■給与の大きな割合を占める残業代
最近では少しずつ減少傾向になっているようだが、整備士の残業はまだまだ長く、労働環境が厳しい状況であることは変わっていない。
短時間点検、短時間車検というものが当たり前になり、昼間は「待ち作業」(顧客が販売店内で整備が終わるのを待っている作業)で目が回るほど忙しい。加えて、数日から数週間車両を預かって行う重整備も、並行してやっていく必要がある。
待ち作業でいっぱいの昼間に重整備を行うことは出来ないため、閉店時間を過ぎた夜から、重整備をスタートさせることがほとんどだ。すべからく残業となるのが常である。
来店客が居なくなればほとんどの業務を終えたに等しい営業職に対して、エンジニアはまだまだ仕事が続いていく。こうした状況が年中、毎日のように続くため、いつしかエンジニアの給与は、残業手当が大きな割合を占めるようになっていった。
「残業はしたくないが生活のため」と語る整備士も多い。実際に不正車検が社会問題となって以降、残業を減らす動きが出てはいるが、日中に大幅なしわ寄せがきて、仕事のキツさは、以前よりも高まっているという。加えて、残業手当が少なくなったことで、整備士の実入りも減った。
今、行わなければならないのは、整備士の基本給を上げることだ。1日8時間の決められた労働の中で、順次給与が上がり、生活が豊かになっていくという仕組みを、根本から本気で考えなければならない。
■資格の価値を見直すべき
ディーラーでは、整備士として入社した人が、途中で営業職に配置転換されることがある。しかし、その逆(営業職から整備士)というのはほとんど無い。営業をするのに資格は要らないが、クルマを整備するのには国家資格が必要だからだ。
まずは自動車整備士という国家資格に対して、その価値を見直すべきだと筆者は考える。
例えば、病院で行われる看護業務を見てみよう。国家資格有の看護師と、資格無しでもできる看護助手の場合、時間給で500円程度、月給では7万円弱の差が出てくる(金額は筆者調べの一例)。
医療行為を出来るのが看護師、それ以外の業務を行うのが看護助手なのだが、資格の有無で大きく報酬が変わっていることがわかるだろう。
クルマのお医者さんである整備士の待遇を高めるためには、まず自動車整備士資格に対しての価値を高めていくことが大切だ。
時代は令和になった。昭和、平成初期のモーレツに身を粉にして働くことが良いとされる時代は、既に終わっている。価値あるものを正当に評価し、自動車整備士への対価を上げることが、整備士の低待遇問題を解決する糸口になるだろう。
整備士の担い手も少なくなった今、待遇改善は待ったなしの問題だ。
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