シルビアといえば、歴代で最終の7代目S15型とバブル真っただ中の1988年にFMCされ、デートカーとしても一世を風靡した5代目S13型が有名だが、その間に挟まれた6代目のS14型はどうにも印象が薄い感がある。
しかし、歴代で初めて3ナンバー化され、S13型から上級移行したようなスタイリングは味があったし、2LターボのSR20DETもS13後期型までの205psから220psまでパワーアップされ、走りも進化していたことがあまり評価されていない気も。
本当にS14型は日産にとって失敗作だったのか、その真価を改めて評価する。
文/萩原文博、写真/日産
■欧州日産では9月にシルビアをオマージュしたEVのデザインを公開!
ドリフトの競技会場やサーキット走行で、走行する勇姿を多く見かけるのが、日産シルビアだ。今年9月、欧州日産のデザイナーが初代シルビアをオマージュした電気自動車(EV)のデザインスケッチを公開した。
また、シルビアは復活を望む声が多いため、登場するという噂が絶えないモデルである。1965年に登場した初代モデルから2002年に幕を閉じた7代目モデルすべて、FRの駆動方式を採用した。
一方、ボディサイズは1993年に登場したS14型のみ3ナンバーサイズとなり、最終モデルとなった7代目のS15では5ナンバーに戻されている。そこで、ここではシルビアの歴代モデルで唯一3ナンバー車だったS14シルビアは「失敗作」だったのかどうか中古車相場を見ながら検証してみたい。
■S14は走行安定性を高めるため、先代S13よりボディサイズを拡大して登場
1989年から始まる第2世代スカイラインGT-Rを見てもわかるとおり、日産のスポーツカーはモデルの振り幅が大きい。シルビアも5ナンバーサイズだったS13からS14では3ナンバーとなり、S15では5ナンバーサイズへと戻っている。
一見、S15の引き立て役に見えるS14シルビアだが、1993年10月に登場した。プラットフォームは先代モデルS13のキャリーオーバーとなっているが、ボディサイズは全長4500×全幅1730×全高1295mmの3ナンバーサイズへと拡大されている。
拡大されたのはボディサイズだけでなく、ホイールベースは+50mm、トレッドはフロントが+25mmの1480mm、リアは+10mmの1470mmと拡大されている。この数値だけ見ると、先代モデルよりS14シルビアは走行安定性の向上を追求していることがわかる。
搭載されるエンジンはK’sには最高出力220ps、最大トルク274Nmを発生するSR20DET型2L直列4気筒ターボ。Q’s、J’sには最高出力160ps、最大トルク188Nmを発生するSR20DE型2L直列4気筒自然吸気の2種類。
先代と搭載されているエンジンと同じだが改良が加えられており、出力向上などが図られている。また、自然吸気エンジンもターボエンジン同様にハイオク仕様となった。組み合わされるミッションは5速MTと4速AT。駆動方式はFRのみで、乗車定員は4人となっている。
1996年6月にマイナーチェンジを行い、内外装を大幅に変更。特に外観デザインは、前期型は先代モデルの進化系のエレガント系だったが、後期型は吊り目といわれるダイナミックでスポーティなスタイルへと大きく変貌。このデザイン変更の大きさもS14が失敗作ではないかと言われるポイントのひとつではなかっただろうか。
■ニスモ初のコンプリートカーはS14をベースとしたニスモ270Rだった
また、S13とS15シルビアにはオーテックジャパンが製作したオープンモデルが設定されたが、S14にはない。その代わりに、走りに磨きをかけたモデルが存在する。まず、紹介するのは1994年に限定30台で販売されたニスモ270R。日産のワークスブランドであるニスモの創立10周年を記念して発売されたニスモ初のコンプリートロードカーがS14シルビアをベースとしたニスモ270Rだ。
名前のとおりエンジンの最高出力は270psを目標にチューンが施された。さらに、トランスミッションはファイナルギアを変更。リアデフにはニスモの機械式LSDを装着するなど駆動系も強化。
サスペンションはブッシュ類まで交換され、サーキット走行もこなすダイレクトなハンドリングを追求している。生産台数がわずか30台にもかかわらず、多くの応募があり抽選となった。
そしてもう1台が、1997年10月に発売された特別仕様車のオーテックバージョンK’s MF-T。ファクトリーブランドのオーテックが手がけたモデルで、専用チューンを施した2LターボエンジンはIHI製のタービンに交換され、最高出力250psに向上。
フジツボ製の専用エキゾーストシステムも採用し、音にもこだわっている。さらにサスペンションも専用チューンを施し、パワーアップしたエンジンに対応させている。外観は専用のエアロパーツを装着し、大型リアスポイラーが存在感をアピールしている。
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