現行型で15代を数えるクラウン。その長きにわたって変わらず受け継がれてきたものは、クラウンであることへの信頼だ。それゆえに、何世代もクラウンだけを乗り継ぐオーナーが数多くいる。
筆者はトヨタ店系列販売店で営業マンとして従事し、多くのクラウンオーナーと関係を持たせていただいた。そのなかで、クラウンに乗り続けるオーナーの声や、クラウンから離れることを決意したユーザーの気持ちを数多く見聞きしている。
本稿では、こうしたクラウンオーナーの本音を解説していく。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA、Audi
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■クラウンだから安心できる営業マンとオーナー
ハリアーやアルファード、ヤリス、ランドクルーザーなど、トヨタ全店扱いになり大きく販売を伸ばしたクルマが多いなか、クラウンの販売は伸びなかった。
全車種併売が始まった2020年の販売状況を見ると、アルファードが前年比132.1%、ハリアーが前年比182.3%と勢いを見せるなか、クラウンは前年比61.4%と低調に推移する。
セダンニーズの減少も一因にあると思うが、信頼関係が大切なクラウン販売の難しさが露呈した結果だと筆者は考える。クラウンは取り扱いが始まったからと言って、一朝一夕で売れるクルマではない。筆者が顧客との関係構築ができていなかった新人時代に、クラウンの販売に苦労した過去を思い出す。
クラウンの販売は、安心と信頼によって成り立つ。そのため、指名買いやクラウンという名前だけで、新型車のディテールを見ずに買い替えるオーナーが数多くいるのだ。クラウンを支えてきたのは、クラウンだから安心して売り続ける営業マンと、クラウンだから安心して買い続けるオーナーたちなのである。
■明確に変わったクラウンを離れる理由と「次に買う」クルマ
それでも僅かながら、クラウンから別のクルマに乗り換えるユーザーもいる。
その理由はさまざまだが、筆者の肌感覚だと、14代目までと現行モデル(15代目)以降では、乗り換えの理由が大きく変わったように思う。
14代目までは、「クラウンに飽きてしまった」「新型車の面白みがない」という意見が目立った。大きく変わらないクラウンに対しての不満が目立つ。
対して現行型の15代目以降は、「レクサス(他車)のほうが高級だ」「クラウンらしさがない」といった、クラウンの変化に対する不満が聞かれるようになっている。
双方の意見は大切だが、クラウンが今のフレッシュな形に変化し、販売を続けることには賛成だ。今後も、より多くのユーザーが満足するクラウンを模索してもらいたい。
さて、クラウンを離れたオーナーたちは、いったいどこへ行くのだろうか。その動きもまた、14代目までと15代目以降では異なる。
14代目までのオーナーは、輸入車のセダンに乗り換えることが多かった。メルセデスのCクラス(W205)や、アウディ A4(B8系)が中心で、なかにはレクサス ISを選ぶ人もいる。
クラウンオーナーの多くは、1800mm以下に収まった全幅に好感を持っている。クラウンは日本の道路で取り回しがしやすいように、全長4800mmを超えるEセグメントセダンの中でも圧倒的に全幅が狭い。
クラウン以外のEセグメントセダンで、全幅が1800mm以内に抑えられているクルマはほとんどない。そのため、クラウンオーナーはワンクラス車格を下げて、全長4600mm~4800mmのDセグメントセダンに乗り換えることが多くなるのだ。
対して、現行型以降でクラウンから離れるオーナーは、全幅1800mmはおろか、セダンという形にもこだわっていないことが多い。乗り換え先はBMW 5シリーズ(G30)や、レクサスのRXやNX、フォルクスワーゲンのゴルフなど多種多様だ。
クラウンが若々しく生まれ変わったことで、クラウンから乗り換えるクルマの種類も大きく変わった。
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