今のところ高額な電動バイクだが、交換式バッテリーの普及によりガソリンエンジン車より価格が安くなる可能性が出てきた。そのカギを握るのが、エネオスと国内バイクメーカーが出資する新事業「ガチャコ」だ。
一体どういうことか、探ってみた。
文/沼尾宏明、写真/eやん OSAKA説明会事務局、ヤマハ
【画像ギャラリー】まるでモバイルバッテリーのようにバイクの電池交換!(5枚)画像ギャラリー今秋から大阪と東京に10か所程度のバッテリーステーションを設置へ
高価な電動(EV)バイクがリーズナブルになる――。そんな朗報が聞けたのは、2022年7月4日に行われた「eやんOSAKA」成果説明会での一幕だった。
eやんOSAKAは、国内4メーカー(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)を含む日本自動車工業会 二輪車特別委員会、大阪大学、大阪府、ローソンによって、2020年9月から約2年にわたって行われた実証実験プロジェクトだ。
大阪大学の学生らにEVバイクを有料(月額1000円)で貸与し、大阪大学(吹田キャンパス、豊中キャンパス)や周辺地域のローソンにバッテリー交換ステーションを設置。EVバイクの普及に向けて課題を洗い出した。
バッテリーは共通仕様で、ステーションにはあらかじめ満充電されたバッテリーを用意。残量の少ないバッテリーと交換することにより待ち時間ナシですぐ走行できるため、「充電時間が長い」電動バイクのデメリットを解消できる。
このeやんOSAKAのモデルを継承し、事業化を目指す企業として新会社「Gachaco(ガチャコ)」が2022年4月に設立。エネオスと国内バイク4メーカーが出資し、電動バイク用バッテリーのシェアリングサービスやインフラ整備を目指す。
今回の説明会では、今秋から大阪と東京でバッテリー交換ステーションを10か所程度設置することも発表された。経済産業省の補助事業のスキームを活用しながら実証事業として行い、2022年度は200台程度、2023年度は1000台のEVバイクにサービスを提供するという。
「バッテリー」と「車両」を切り離す売り方が可能になる
ガチャコが普及することによって、EVバイク本体にバッテリーが含まれなくなり、同仕様の内燃機関バイクより価格が安くなる可能性があるというのだ。
この発言をしたのは、eやんOSAKA研究成果の説明会に参加した自工会副会長兼二輪車委員会委員長の日高祥博氏。日高氏はヤマハ発動機社長であり、ガソリンエンジンの「ビーノ」と、同モデルのEV版である「E-ビーノ」を併売している。前者は税込20万3500円、後者は同25万9600円で、電動版の方が約5万6000円高い。
日高社長はE-ビーノを例に挙げ、「EVで高価なのはバッテリー。ガチャコによってバッテリーがシェアリングされれば、(バイクの本体価格から)バッテリーを外出しにできる。この場合、私のコスト感覚からすれば、製品価格はガソリン版より下がる」と話す。
また自工会二輪車委員会 電動二輪車普及部会長(ホンダ二輪事業統括部部長)の長田展英氏によると「ガソリン車なら日々ガソリン代として支払うものを、EVはバッテリーとして一時期に高い値段で支払うのが問題。車体とバッテリーサービスを切り離すことで、お客様の初期負担が軽減できる。それも車両を買っていただくのか、車両そのものもサービスとして提供するのか、多様なやり方、販売手法があると思う」という。
さらに、ガチャコの料金設定は「調整中」(ガチャコCEO 渡辺一成氏)ながら、利用距離に応じた月額料金を検討中。スマホの料金プランと同様のイメージになるという。
スマホではギガ数などデータ通信料によって数種類の料金プランが用意され、通信料が多いほど料金が高い。同様にガチャコでも利用距離によって異なる料金プランを設定する予定という。
ガチャコに出資した2輪メーカー4社は、2019年から「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」を設立。バッテリーを相互利用できるよう交換式バッテリーと交換システムの標準化を進めているのが現状だ。
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