モデルチェンジとは、さらなる進歩のために行うもの。旧型より新型のほうがよくなっているのは当然で、そうでなければいけない。
しかし、新型にモデルチェンジしても、メカがそれほど進化していない割りに、デザインが「旧型のほうがよかったなぁ」と感じる場合もある。
もちろん全体としては、新型が旧型より退歩していることはないはずだが、人それぞれが持つこだわりポイントをクローズアップすると、「旧型のほうがシブかった」と思うことがあるのは当然だ。今回は、そんなクルマたちを集めてみた。
文/清水草一
写真/トヨタ、日産、ホンダ、スズキ
■旧型のほうがシブイクルマその1:トヨタ編/ヴェルファイア、クラウン
トヨタ車は、豊田章男社長の「もっといいクルマを!」の掛け声の元、あらゆる面で前進を続けている。それはもう本当にあらゆる部分におよんでいて、「旧型のほうがよかった」と思わせることはめったにない。そのめったにないレアケースを2つ取り上げよう。
■旧型ヴェルファイア(2008年5月~2015年1月)vs現行ヴェルファイア(2015年1月~)
ヴェルファイアはアルファードとの比較の上に成り立つクルマ。メカはまったく同じなので、デザインの優劣がすべてだ。アルファードとどっちがカッコいいか? という点だけで評価される。
先代ヴェルファイアは、2段ヘッドライトの威圧感と凶悪さ(当時の感覚)で、のっぺり旧態依然としていたアルファードを大きく上回っていた。それが販売台数に反映され、本家たるアルファードを超える人気を集めたのでした。先代ヴェルファイアの顔は、今見ると、当時感じた凶悪さもなく、すっきりサワヤカな二段ヘッドライト顔だ。
が、2015年に現行モデルにチェンジされると、威圧的かつ凶悪に生まれ変わったアルファードの巨大銀歯顔に圧倒され、撃沈されてしまった。
ヴェルファイアの旧型と新型を見比べると、旧型の上品なカッコ良さが目立つ。旧型ヴェルファイアはシブかった……。
■14代目旧型クラウン(2012年2月~2018年8月)vs15代目クラウン(2018年8月~)
旧型のアスリート系は、イナズマグリルと、ピンクなどのギョッとする大胆なボディカラーで賛否両論を巻き起こし、大いに話題になった。結局販売台数を伸ばすことはできなかったが、私は今でもあの強烈なイナズマグリルが好きだし、デザイン的にも優れていたと考えている。
ところが新型は、せっかくのイナズマグリルを捨て、旧型のロイヤル系の焼き直しのようなフロントマスクになった。乗り味は、よりドイツ車を意識したものになり、クラウンらしいおおらかさを失った。結果的に販売台数は低迷。モデルチェンジは失敗に終わり、次期クラウンはSUV風になるといわれている。
クラウンは、新型より旧型のほうがシブかったというよりも、ズバリ「よかった」のではないだろうか? 新型が旧型を明らかに上回っている部分はひとつもない、という印象すらある。まぁ、ニュルブルクリンクを攻めれば、新型のほうが速いんでしょうが、そんなのクラウンにはカンケーねぇと思うんだけどなー。
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