17年ぶりに新型となったアトレー/ハイゼットカーゴ マイチェンしたハイゼットトラック

17年ぶりに新型となったアトレー/ハイゼットカーゴ マイチェンしたハイゼットトラック

 2021年12月20日、約17年ぶりにフルモデルチェンジしたダイハツアトレー、ハイゼットと、マイナーチェンジしたハイゼットトラックが発売された。

 アトレーワゴンは、今回のフルモデルチェンジで5ナンバーの軽乗用キャブオーバーワゴンから、4ナンバーの軽商用キャブオーバーバンとなった。

 軽商用キャブオーバーバンのハイゼットとアトレーは最新プラットフォーム、DNGAを採用し、室内空間と荷室空間を増やすためにスクエアな形状に変更。角型ヘッドライトとグリル、新型バンパーのデザイン変更によりタフなイメージとしている。

 エンジンはキャリオーバーだが、トランスミッションは4ATに代え、FR車専用に新開発されたCVTを新設定することで、軽快な走りと高い環境性能を両立。また電子制御式4WDを採用し、CVT用スーパーデフロックを搭載することで悪路走破性も向上するなど大幅に進化した。

 2014年9月に登場した現行ハイゼットトラックはアトレー、ハイゼットカーゴとは違いマイナーチェンジとなるが、アトレー、ハイゼット同様、FR用のCVTやデフロック付きの電子制御式4WDやキーフリーシステムやプッシュエンジンスタート、電動格納式ミラーなど軽トラ初の装備やクラス初のスマートインナーミラー装着など、装備が豪華になったのが大きなポイント。

 さて、17年を経て新型にフルモデルチェンジしたアトレーとハイゼットカーゴ、そしてパワートレインを刷新したハイゼットトラックはどれほどのものなのか、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

文/渡辺陽一郎
写真/ダイハツ

【画像ギャラリー】軽商用バンとは思えない豪華装備と使い勝手が光るアトレーとハイゼットカーゴ、CVTで走りが進化したハイゼットトラックを見る!(40枚)画像ギャラリー

■アトレー、ハイゼットカーゴが約17年ぶりにフルモデルチェンジ、ハイゼットトラックはマイナーチェンジ!

新型アトレーRS。アトレーは乗用5ナンバーワゴンから4ナンバーの商用バンに規格変更した
新型アトレーRS。アトレーは乗用5ナンバーワゴンから4ナンバーの商用バンに規格変更した

 軽商用車は、日本の物流を支える大切な存在だ。2021年1~11月には、1ヵ月平均で約3万1600台の軽商用車が販売された。

 この販売規模は、小型/普通車を含めた商用車全体の49%に達する。乗用車に占める軽自動車の割合は35%だから、軽自動車では商用車の普及率が高い。

 そして軽商用車を最も多く販売するメーカーがダイハツだ。1ヵ月平均で約1万2800台が販売されており、新車として売られる軽商用車の41%がダイハツ車になる。

 そのダイハツアトレー/ハイゼットカーゴ/ハイゼットトラックが凄い進化を遂げた。先代アトレーとハイゼットカーゴは、2004年に登場したから、約17年ぶりのフルモデルチェンジになる。ハイゼットトラックは、2014年に現行型へフルモデルチェンジされたので、マイナーチェンジを実施した。

新型アトレーのインテリア。350kg積めるラゲッジルームをウリとした
新型アトレーのインテリア。350kg積めるラゲッジルームをウリとした
ラゲッジルームは1275Lを誇る。車中泊にも適している
ラゲッジルームは1275Lを誇る。車中泊にも適している
新型アトレーのコクピット。6.8インチと9インチの2つのディスプレイオーディオが選べる。ステレオカメラ装備の最新スマアシに進化
新型アトレーのコクピット。6.8インチと9インチの2つのディスプレイオーディオが選べる。ステレオカメラ装備の最新スマアシに進化

 今回のフルモデルチェンジでまず注目されるのは、アトレーの規格変更だ。先代アトレーは、ハイゼットカーゴのボディを使った5ナンバー規格の乗用車だったが(正式車名はアトレーワゴン)、新型はハイゼットカーゴと同じ軽商用車になった。つまりハイゼットカーゴの上級シリーズに位置付けられる。

