世界的な半導体不足が顕著であり、各自動車メーカーで新車の納期が軒並み伸びている。日本国内での影響も深刻で、影響を最小限にとどめていたトヨタでも、6月には一部工場の稼働停止に追い込まれる事態となっている。
新車の長納期化は、生産するメーカーはもちろん、販売店や購入するユーザーにとっても深刻な問題だ。筆者は、トヨタ・レクサスで営業マンをしていた頃、長期化する新車の納期に、幾度も悩まされてきた。
そこで、本稿では現在の新車納期が延びている状況を鑑み、筆者が経験した「納期が長すぎたクルマ」を紹介していく。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA
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■近年は「強制配車」の減少で納期の長期化が加速
一昔前と比べると、新車の納期は長くなっている。強制配車(注文がなくとも販売店に決まった量のクルマを送る状態)するメーカーが少なくなり、新車の受注生産方式が一般的になったためだ。
現在、販売店では新車の納期を、概ね1か月~3か月程度の幅で見ているが、これ以上長くなると、販売店の通常業務に影響が出てくる。
買い替えの提案活動は、保有車両の車検満了6か月前から動き出すことが多い。車検前に、新車へ乗り換えてもらうための営業活動だが、オーダーしたクルマが、車検満了時期を超えて納車されるのでは意味がない。長納期のクルマがターゲットの場合、提案活動開始時期は、予定よりも早める必要が出てくる。
また、新車の契約時には、下取車の金額を明らかにして注文書を取り交わすが、長納期のクルマになると、正確な金額が出せない。下取り査定は、商談しているクルマの納期を考えて、価格を提示するわけだが、先読みするのも3か月程度が限界だ。
製造が滞るということは、販売はもちろん、商品を使うユーザーにも影響が出る。メーカーには、できるだけ一定かつ安定的に、クルマを作ってほしいと、販売店もユーザーも願っていることだろう。
それでは実際に、過去の長納期車を巡りって繰り広げられた、筆者の体験談を紹介してく。
■なんと2年超車も登場!! 実録納期が長かった新車
●初代アクア
筆者が初めて、半年を超える長納期を体験したのが初代アクアだ。2011年の年末に登場したアクアは、瞬く間に人気となる。最盛期には、オーダー日が1日遅れただけで、納期が1週間以上後ろにずれるという時期もあったほどだ。納期は6か月~8か月程度となっていた。
定期連絡は欠かさなかったが、お客様からは「注文したことを忘れそうだ」と何度も言われた。そして、一度に注文を受けたクルマ達は、一斉に納車時期を迎える。約1か月の間、商談はほとんどおこなわず、毎日納車業務に勤しんでいたのも、初代アクアとの思い出だ。
●初代MIRAI
2014年に発売されたMIRAI。燃料電池車という特異性が、納期を大きく伸ばしたクルマだ。
官公庁を中心に、予想外の注文台数となり、納期は最も長い時期で、2年を超えた。おそらくトヨタ史上、納期が長いクルマのベスト3に入るだろう。
営業マンもお客様も、納車まで気持ちを切らさぬように、毎月1回の定期連絡と、数か月に一回は必ず会うことを欠かさず続けた。MIRAIほど、納車の未来が読みにくかったクルマはない。
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