クルマのお医者さんとも言えるメカニック、彼らが保有しているのが国家資格の「自動車整備士」だ。この資格を取得し、日々の自動車整備業務を行う。さらに自動車ディーラーに勤めるメカニックは、国家資格以外にも多数の社内資格を持っている。
一部では、国家資格の自動車整備士よりも取得が難しいとも言われる、自動車ディーラーの社内資格とは、一体どのようなものなのか。自動車ディーラーに勤務していた筆者が、ディーラーエンジニアが取得する資格について解説していく。
文/佐々木 亘、写真/佐々木 亘、TOYOTA、Adobe Stock(トビラ写真=beeboys@Adobe Stock)
■国家資格の自動車整備士とはどんな資格
自動車整備業に携わる際に、多くの職場で取得を求められるのが自動車整備士だ。3級から1級までの3つの階層がある。
中学や高校を卒業してすぐに整備工場で働く人や、独学で自動車整備士を目指す人が取得を目指すのが3級自動車整備士だ。この資格では、タイヤ交換やオイル交換などの基礎的な整備作業が行えるが、エンジンや足回りの「分解整備」はできない。
2級自動車整備士は、現在自動車整備士の中で最も保有している人が多い資格である。専門学校や大学校を卒業する際には取得していることが多い。2級自動車整備士になると、自動車整備のほとんどの作業を行うことができる。
さらに上には1級自動車整備士がある。整備士全体の5%程度しか保有していない狭き門だ。合格には、幅広い技術と知識、そして対応力が求められる。
実務的に不便の無い資格が2級自動車整備士であり、その合格率は、例年75%~80%程度。受験資格には一定の制限があるが、それでも自動車整備業を志す人の中では、それほど狭き門ということでもない。
2級自動車整備士を取得後、実務経験を積みながら、さらなる技術の向上やお客様サービス向上のため、各メーカーのディーラーエンジニアたちは、社内資格の取得を目指していく。
■国家資格の他に、メーカー独自の資格がある
社内資格は各メーカーによって様々だ。自動車整備士と同じように級制度を用いることがほとんどで、代表的な資格は、日産では5級から1級、トヨタでは4級から1級と、その幅や数には独自の基準を設けている。
資格取得には一定期間の実務経験が必要とされ、段階的にステップアップしていく。おおよそ入社から4年かけて、社内制度の2級相当に合格できるよう、教育制度を構築している販売店が多い。
筆者が勤務していたトヨタディーラーでは、社内資格として「トヨタサービス技術検定」という独自の資格がある。各級の試験は実技と筆記で行われ、両方に合格しなければ、級の取得とはならない。日常的な業務の動きや知識を試すものや、電気回路の複雑な計算など出題範囲は多岐にわたる。
特にトヨタサービス技術検定1級の取得は難しく、筆者の同期のエンジニアたちは受験の時期になると、一斉に集合研修を受け、さらに毎日筆記試験の勉強を必死に行っていた。それでも受験者全員が合格するものではなく、相当数が不合格となる。国家試験よりも勉強が大変だと語るエンジニアも多い。
その狭き門を潜り抜けた精鋭には、トヨタサービス技術検定1級の称号が与えられる。1級取得者にはワッペンが渡され、エンジニアが着用するツナギの肩口に付けられるため、私たちユーザーも保有者の判別ができるようになっているのだ。
このワッペンがあるエンジニアは、技術力はもちろん、接客応対力、判断力なども一級品なのである。
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