フォルクスワーゲンは、2022年に発売を予定しているEVのミニバン、ID.BUZZプロトタイプを発表した。今回発表されたID.BUZZは、ID.3、ID.4、ID.5に続く、VWのSUV・EV専用モデルとなる。
これまでVWはVWタイプ2を現代に復活させたようなコンセプトモデルを過去3回発表し、我々に期待を持たせてきた。今度こそは本当に発売するのだろうか?
発表されたID.BUZZはどんなモデルなのか? 写真を見る限り、アルファード級のLクラスミニバンにも見える。VWに約30年在籍していたモータージャーナリストの池畑浩氏がレポートする。
文/池畑浩
写真/VW
■70年、7世代で受け継がれるType2のアイデンティティ
マイクロバス(日本ではワーゲンバス?)といえば、Volkswagen(以下:VW)」といっても過言ではないほど、70年近くに渡り、いまだに世界中で愛され続けているミニバンは、そうないだろう。
VWにとって「Type2」は、「Type1(以下:ビートル)」と同じように、長い歴史と伝統、そして、世界中の人々と共に創り上げてきた多種多様な独自のカルチャーを持つ希有なクルマだ。
戦後まもなく、「ビートルの成功を信じ、これをベースにした荷物や人を運べるクルマを創るべきだ」と、自らのアイディアを記したメモを、当時のVW社長、ハインリッヒ・ノルトホフに渡した人こそ、「ビートル」初の輸出先であるオランダの貿易商「ベン・ポン」だった。
このひと言をきっかけにして開発された「Type2」は、1950年に登場するのだが、「ビートル」譲りのタフネスさと、さまざまなボディバリエーションが功を奏して世界各地で受け入れられ、「ビートル」とともに、その後の世界のモビリティに大きな功績と独自のカルチャーを築いていく。
「Type2」の現代にまでつながる70年、7世代にわたる系譜について簡単に触れておこう。まず、1950~1967年までの「アーリー」と呼ばれる初代「Type2:通称T1」と、1967年~1979年までの「レイト」と呼ばれる第二世代の「Type2:同T2」は、空冷水平対向4気筒エンジンを搭載したRR方式だった。
第三世代の「Type2:同T3(1979年~1992年)」は、同じRR方式でありながらも、エンジンは排ガス対策のために、ヘッド周りだけ水冷に改良した部分水冷式(後に完全な水冷式)に進化している。
そして第四世代以降は、ついに駆動方式がRRから横置きFF方式に変更されるなど、「Type2」の系譜を語る上での大きな転換点を迎えている。そのためこの世代以降は、「Type2」の流れを受け継ぐ世代を示す「T4(1990年~2003年)」という世代呼称で呼ばれるようになっていく。
続く第五世代の「T5」は、2003年(~2015年)にデビューしたが、基本的には「T4」のコンセプトをキャリーオーバーしたクルマで、その後の「T6(2015年~)」、「T7(2021年~)」も基本的にはデザインやエンジンなどの変更、いわゆるビッグマイナーチェンジとして継続販売されてきた。
ちなみに、「Type2」のレイトバス(T2)は前期、中期、後期の3タイプがあるが、ブラジルではこれの後期型が、水冷4気筒エンジンのトータルフレックスと呼ばれるバイフューエルエンジン(ガソリンとエタノールの双方で走行可能)を搭載したモデル「コンビ1400」という名前で2013年まで製造、販売されており、「ビートル」同様、とても息の長いモデルとして主に南米で販売されていた。
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