は、低燃費指向のエコタイヤで、指定空気圧は前輪が250kPa、後輪も240kPaと高い。エコタイヤの空気圧をさらに高めることで、タイヤが路上を転がる時の抵抗を一層小さく抑えた。
細い14インチタイヤを装着して空気圧を高めると、低速で走った時の乗り心地は硬くなるが、転がり抵抗が減るから燃料消費量を抑える時は有利だ。
そして今のトヨタのハイブリッドシステムは、THSIIで統一されている。ヤリスハイブリッドでは、トランスアクスルを筆頭にさまざまな機能を刷新させたが、ベースとなる基本のメカニズムは共通だ。
特に注目される基本機能は、発電用と駆動用という2つのモーターを搭載して、動力分割機構によってさまざまな制御を行えることだ。1個のモーターを使う方式では、発電とモーター駆動を同時には行えないが、THSIIであればそれが可能になる。
例えば街中などでは、エンジンを効率の優れた回転数で作動させる。モーターも併用してホイールを効率良く駆動する一方、余剰な駆動力を利用して同時に発電も行う。それをリチウムイオン電池やニッケル水素電池に蓄えておけば、エンジンを停止させてモーターのみで走行できる距離を長くできる。
このようにTHSIIでは、エンジン駆動、エンジンによる発電、モーター駆動、減速時のモーターによる発電(回生)を走行状態に応じて効率良く使い分けることで、優れた燃費性能を達成した。
しかも最初のTHSは1997年に発売された初代プリウスに搭載され、この後、20年以上にわたって改良を重ねている。その成果が今日の優れた燃費性能を支えている。
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