VW版アルファード? いよいよ2022年に登場のID.BUZZはどんなクルマ?

VW版アルファード? いよいよ2022年に登場のID.BUZZはどんなクルマ?

 フォルクスワーゲンは、2022年に発売を予定しているEVのミニバン、ID.BUZZプロトタイプを発表した。今回発表されたID.BUZZは、ID.3、ID.4、ID.5に続く、VWのSUV・EV専用モデルとなる。

 これまでVWはVWタイプ2を現代に復活させたようなコンセプトモデルを過去3回発表し、我々に期待を持たせてきた。今度こそは本当に発売するのだろうか?

 発表されたID.BUZZはどんなモデルなのか? 写真を見る限り、アルファード級のLクラスミニバンにも見える。VWに約30年在籍していたモータージャーナリストの池畑浩氏がレポートする。

文/池畑浩
写真/VW

【画像ギャラリー】2022年登場!?VWのEVミニバン「ID.BUZZ」とその祖先たち特集!!(29枚)画像ギャラリー

■70年、7世代で受け継がれるType2のアイデンティティ

2017年に発表されたID.BUZZ(右)とタイプ2バス・23ウインドウ(左)タイプ2のポップなカラーリングをID.BUZZがオマージュしていることが分かる
2017年に発表されたID.BUZZ(右)とタイプ2バス・23ウインドウ(左)タイプ2のポップなカラーリングをID.BUZZがオマージュしていることが分かる

 マイクロバス(日本ではワーゲンバス?)といえば、Volkswagen(以下:VW)」といっても過言ではないほど、70年近くに渡り、いまだに世界中で愛され続けているミニバンは、そうないだろう。

 VWにとって「Type2」は、「Type1(以下:ビートル)」と同じように、長い歴史と伝統、そして、世界中の人々と共に創り上げてきた多種多様な独自のカルチャーを持つ希有なクルマだ。

 戦後まもなく、「ビートルの成功を信じ、これをベースにした荷物や人を運べるクルマを創るべきだ」と、自らのアイディアを記したメモを、当時のVW社長、ハインリッヒ・ノルトホフに渡した人こそ、「ビートル」初の輸出先であるオランダの貿易商「ベン・ポン」だった。

 このひと言をきっかけにして開発された「Type2」は、1950年に登場するのだが、「ビートル」譲りのタフネスさと、さまざまなボディバリエーションが功を奏して世界各地で受け入れられ、「ビートル」とともに、その後の世界のモビリティに大きな功績と独自のカルチャーを築いていく。

タイプ2初代T1。アメリカではタイプ2・23ウインドウは1000万円以上の値が付いている。タイプ1(ビートル)同様、合理性の中に愛らしさ、親しみやすさを全身から感じるデザインだ
タイプ2初代T1。アメリカではタイプ2・23ウインドウは1000万円以上の値が付いている。タイプ1(ビートル)同様、合理性の中に愛らしさ、親しみやすさを全身から感じるデザインだ
第二世代のレイトと呼ばれるT2(1967年)。フロントウィンドウが一体ガラスとなるとともに、全てのガラスも大型化され、ルーミーとなった
第二世代のレイトと呼ばれるT2(1967年)。フロントウィンドウが一体ガラスとなるとともに、全てのガラスも大型化され、ルーミーとなった

 「Type2」の現代にまでつながる70年、7世代にわたる系譜について簡単に触れておこう。まず、1950~1967年までの「アーリー」と呼ばれる初代「Type2:通称T1」と、1967年~1979年までの「レイト」と呼ばれる第二世代の「Type2:同T2」は、空冷水平対向4気筒エンジンを搭載したRR方式だった。

 第三世代の「Type2:同T3(1979年~1992年)」は、同じRR方式でありながらも、エンジンは排ガス対策のために、ヘッド周りだけ水冷に改良した部分水冷式(後に完全な水冷式)に進化している。

T3ヴァナゴン(1985年)。「ヴァナゴン」はVan+Wagonの合成語で北米VW社が名付けたもの(英字表記:Vanagonである)
T3ヴァナゴン(1985年)。「ヴァナゴン」はVan+Wagonの合成語で北米VW社が名付けたもの(英字表記:Vanagonである)
T3カラヴェル(1991年)。「カラヴェル」は乗用仕様の愛称。日本導入当初も「カラヴェル」だったが、1990年設立されたVW日本法人は北米名の「ヴァナゴン」で販売。一時期ダブルネームだった
T3カラヴェル(1991年)。「カラヴェル」は乗用仕様の愛称。日本導入当初も「カラヴェル」だったが、1990年設立されたVW日本法人は北米名の「ヴァナゴン」で販売。一時期ダブルネームだった

 そして第四世代以降は、ついに駆動方式がRRから横置きFF方式に変更されるなど、「Type2」の系譜を語る上での大きな転換点を迎えている。そのためこの世代以降は、「Type2」の流れを受け継ぐ世代を示す「T4(1990年~2003年)」という世代呼称で呼ばれるようになっていく。

キャンパー仕様のT4カリフォルニア(1996年)。T4より駆動方式がFFとなった。日本が唯一T4で「ヴァナゴン」を名乗った。日本では残念ながら短命のモデルで終わった<br>
キャンパー仕様のT4カリフォルニア(1996年)。T4より駆動方式がFFとなった。日本が唯一T4で「ヴァナゴン」を名乗った。日本では残念ながら短命のモデルで終わった
T5マルチバン(2011年)。T4に比べて若干ボクシーなスタイルに生まれ変わった。日本には未導入
T5マルチバン(2011年)。T4に比べて若干ボクシーなスタイルに生まれ変わった。日本には未導入
T6カラヴェル(2016年)。モデル名は変わっているが、基本的にはT4以降マイナーチェンジ版として販売が継続された
T6カラヴェル(2016年)。モデル名は変わっているが、基本的にはT4以降マイナーチェンジ版として販売が継続された
2021年6月発表のT7マルチバン。全長4973×全幅1941×全高1903mm、ホイールベース3124mm。全長5173mmのロングバージョンも用意。プラグインハイブリッド仕様も登場した
2021年6月発表のT7マルチバン。全長4973×全幅1941×全高1903mm、ホイールベース3124mm。全長5173mmのロングバージョンも用意。プラグインハイブリッド仕様も登場した

 続く第五世代の「T5」は、2003年(~2015年)にデビューしたが、基本的には「T4」のコンセプトをキャリーオーバーしたクルマで、その後の「T6(2015年~)」、「T7(2021年~)」も基本的にはデザインやエンジンなどの変更、いわゆるビッグマイナーチェンジとして継続販売されてきた。

 ちなみに、「Type2」のレイトバス(T2)は前期、中期、後期の3タイプがあるが、ブラジルではこれの後期型が、水冷4気筒エンジンのトータルフレックスと呼ばれるバイフューエルエンジン(ガソリンとエタノールの双方で走行可能)を搭載したモデル「コンビ1400」という名前で2013年まで製造、販売されており、「ビートル」同様、とても息の長いモデルとして主に南米で販売されていた。

ブラジルで2013年まで生産されていたT2コンビ。リアにエタノールも使えるEA111型1.4L、直4エンジンを搭載。フロントの黒い部分には水冷のためラジエターを装備
ブラジルで2013年まで生産されていたT2コンビ。リアにエタノールも使えるEA111型1.4L、直4エンジンを搭載。フロントの黒い部分には水冷のためラジエターを装備

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