今年4月20日にワールドプレミアされたレクサスでは初めてとなるBEV専用モデルとして登場したRZ。ステア・バイ・ワイヤーを独自の技術として導入しているのだが、その走りは果たしてどうなのか?
すでに同様のアイテムを日産が現行スカイラインで採用していたが、システムの根幹がそもそも今回のRZのものとは違っている。その乗り味を下山テストコースで試乗した自動車ライター、渡辺敏史氏がレポートする。
文/渡辺敏史、写真/レクサス、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】レクサス初のBEV専用SUV、RZのステア・バイ・ワイヤーモデルを写真でCHECK!(26枚)画像ギャラリー■完全二重冗長システムで万全の体制に
レクサスとしては初の、専用設計プラットフォームを用いるBEVとして今年度中の発売を予定しているRZ。その技術的独自性を象徴するアイテムとして採用されるのが「ステア・バイ・ワイヤー」(SBW)だ。
SBWはすでにV37型スカイラインが「ダイレクトアダプティブステアリング」(DAS)として実装しているが、こちらはフェイルセーフのためにステアリングシャフトを持ちつつ、その物理的接続をクラッチで制御しながら、通常時は操舵信号を電気的に舵角へと変換する仕組みだった。
RZに搭載予定のSBWは、コラムとラックの間に物理的シャフトを持たない、完全分離のシステムを構築している。
当然ながらリダンダンシー(冗長化)にまつわる課題は山積するが、RZのSBWはステアリング〜タイヤ間の情報通信や、舵取り用のモーターコントロールユニット、操舵フィードバック用のトルクアクチュエータに至るまで完全二重の冗長システムでトラブルに備えている。
加えて、システムを動かすための電源も車両側のシャットダウンを想定して独立系統のバックアップバッテリーを搭載する念の入れようだ。
■切れ角約150度に設定された操舵システム
SBWの大きな効能は操舵量と舵角の関係をプログラムで自在に可変できることだが、RZのそれはコンベンショナルなステアリングの操舵応答性に対して、約100km/hを境に低速側ではクイックに、高速側ではルーズに応答するようギア比が設定されている。
そこに加えてキャラクターを決定づけているのが、切れ角約150度、つまりロックtoロックで一周しないという極端なトラベルに設定された操舵システムだ。持ち替えて回すという当たり前の操作を無にする、それゆえに採用されたのが、ホイールとは言い難い面食らうような形状のステアリングということになる。
そこまでしてSBWを採用する意味……その土台となるのはADASの進化、その向こうにある来たるべき自動運転の時代に向けた重要な要素技術ということになる。例えば緊急回避や自動パーキング時のせわしない転舵は、舵と前輪との物理的な接続のないSBWならばゼロ化することも可能だ。
が、RZのSBWはドライバーのオーバーライド時に方向を見失わないよう、現状はあえてステアリングを作動させているという。
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