以前の日本車は4年ごとにフルモデルチェンジを行ったが、最近はその周期が長い。クルマの売れゆきが下がり、環境性能などに向けた投資も増えて、頻繁な全面刷新が難しくなったからだ。また今は外観などのデザインが成長期を過ぎて、フルモデルチェンジしても変化が乏しくなった。
そこで重要になるのが地道な改良だ。今は衝突被害軽減ブレーキをはじめとする安全装備と運転支援機能が急速に進化しており、これらの機能を改善することが多い。
その一方で乗り心地や燃費など、基本性能の向上も大切だ。フルモデルチェンジの周期が長引くと、メーカーや販売会社としては、前期型の顧客にはマイナーチェンジ後の後期型へ乗り替えてほしい。
そのためにも改良を加える。発売から時間が経過すると顧客からの不満の声なども集まるから、改良時それに応えた改善を行えば、発売当初よりも商品力を高められる。
そして現在、発売から5年が経過しながらも改良によって魅力がさらにアップして熟成した10車をご紹介。
●メーカーの地道な努力で魅力がさらにアップしたクルマ 10選
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※本稿は2021年11月のものです
文/渡辺陽一郎 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2021年12月10日号
■メーカーの地道な努力で魅力がさらにアップしたクルマ 10選
■悪路に強い4WDミニバンはほかにない魅力
●三菱 デリカD:5(2007年1月登場)
デリカD:5は2007年に登場したミニバンで、4WDの機能を充実させているのが特徴。悪路走破力を高めるロックモードも装着し、最低地上高に余裕があるため、悪路のデコボコも乗り越えやすい。ミニバンでも悪路走破力はSUVと同等だ。
3列目シートの居住性も、全長が4.8m以下のミニバンでは一番快適に仕上げた。
発売時点のエンジンは2.4Lのガソリンのみだったが、後に2WDの2Lも加えた。2012年には2.2Lクリーンディーゼルターボも設定する。
2019年には規模の大きなマイナーチェンジを実施した。フロントマスクがダイナミックシールドの形状に変わり、エンジンはディーゼルに絞って改良が行われ、8速ATを組み合わせた。走行安定性と乗り心地も改善している。衝突被害軽減ブレーキも採用され、設計の古さを払拭した。
デリカD:5はSUV並みの走破力を備えたミニバンとして人気が高く、売却時も高値になる。新型へ乗り替えやすく、デリカD:5を何台も乗り継ぐユーザーも多い。その意味でも改良は重要だ。
◎おススメ度:★★★★
■テコ入れ効果などで好調な売れゆきを維持
●ホンダ フリード(2016年9月登場)
コンパクトミニバンで、現行型は2016年に発売された。2017年にはスポーティなモデューロXも加えている。2019年には規模が比較的大きなマイナーチェンジを実施して、フロントマスクを今のホンダ車に共通するシンプルで存在感の伴う形状に変更した。
新しいグレードとして、外観をSUV風にドレスアップしたクロスターも加えている。衝突被害軽減ブレーキも改善され、後方誤発進抑制機能を採用した。
そのほかは大きな改善は行っていないが、フリードの売れゆきはあまり落ちていない。発売直後の2017年にフリードは1カ月平均で8700台を登録しており、コロナ禍の影響が生じる前の2019年も7100台だ。ミニバンは空間効率を最大限度まで追求するから、基本的に外観をあまり変えることはできない。
従って安全装備などを改良していれば、売れゆきは下降しにくい。テコ入れを図る価値の高いカテゴリーでもある。
◎おススメ度:★★★★
■改良で搭載された最新プロパイロットは魅力大
●日産 スカイライン(2013年11月登場)
現行スカイラインは2013年に発表された。この時点ではV型6気筒3.5Lのハイブリッドを主力に搭載したが、2014年にはメルセデスベンツ製の2Lターボも加えている。2016年には衝突被害軽減ブレーキを全車に標準装着した。
さらに2019年にも大幅な改良を実施して、ステアリングホイールから手を離しても運転支援機能が作動するプロパイロット2.0を採用した。3Lツインターボも用意され、その「400R」の最高出力は405psに達する。
最近のスカイラインの登録台数は、1カ月平均で300台以下だが、ステアリングとペダル操作が長時間にわたって支援されるプロパイロット2.0の魅力は大きい。高速道路の巡航では疲労が格段に軽減され、長距離を移動する機会の多いユーザーにとって、スカイラインを選ぶ大きな理由になっている。
このようにほかの車種では得られない特徴を備えることが大切だ。
◎おススメ度:★★★★
■2列シート仕様の追加などで選択肢を拡大
●トヨタ シエンタ(2015年7月登場)
1.5Lエンジンを搭載するコンパクトな3列シートミニバンで、根強い人気を持つ。2015年に発売され、2018年には2列シート仕様を追加するなどの改良を行った。2020年には衝突被害軽減ブレーキの歩行者検知をソフトウェアのアップグレードで可能にしている。
特別仕様車も設定するが、目立つ改良は実施していない。コンパクトなミニバンは実質的にシエンタとフリードのみで、需要が集中したこともあり堅調に売れている。
◎おススメ度:★★★★
■色褪せない魅力を持つデザインも人気
●ダイハツ ムーヴキャンバス(2016年9月登場)
全高が1700mm以下のボディにスライドドアを装着した軽自動車で、2016年に発売されて堅調に売れている。先ごろ発売されたワゴンRスマイルも、ムーヴキャンバスに刺激を受けて開発された。
2017年には安全装備の改良、2019年と2020年には特別仕様車の設定という具合に、人気車らしくテコ入れも頻繁に行って売れゆきを維持している。また外観のデザインが色褪せないことも、息の長い人気を保っている理由だ。
◎おススメ度:★★★★
■幾度も重ねた改良で性能もアップ!