 そして新しいアトレーには、バンボディに加えて、後席の後ろ側を荷台に変更したデッキバンも用意される。アトレーのバリエーション構成は、ハイゼットカーゴをベースにしたXと上級のRS、デッキバンの3種類になった。アトレーは上級シリーズとあって、全車がターボエンジンを搭載して、トランスミッションはCVT(無段変速AT)のみだ。5速MTの設定はない。

アウトドアなどで使った汚れたグッズなどを積むのに便利なアトレーデッキバン
アウトドアなどで使った汚れたグッズなどを積むのに便利なアトレーデッキバン

 ちなみにアトレーは、もともとハイゼットバンの上級仕様として設定され、その後に5ナンバー規格のアトレーワゴンを加えている。新型ではアトレーがバンに戻ったことになる。

 アトレーをワゴンからバンに変更した理由は、車内の広い軽乗用車として、今ではスーパーハイトワゴンのタントが好調に売れているからだ。アトレーをバンに戻すことで、広い荷室と350kgの積載性が備わった。タントとの違いを明確にしている。

 ただし4ナンバーの軽商用車とするには、後席よりも荷室の面積を広げる必要があり、後席の足元空間は5ナンバー規格の乗用車に比べると少し狭い。初回車検もワゴンの3年後と違って2年後に受けねばならない。

 一部の任意保険では、商用車になると、運転者を21歳以上、26歳以上に限定して任意保険料を下げる年齢条件が制約を受ける。このように軽商用車では、5ナンバーの軽乗用車に比べて不利が生じる場合もあるため、初めて購入する時は注意したい。

ハイゼットカーゴデラックス
ハイゼットカーゴデラックス
ハイゼットカーゴのコクピット。CVTを新採用したことによって走りも燃費も向上。軽キャブオーバー車ではまだ当たり前の装備とはなっていない、キーフリーシステム&プッシュエンジンスタートシステムをアトレー全車に標準装備したことは大きな進化
ハイゼットカーゴのコクピット。CVTを新採用したことによって走りも燃費も向上。軽キャブオーバー車ではまだ当たり前の装備とはなっていない、キーフリーシステム&プッシュエンジンスタートシステムをアトレー全車に標準装備したことは大きな進化
ハイゼットカーゴのインテリア。商用だけに質素
ハイゼットカーゴのインテリア。商用だけに質素
フルフラットになるハイゼットカーゴのインテリア
フルフラットになるハイゼットカーゴのインテリア

 それでも新型アトレー/ハイゼットカーゴの機能は幅広く充実した。外観についてはバンパーが上下に2分割され、低い部分を傷つけた時は、下側のみを交換できる。修理費用が高まらないように配慮した。

 内装の質も向上している。特にアトレーでは、内装のメッキ装飾が増えて、RSとデッキバンでは内装の質感がさらに高まる。シート生地も、アトレー、ハイゼットカーゴ/ハイゼットトラックの上級グレードには、ファブリックが使われる。

 荷室のスペースと使い勝手も向上した。荷室面積は以前からライバル車のエブリイを含めて限界に達していたが、新型の荷室長は最長で1915mmだからさらに伸びた。

より四角いボディとすることで収納スペースを増やした
より四角いボディとすることで収納スペースを増やした

 またハイゼットカーゴとアトレーは、ボディの側面とリアゲートの形状を変更した。ボディやドアパネルの上に向けた絞り込みを抑え、直立させることで、車内の上側の容量を拡大した。したがって背の高い角張った荷物を積む時など、新型では車内の内張りが先代型以上に干渉しにくい。

 床面も従来以上に平らに仕上げた。シートの固定金具を床面へ埋め込み、収納時に荷物が床に引っ掛かりにくい。荷物をキズから守ることもできる。

ハイゼットカーゴの各種寸法
ハイゼットカーゴの各種寸法
荷物の取り付け、棚やネットを装着する時に役立つユースフルナット(車内に装着された差し込み用の穴)は、従来の約2倍となった
荷物の取り付け、棚やネットを装着する時に役立つユースフルナット(車内に装着された差し込み用の穴)は、従来の約2倍となった

