近年、クルマの買取専門店が増えている。買取店のCMをよく見るが、ディーラーで行う下取りよりも、高価買取りを謳うものが多い。
実際に買取専門の方が、高く買い取るケースもあるが、ディーラーで行う下取りにも多くのメリットがあるのをご存じだろうか。ディーラーの販売最前線で、下取りを数多く行ってきた筆者が、ディーラー下取りの方が買取りよりもお得になる条件を紹介する。
文/佐々木 亘、写真/TOYOTA、SUZUKI、NISSAN、Adobe Stock(トップ写真=studiopure@AdobeStock)
■本当に買取専門店は高く買い取ってくれるのか?
一昔前、買取専門店の査定額は本当に高かった。筆者は何度も商談中のお客様のクルマを下取りではなく、買取専門店へ持っていかれた経験をしている。実際に100万円を超える査定額のクルマでは20万円以上、100万円以下でも10~20万円程度、買取の査定額が高かった。
現在、買取を取り巻く環境は大きく変わった。新車を扱う各ディーラーも、「トヨタのクルマ買取(旧T-UP)」に代表されるように、買取りにも力を入れている。
専門店とディーラーの買取実績を比べると、対象のクルマをそのまま自社で販売できるケースでは、双方の提示金額はあまり変わらない。ディーラーが自社販売できないような、古いクルマ・状態の悪いクルマの場合には、買取専門店の提示額が少々優勢だ。
しかし、買取りと下取りを比較すると話は変わってくる。まず下取りの仕組みを理解し、買取りとの違いを明確にするところから始めよう。
■下取りには付加価値が乗っている! 表面的な金額だけで判断しては損になるかも
下取りと買取りで提示される金額には大きな違いがある。買取は「今、この場で愛車を手放した場合」の価格が提示され、下取りは原則「購入したクルマの納車時に愛車と交換した場合」の価格が提示されるのだ。
例えば1月に新車の商談を終え、そのクルマが3月に納車される見込みだとする。買取の場合は、専門店に行った日(例えば商談と同時期にだったら1月)時点での愛車の価格が提示され、下取りは2か月後の3月の価格を想定して金額を提示していることになる。
月日が経てば価値が下がるのがクルマであり、その期間が2か月であっても提示額に影響は及ぼす。したがって、単純に買取の提示額と下取りの提示額を、横並びに比較することはできないのだ。
また、買取を利用する場合、一定期間クルマが無い時間が生まれる可能性がある。下取りの場合は新しいクルマと交換になるが、買取りでは契約締結とほぼ同時にクルマを引き渡さなければならない。
クルマ無しの生活が可能、もしくは代わりのクルマを自分で用意できるならいいが、それが許されない場合、下取りを利用するほうが生活への負担は少ないだろう。
下取りには金額以上のメリットが隠れている。時間や利便性などを加味した上で、買取りと比較していただきたい。
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