●日産 GT-R(2007年12月登場)
発売は2007年だが走行性能は高い。NSXが生産を終えるので、GT-Rは日本車の最速スポーツだ。
改良はほぼ毎年行ってきた。2010年に発表された2011年モデルは、最高出力を530psに高めて足まわりにも手を加えた。GT-Rニスモの追加なども含めて商品力を高めている。
ただし価格は発売時点では777万円だったが、今は最も安価な仕様でも1082万8400円だ。300万円以上も高くなった。
◎おススメ度:★★★
■頻繁に改良したことで高い商品力を確保
●マツダ MAZDA2(2014年9月登場)
現行型がデミオの名称で登場したのは2014年で、2016年には安定性と乗り心地を向上させるGベクタリングコントロールを採用。2018年にはガソリンエンジンの排気量を1.3Lから1.5Lに拡大して、スポーティな走りを全グレードで楽しめるようにした。
2019年には車名をマツダ2に変更して、デザイン、足まわり、安全装備まで機能を幅広く向上させている。改良を頻繁に行い、発売から7年を経過した今でも高い商品力を保つ。
◎おススメ度:★★★
■数年後の売却価格も高い人気車でお薦め
●トヨタ アルファード(2015年1月登場)
現行アルファードは、姉妹車のヴェルファイアと併せて2015年に発売され、堂々とした外観、広くて豪華な室内、快適な乗り心地などによって人気車になった。
改良も綿密に行い、2017年には衝突被害軽減ブレーキを全車に標準装着するなど装備を充実させている。フロントマスクも変更され、これをきっかけにアルファードの登録台数がヴェルファイアを上まわった。
2018年以降もほぼ毎年改良を行って、同時に特別仕様車も設定され、高額車ながら極めて高い人気を保っている。
2020年5月にはトヨタが全店で全車を販売する体制に変わり、アルファードの売れゆきはヴェルファイアの需要も吸収してさらに伸びた。
アルファードは中古車市場の人気も高く、数年後に高値で売却できる。そこも高い人気に結びつき、小型/普通車登録台数ランキングの上位に入っている。
◎おススメ度:★★★★★
■人気は落ちても今でも選ぶ価値は高い
●トヨタ プリウス(2015年12月登場)
現行プリウスは2015年に発売され、その後に充電可能なPHVも追加された。2018年には規模が比較的大きなマイナーチェンジを実施して、不評だった外観やインパネのデザインなどを変更した。歩行者を検知できる衝突被害軽減ブレーキや専用通信機能も、全車に標準装着している。
最近は、トヨタのハイブリッド車のラインナップが充実したために老舗のプリウスは売れゆきが下がっているが、それでもプリウスは選ぶ価値が大きい。ホイールベースが2700mmと長いために後席の足元空間も広く、荷室にも余裕がある。
価格は実用装備を充実させたSが273万1000円だから、ミドルサイズのボディを備えたハイブリッドとしては割安な設定だ。
◎おススメ度:★★★
■ユーザーが求める改良で高い人気をキープ
●日産 セレナ(2016年8月登場)
セレナは2016年に発売され、広い室内、多彩なシートアレンジ、運転支援機能のプロパイロットなどが人気を得て好調に売れている。
その後、買い得な特別仕様車のVセレクション、スポーティなニスモを設定するなどモデルを充実させ、2018年にはハイブリッドのe-POWERも加えた。衝突被害軽減ブレーキなど、安全装備も充実させている。
セレナはミニバンとしての実用性が高く、もともと人気車だったが、ユーザーのニーズに沿った改良を行うことで、息の長い人気を得た。日産の小型/普通車では、ノートに次ぐ売れ筋の基幹車種に位置付けられる。また日産では、エルグランドの発売が2010年と古く、セレナにミニバンの需要が集まった事情もある。
◎おススメ度:★★★★
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