S14シルビアは大ヒットモデルS13の後継車として93年10月に発売。基本的にS13の改良版だったが、セールス的に成功したとは言えない。当時の日産の混迷の影響を受け、迷車となってしまったS14の足跡をたどる
日産は初代「シルビア」をオマージュしたEVクーペのデザインスケッチを発表! 初代の量産型は「シルビア」と名乗ったが、コンセプトカーとしては日産伝統の「ダットサン」クーペとして登場
S14シルビア(前期型)。FRスポーツ、またデートカーとしても大人気を博したS13の正常進化版として登場した。しかし901活動後の日産の混迷が各所に見え隠れする迷車として歩むことになる
S14はTVCMでも話題に。キャッチコピーの「eye hunt SILVIA」に続き「母ちゃん、許して~」と切ない歌詞が。思わず目どころか耳までハントされた。原曲はUKのロックデュオ、Tears For Fearsの「Sowing The Seeds Of Love」。もちろん空耳である
拡大されたボディサイズにより、走行安定性の他居住性も向上。リアシートも短時間であれば何とか座れる実用性もあった。この辺は現在のGR86/BRZと変わらない先見性だったかもしれない
機能面は進化。しかし、コストダウンにより普通のクルマと評されたS14のインパネ。初期型は本革巻きステアリングすら未設定。のちに追加となった運転席エアバッグはサニーなどと共用と何ともそっけない仕様となってしまった
熟成の域に達していたSR20DETエンジン。ターボで220psだったが、チューンで400ps程度まではアップできた。フィールは荒々しいが、とにかく頑丈でいじり甲斐のある名機だった
1996年にマイチェンして後期型に移行。低くシャープな顔つきに大型のエアロパーツをまとい、先代の「アートフォース」は「ダウンフォース」へと趣旨変更?
後期型をベースに発売された、オーテックK's MF-T。マイチェン後の低く構えた不敵な顔つきに大型リアスポイラーで迫力を増した
残念ながらS14の低迷の影響は絶版となった今も残る。ただ走りの面ではS13に対し、確実に進化したモデルのため、悪いクルマではない。それだけに日産の混迷時代に生まれたことが悔やまれる1台だ
アートな感じを狙った後ろ姿に黄昏感が……。型落ちS13ベースの180SXにすら販売面で負けることもあったS14。S13からの路線変更とその後の場当たり的な商品戦略に翻弄された迷車だった