近藤真彦監督が率いるKONDOレーシングが、2019年からニュルブルクリンク24時間耐久レースへの参戦を2018年10月1日に発表した。その会場でもうひとつの電撃的ともいえる発表があった。
それが日産が誇る自動車整備士養成学校、日産自動車大学校とのコラボが現在のスーパー耐久から2019年よりスーパーGT、GT300クラスへステップアップするというもの。
「ひとりでも多くの若者をクルマ好きにしたい」。3年前の取材開始時に近藤監督がベストカーに語った思いは変わらない。GT300クラス参戦への道のり、そして学生プロジェクトに迫ります。
文:ベストカーWeb編集部/写真:塩川雅人
■延べ1万人が体感!! 日産自動車大学校とのコラボ
KONDOレーシングが日産自動車大学校とのコラボを始めたのが2012年。
スーパー耐久(S耐)にてGT-R GT3を走らせることになり、そこに日産系列の自動車整備士学校である日産自動車大学校の学生を送り込んだ。これが通称「S耐プロジェクト」だ。
目的はレースという緊張感のなかで、プロのメカニックたちの「早くて確実な仕事」を目の当たりにするというもの。
学生の役割も実際にピットで作業をしたり、広報、ゲストの応対など作業は多岐にわたる。このプロジェクト、今でこそ一定の評価を得ているがスタート当時は違った。
近藤監督自身も当時を振り返って懐かしいエピソードを話してくれる。
「あの頃は”日産自動車大学校”って書いた服を着た子どもたちがウロウロしているってよく言われて(笑)。なにをやっているかも周りはわからない状態でした」。
それだけアウェーの中で始まったプロジェクト。ベストカーも2015年から密着取材をしているのだが、当時は「学生が遊びに来ている」などという関係者も少なからずいた。
しかし2016年に転機を迎える。この年、日産自動車大学校チームはシリーズチャンピオンを飾ったのだ。
その時から明らかに空気感が変わってきた。他のチームからも「学生の社会科見学」なんて見方がなくなり、チームに学生たちは欠かせない存在になっている。
7年間、実際にサーキットで学んだ学生、日産自動車大学校の校舎でこのプロジェクトに関わった学生、延べ1万人もの学生が社会に巣立っていった。
ディーラーでの勤務だけでなく、日産の開発現場にも多くの人材を輩出している。今後の日産、そして自動車業界を担う多くの才能を生み出す可能性に満ちている。
■S耐からGT300へ より緊張感を高める体験を
そして2019年、プログラムの実施カテゴリーがS耐からスーパーGT、GT300にステップアップする旨の発表が2018年10月1日にあった。
「格上げ」という表現をするメディアもあるが、それは違う。
そもそもがアマチュアメインとはいえ日本随一の耐久レースであるS耐と、スプリントレースの違いがある(観客動員数などはたしかにGTのほうが格上だが)。
それはさておき、7年間このプログラムに関わる藤井誠暢(ふじい・とものぶ)選手に来年のGT300へのステップアップについて聞いてみた。
「緊張感という意味ではGT300のほうがより強くなると思います。7年間このプロジェクトに関わってきましたが、個人的にはとても嬉しいですよ。
学生にとってもプラスになることは間違いないですし、より多くの体験ができるはずです。瞬く間に成長していく学生たちの活躍が楽しみです」。
なんとなく授業を受けて整備士になるよりも、モータースポーツという極限の舞台で学びを得ることは必ず糧になるはずだ。
お客さんにとってもクルマ好きの整備士のほうが、信頼してクルマを預けることができるはずだ。ましてや時間にも制約のあるモータースポーツの世界で、確実に仕事をこなすプロの技を見た彼らはひと味違うはず。
近藤監督のモットーは「継続は力」。S耐プロジェクトでは7年間の継続をしてきた。来季のスーパーGTではGT500とGT300のダブル参戦となるが、きっと学生プロジェクトはこの先も続いていくだろう。
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