 荷物の取り付け、棚やネットを装着する時に役立つユースフルナット(車内に装着された差し込み用の穴)は、従来に比べて約2倍に増やした。全車に17個が標準装着され、ハイゼットカーゴのデラックスやスペシャルには31個が備わる。ユーザーが自分で使いやすいように車内をアレンジできる。

 エンジンは従来と同じくノーマルタイプとターボを用意する。ハイゼットカーゴが搭載するノーマルエンジンの動力性能は、CVTの場合、最高出力が53ps/7200rpm、最大トルクは6.1kgm/4000rpmになる。ターボは64ps/5700rpm、9.3kgm/2800rpmだ。

 動力性能は先代型と同等だが、新型ではトランスミッションを変更した。先代型のATは4速の有段式だったが、新型では前述の通り新開発されたCVTに変更している。

 CVTは前輪駆動の軽乗用車には幅広く普及したが、後輪駆動を採用する軽商用車のアトレー/ハイゼットカーゴ/ハイゼットトラックでは初採用だ。CVTを採用した理由は、先代型までの4速ATに比べて、動力性能と燃費効率が優れていることだ。CVTは無段階に変速するため、エンジンは常に効率の優れた回転域を維持できる。

 例えば重い荷物を積んで坂道発進をする時は、高い駆動力が得られるギヤ比になる。エンジンの負荷が少ない巡航時には、回転数を抑えて燃料消費量を節約する。ギヤの比の変速幅が広く、なおかつ無段階に変わるから、走りが滑らかになって運転しやすい。静粛性も優れ、燃費性能も向上する。

 ノーマルエンジンを搭載する2WDのWLTCモード燃費は、新型ハイゼットカーゴは15.6km/Lだ。先代型の4速ATは14.1km/Lだから、燃費数値は10%上乗せされた。


■各車種のWLTCモード燃費
●アトレーRS、X、デッキバン全車種(658㏄、直3ターボ、64ps/9.3kgm、CVTのみ)
WLTCモード燃費:14.7km/L(FR、4WD)
●ハイゼットカーゴ
・クルーズターボ(658㏄、直3ターボ、64ps/9.3kgm、CVT車のみ)
WLTCモード燃費:14.7km/L(FR、4WD)
・クルーズ、デラックス、スペシャルクリーン、スペシャル、デッキバンG、L(658㏄、直3NA、5MT車は46ps/6.1kgm、CVT車は53ps/6.1kgm)
WLTCモード燃費:5MTのFR、4WD車は14.9km/L。FRのCVT車は15.6km/L
※市街地モード、郊外モード、高速道路モードは車種によって違いあり
●ハイゼットトラック(FR/4WD)
・スタンダード、ハイルーフ、ジャンボ全車種(658㏄、直3、46ps/6.1kgm)
WLTCモード燃費:5MT車のFR、4WDは15.6km/L。CVT車のFRは16.5km/L、4WDは15.8km/L

 そしてCVT車には、軽商用車では初採用の電子制御式4WDを採用した。後輪駆動の2WD/4WDオート/4WDロックという3つのモードを選択できる。

 4WDオートでは、走行状態に応じて前後輪に最適な駆動力が配分され、舗装路上でも安定性を向上させる。後輪駆動の2WDは燃費節約に有利で、4WDロックは雪道などの悪路で使う。

 なお先代型のハイゼットカーゴは、4WDがパートタイム式だから、前述の4WDオートとは異なりカーブを曲がる時に前後輪の回転数を調節できなかった。そのために4WDは悪路専用とされたが、電子制御式4WDでは、舗装路を含めてさまざまな路面で4WDのメリットが得られる。5速MT車は、先代型と同じパートタイム式4WDだ。

これまでのパートタイム4WDから電子制御式4WDに変更され、常時2WD/常時4WD/スタンバイ4WDという3つのモードに切り替え可能
これまでのパートタイム4WDから電子制御式4WDに変更され、常時2WD/常時4WD/スタンバイ4WDという3つのモードに切り替え可能

次ページは : ■ハイゼットトラックはスーパーデフロック付きCVTを新搭載

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