2021年8月21〜22日にかけて行われたル・マン24時間レース。TOYOTA GAZOO Racingの2台はワンツーフィニッシュでレースを制した。
優勝した7号車のマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペスにとっては悲願の優勝となった。
様々なトラブルによってあと一歩のところで優勝を逃し続けてきた小林可夢偉の苦悩と初優勝の喜び、そしてその先にあるものとは?
文/段 純恵、写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】ついに悲願達成!! コンウェイ、小林可夢偉、ロペスが初優勝を飾った2021年ル・マン24時間レース
■過去の予選で見せた圧倒的スピードと一抹の不安
’17年6月15日、サルト・サーキットの最初のコーナー、ダンロップカーブを立ち上がった一台のTS050がハイブリッド・パワーユニットの唸りとともに見る者を圧倒するスピードで姿を現した。
その速度を保ったままシケインに飛び込み、マシンに暴れる隙を与えることなく飛ぶようにダンロップ・ブリッジの向こうに姿が消えるまで数秒。すべてが見渡せる丘で固唾を飲んでいた人々の間にため息とも何ともつかないザワめきが広がった。
その一人だった筆者は、この世のものでないものを見たようなゾワゾワ感に襲われた。
『そこまでスピードだしたらアカン! クルマが壊れる!』と気が気じゃなかったが、全力疾走中の7号車を追いかける仏語の場内アナウンスは、ユーノディエール、ミュルサンヌ、アルナージュとそれだけは聞き取れる有名ポイントを通過するごとにヒートアップ。
最終のフォードシケインからはマシンガン状態になったアナウンサーが最後にひと声『カムイ・コバヤシィー!!!』と絶叫した次の瞬間、3千人以上はいただろう丘の上のざわめきは天を揺るがす大歓声に変わった。
3分14秒791という、恐らく今後破られることのないレコードタイムとしてのスゴさもだが、タイムを知る前から人々の眼と気を引きつけて離さない走りは、小林可夢偉というドライバーの並外れた能力であり魅力だ。
ただ『速ければ誰にも文句は言わせない』的な匂いも微かに感じられて、一人で走るF1ならまだしも団体競技の耐久レースではどうかなぁと少し気になったのも事実だった。
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