国家資格と言われて思い浮かぶのは、どのような資格だろうか。医師や看護師、税理士や弁護士、運転免許や調理師免許など様々な資格がある。自動車ディーラーや整備工場で働く「自動車整備士」も国家資格の一つだ。
国家資格を取得すると、就職に有利、高給が見込めるなど、手厚い待遇が待っているように思える。しかし、自動車整備士はお世辞にも待遇が良いとは言えない状況だ。なぜ低待遇が長年続いているのだろうか。
自動車ディーラーに勤務してきた筆者が、現場で見てきた状況を踏まえ、ディーラー整備士の待遇が低い謎を解明していきたい。
文/佐々木 亘、写真/AdobeStock(トップ画像=Eakrin@AdobeStock)
■新卒時から開く、営業職と技術職の給与格差
自動車ディーラーが出す新卒者用の求人情報には2種類ある。主に大卒学生をターゲットにした営業職の募集、そして専門学校や高専・技専等を卒業してくる学生をターゲットにした技術職の募集だ。後者が整備士の募集であり、ディーラーでクルマを点検・整備する仕事に就く。
まずは実際にディーラーの新卒採用者向け募集概要を見てみよう。
給与は営業職で、4大卒・月給18万6800円、短大と専門2年卒で18万800円である。対して、技術職では専門卒・月給18万4800円となる。ただし、これには国家二級自動車整備士に対する手当を含んだ金額だ。(金額は筆者調べの一例)
これに加えて、営業職には販売奨励金と借上車両手当が入り、技術職では技能手当と工具手当が支給される。
国家資格手当を加えてもエンジニアの給与は、4大卒の自動車運転免許しか持っていない営業職よりも低い。さらに、工具手当ては数千円、技能手当てに関しては、その資格を取得した際に一時金として支払われるのみだ。
対して営業職は、元々高い給与に、借上げ車両手当が数万円、販売報奨金は3か月~半年に1度の支給で、10万円弱から多い時には数十万円まで増える。
クルマを売れば売った分だけお金になる営業職に対して、クルマを何台整備しようと同じ給与の技術職。大卒の営業職に比べ、2歳年下で入社することが多い技術職では、年齢給の時点で差が生まれているのが現状だ。
技術や資格評価よりも、年功序列の意識が強い自動車ディーラー。整備士の「技術」に対して支払われる報酬が、あまりにも低すぎると筆者は思う。
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