1999年に設立したスイスの電動自転車や電動キックボード、電気自動車を製作しているメーカー、マイクロ・モビリティ・システムズが開発した小型EV車「マイクロリーノ」を知っているだろうか?
この姿を見てハッとした方はかなりのクルマ通。そう、1950年代に生産されたBMWイセッタの再来というべき、前開きドアを採用した2人乗りのバブルカーが、小型EVとなって現代に復活したのだ。
このマイクロリーノは、2016年にプロトタイプが初公開、2018年には発売の予定だったが、幾度となく延期され。2021年5月にはマイクロリーノ1.0に続く、最新モデルの2.0を2021年9月に発表すると予告していた。
そして、2021年9月8日~12日、ミュンヘンで開催されたIAAモビリティで、市販最終モデルと生産時期、価格が発表されたのだ。
そこで、このマイクロリーノをつい予約してしまった、ライターの一條まやさんが、発表されたマイクロリーノを解説するとともに、日本に入荷するまで痺れを切らすことがないように、日本で走っているイセッタの所有者を訪ね、1959年製の「BMWイセッタ300」に会いに行ったのでお伝えしよう。
文/一條まや
写真/マイクロ・モビリティ・システムズ、ベストカーweb小野
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■2021年9月のIAAモビリティにて最終市販型のマイクロリーノ2.0が発表
イセッタに出会ったのは10年くらい前と記憶している。東京・汐留で開催されたクラシックカーイベントを見に行った時で、その姿を見た時の驚きは、瞬時におとぎの国に迷い込んだようだった。
「いつかイセッタがほしい」という気持ちになり情報収集をするようになった。旅行でドイツ・ミュンヘンのBMWミュージアムに行った時は展示されているクリーム色のイセッタを見て、ほしい気持ちはさらに高まった。
だが、その情熱は情報収集するうちに『旧車を維持するには自分でメンテナンスができないと難しい……』という現実に突き当たり、デスクの上に飾ったイセッタのミニカーが遠い存在に感じられた。
そんななか、2016年にジュネーブ・モーターショーで出店されたEV版イセッタといわれる「Microlino」が東京のモーターショー(2019)で展示されることを知り、“最新のEVなら自分でも所有できそうだ”と思い、予約するつもりで出掛けた。しかし期待とは裏腹に日本での発売は『未定』だった。
2021年になり、いよいよ「Microlino」のHPに『予約』できる旨が記された。詳細は記してなかったが、日々HPを見ていた私の右手は気持ちよりも先に動き、「ポチッ」とクリックしてしまった。
さて、発売はいつになるのか、ドギマギしていたところ、2021年9月8~12日に開催されたIAAモビリティで、これまでのマイクロリーノ1.0がアップデートされた市販型最終バージョン、マイクロリーノ2.0が発表されたのだ。
よく見ると素人目にもわかるほど変わっていた。前に開閉するフロントドアの取手がなくなり、電動開閉式になっている。キーによってロックを解除し、ヘッドライト下に設置されたボタンを押すことによって開く。ドアを閉める時はソフトクローズ機能が付いた。
ボディサイドまで回り込む横一直線のLEDポジションランプ&ウインカーが採用されたのがポイント。リア回りも横一直線のリアコンビランプに変更されたほか、リアゲート形状やソフトトップ形状も大きく変わった。
比べて見ないとよくわからないのだが、Aピラーが細くなり、サイドウインドウが拡大、全高をやや高くすることで視認性や室内の居住性が向上している。
丸いヘッドランプはほぼそのままだが、ポジションランプやウインカーなどが横一直線のLEDランプに集約され、一気にモダン化したイメージ。1.0のほうがレトロっぽくてよかったかもしれない。
ステアリング回りも大きく変わった。1.0ではイセッタと同じドアと連動して開閉する方式だったが、2.0では固定式に変更。コクピットも3本スポークのステアリングや速度計などを表示するデジタルディスプレイと、タッチスクリーン式の各種スイッチに変更され、シートも大幅刷新している。
電気モーターの最高出力は17ps、最大トルクは118Nmを発生。ピーク時のパワーはマイクロリーノ1.0の12kWから19kWへ、エネルギー効率は10%向上したという。
マイクロリーノ2.0は、530kgという軽量ボディを活かし、0~50km/hは5.0秒、最高速度90km/hまで引っ張る。
これは後に紹介するBMWイセッタ300の車両重量380kg、297cc空冷単気筒OHV(13ps/1.9kgm)、最高速度85km/hと比べ、“ちょっぴり”高性能。
バッテリーはリチウムイオンを採用し、6kWh/10.5kWh/14kWhの3種類用意され、航続距離はそれぞれ95km/175km/230kmとなっている。0-80%充電に要する時間は、6kWh、14kWhが4時間、10.5kWhが3時間。
サスペンションは、フロント:プッシュロッド、リア:リジットアクスルから、フロントリアともに独立懸架のマクファーソンストラット式へと変更を受けている。さらにリアのトレッドを50%も拡大することによってリアのスタビリティを向上させたという。
ベース価格は1万2500ユーロ(約188万円)からと、これだけ改良を加えたのに当初発表した価格を維持している。
さて、気になる発売時期だ。生産はイタリア・トリノの新しい生産施設で2021年末から行われるという。本拠地であるスイスからデリバリーが始まり、ドイツ、欧州各地の順になる見込み。日本へはいつになるのだろうか……後半ページに続く。
※グレードや詳細写真は後半ページ、画像ギャラリーをご覧ください
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