無類のMT好き、安東アナウンサーのこだわり「絶滅の危機にある3ペダルMT車、それでも揺るぎない魅力を全力で語る」

無類のMT好き、安東アナウンサーのこだわり「絶滅の危機にある3ペダルMT車、それでも揺るぎない魅力を全力で語る」

 この業界きってのクルマ好き、そして何よりもクルマを運転することが好きな安東弘樹アナウンサー。ポルシェ911やアルピナ、3代目レガシィB4にVWルポGTIなどスポーツ系モデルを中心に車歴45台を乗り継いできている。

 そんな安東アナに「なぜ3ペダルMT車にこだわり続けているのか」をひたすら熱く、熱く語ってもらった!

文/安東弘樹
写真/安東弘樹、ベストカー編集部

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■「クラッチを踏んでシフトノブをゲートに入れ、戻して繋ぐのが好きなんです」

 MT車の魅力、と問われたら……一般的にはクルマとの一体感や、「自在に操れるから」ということになるのでしょうが、私の場合、「その行為が好きだから」というのが最も当てはまるかもしれません。

 クラッチペダルを踏んで、シフトノブをゲートに入れ、クラッチペダルを戻してクラッチを繋げる。この文字を打ちながら恍惚としてしまう、というくらい、唯々、好きなんです。

 速く走る時に回転を合わせスムーズにクラッチを繋ぐ、「ヒール&トゥ」も一般道の交差点を曲がる時にも多用します。この場合、いたずらに回転を上げる訳にもいかないし、ブレーキも思いっきり踏むわけではないので、むしろ繊細な操作が必要なのですが、それが、また、たまりません。

■「運転操作」という快楽を愉しむ

 それに、やはりMTのほうが圧倒的に安全です。いわゆる「誤操作」が起こりにくいのはもちろん、漫然とした運転になりにくいので、常に、集中が保たれるとも言えるでしょう。

 もっとも私の場合、日常での運転時は、2ペダルのクルマを運転していても3ペダルのMTを運転していても、常に快楽のみを享受していますが(笑)。

 私がカー・オブ・ザ・イヤーの選考委員になって、さまざまなジャーナリストの方と交流させていただけるようになって驚いたのは、「スポーツ走行する時以外は、MTをわざわざ選ぶことはない」とか「12時間運転し続けるのは嫌だな」というような話を聞いた時です。

 私は、「この世界でも」異常なんだなと、苦笑いしました。ですから一般の方とは感覚が違う私はジャーナリストには向かないと確信しました(笑)。

 私は24時間365日、この原稿を書いている今、この瞬間にも運転がしたくてたまらないのです。ですから運転自体の操作が多ければ多いほど、その快楽を多く享受することができる身体なのでしょう。

■MTにしかできない運転がある

 それに、MTにしかできない運転もいくつかあります。私はオフロードも好きで、20代の頃は度々、常設のオフロードコースに行っておりました。

 ごく一部のコースには「すり鉢」と言われる巨大なクレーターのような「アトラクション」が設置されていたのです。強大なすり鉢の底の部分からスタートし、前進と後進を繰り返し、クルマで遊園地のアトラクションである「バイキング」のように行ったり来たりしながら、最終的には、そのすり鉢を出る、というコースです。

 どのように運転するかというと、まず通常と同じく1速(クルマによっては2速でも)でクラッチを繋いで、すり鉢の底から上辺に向かって登っていきます。(クルマによってはさらにシフトアップ)限界に近づいたら、クラッチを切ってその前進のギアポジションのまま、重力に任せて後進です。

 この時のスリルが、たまりません! 後ろに進んだクルマは慣性の力で底の部分を越えて、少し逆側の傾斜を上ります。そして、慣性で前に進み始めた(下り始めた)ところでクラッチを繋いで勢いをつけるためにアクセル・オン。

 そのスピードに応じたギアポジションでクラッチを繋ぐのですが、これを繰り返してすり鉢から脱出します。これが、本当に楽しいんですよね。

 当然、この運転は任意で動力と駆動系と切り離さなければ不可能です。どんな優秀なダブルクラッチのクルマでも、極特殊なクルマでなければ逆立ちしてもできません(笑)。

変速を手動で行うマニュアル車は、「一般的でない」変速挙動も可能だ。その臨機応変さは、ATでは対処できない
変速を手動で行うマニュアル車は、「一般的でない」変速挙動も可能だ。その臨機応変さは、ATでは対処できない

 もちろん、このような状況に普段、遭遇することはありませんが、災害時やスタックしてしまったような場面で、有効な脱出手段になることが皆無とは言えません。イザという時に役に立つのはアナログの道具、という話はあらゆるジャンルで散見しますね。

 このように、自分の意志どおりにクルマを操れる範囲がMT車のほうが広いのも魅力のひとつですが、やはり私にとっては楽しいから、というのが一番です。

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