日産から新型フェアレディZが、スバルから新型BRZが、そしてトヨタからGR86が相次いで発表され、FR(フロントエンジン/リアドライブ)にクルマの夢を重ねる人たちにとっては嬉しいニュースが続いていると言えるだろう。
逆に言えば、そう表現せねばならないほどに、かつて「王道」であったFRモデルは、衰退の道を歩んでいるといえる。
本企画では、自動車評論家、そしてレーシングドライバーの松田秀士氏が、いまや希少となった国産FR現行モデル16台を総レビュー。その魅力と欠点とを解き明かす。
※本稿は2021年4月のものです
文/松田秀士 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』 2021年5月10日号
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■2ドアFRクーペ
●日産 フェアレディZ(397万9800~651万9700円)
【魅力】スポーツモデルのショートホイールベース化&ワイドトレッド化を他社に先駆け真剣に取り組んで、応答性とコーナリング安定性を両立させている。着座位置がリアタイヤに近く、挙動掌握性に優れている。
【欠点】6MTのシンクロレブコントロールは優秀だが、肝心のシフトフィールがイマイチ。重さやフリクションを感じ、サーキットなど素早い操作を要求される場合、左肩・腕に力が入り過ぎてドラポジにまで影響。
●トヨタ GRスープラ(499万5000~731万3000円)
【魅力】6速ギアが直結(1.00)のZF製8速ATはDCT並みのシフトスピードで素早く、低速域でもダイレクトだ。
またRZには後輪左右のロック率を0~100の間で連続的に電子制御するアクティブディファレンシャルを装備。AVSと連動してニュートラルなハンドリングを達成。これは86より100mm短いホイールベースによるところも大。
【欠点】プラットフォームをBMW Z4と共有していることから、リアサスのバネがハブより車体中央寄りに設置(Z4はオープンモデルのため)。これによりレバー比が上がりよりハードなバネを使う必要がある。
屋根があることでZ4より剛性が高いスープラは、よりシビアにサスの動きに反応する。これは勾配が連続変化するコーナーで露呈する。
●レクサス RC F(1042万~1432万円)
【魅力】5L、V8のNAエンジン、7100回転という高回転で481psを発生。4800回転で535Nmの最大トルク。サーキットで最高のパフォーマンスを発揮できるキャラにセッティングされている。
4000回転以上でのレスポンスによるスロットルコントロール特性はターボカーでは味わえないエンブレを含めた右足に超従順な反応を楽しめる。
【欠点】パフォーマンスパッケージのカーボン使用率と品質は見事だが、RC Fのフォルムを生かせずデザインがガチ過ぎる。レクサスらしい匠の優雅さを出してもらいたい。
またサスもエクステリア同様に極まったセッティング。サーキットで最大パフォーマンスを発揮するだろうが、サーキットに行くまでに疲れてしまう。細かな上下動が×。
●レクサス RC(576万9000~739万7000円)
【魅力】昨年9月のマイチェンでスポット増しやハイテン鋼の採用で軽量化と剛性アップ。ターボエンジン出力特性、ハイブリッドのモーター特性の駆動適正化が図られ、ドライバビリティと乗り心地がアップ。
【欠点】ミリ波レーダーによるACCは装備されるが、車線内中央維持による安心走行をアシストするLTA(レーントレーシングアシスト)が装備されず代わりにLDA。このクラスはLTAが望ましい。
●レクサス LC(1350万~1500万円)
【魅力】5L、V8のLC500には10速ATを採用。クロスしたギヤ比によりシフトが楽しい。一方ハイブリッドのLC500hはマルチステージで無段変速+有段変速4速を組み合わせた10段変速と実にマニアックだ。
【欠点】LC500hはハイブリッドゆえにこのクラスのわりにはエコ。ただし走りはハイブリッドシステムの重さを感じさせるものでフロントヘビー。コーナリング時に外側タイヤへのストレスを強く感じてしまう。
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