2022年5月、BMW Mが50周年を迎えた。BMW Mは、1972年に設立され、BMWの技術とクルマに対する情熱を集結したスポーツブランドである。2022年9月には、六本木ヒルズにてBMW Mの世界観、ブランドを体現できるイベントを実施予定だという。
そこで今回は、50年という節目の年を迎えたMシリーズの歴史と魅力を解説。さらに「一生に一度はBMW Mシリーズに乗るべきなのか」について考察していく。
文/渡辺敏史、写真/BMW
【画像ギャラリー】中古でオススメ「M」モデルと設立50周年を記念した限定車の写真はこちら!!(16枚)画像ギャラリーBMW M社誕生の歴史を振り返る
BMWのモータースポーツ活動を統括する会社として発足したBMW Motorsport GmbH。その誕生から、今年で50周年という節目を迎えました。現在でいうところのBMW M GmbH、日本でいうところのM社はこの間、レース活動のみならず市販車の開発も手掛けるようになり、同社のスローガン「駆けぬける喜び」を包括的にプロデュースする部門へと発展を遂げています。
50年の歴史においてはターニングポイントが、その時々にちなんだモデルと共にありました。まずM社の存在をクルマ好きに広く知らしめたのは3.0CSLです。
3.0CSをベースにL=リヒト=軽量化を施したそれは、欧州ツーリングカー選手権でメキメキと頭角を現し、1973年には圧倒的強さをみせてタイトルを獲得。その際、M社が手掛けたベース車両はその物騒なエアロダイナミクスデザインからバットモービルの愛称で一目置かれることとなりました。
次いで79年に登場するのがM1です。これはM社にとっては初のトータルプロデュースモデルとなります。当時のポルシェ935がわが物顔だったFIAのグループ4/5規定で勝てるリアミッドシップのスポーツカーとして企画され、車体設計をランボルギーニに委託、かのジャンパオロ・ダラーラがシャシー設計を担当、そしてデザインはイタルデザインと、もうスーパーカー世代にはヨダレもののオールスターキャストだったわけです。
実際にはランボルギーニへの業務委託も難航、ホモロゲーションの規定台数を作るのもやっとなうえ、戦闘力を高めるまでもなくレースそのものが規定変更を迎え・・と、悲運にもほどがあるクルマとして歴史に名を刻みました。
次いで85年に登場したのがM3です。ベースとなったのは日本でもBMWの名を広く知らしめたE30系3シリーズ。そこに悲運のM1に向けて設計されたM88型3.5L直6の2気筒をドロップし、2.3L直4としたエンジンを押し込みます。
足回りは5シリーズの部品を活用して強化、ボディはワイド化されるだけでなくリアウインドウから後ろを空力的に最適化させるため再設計されるなどの手間を掛け、FIAのグループAカテゴリーに適合させた初代M3は世界のツーリングカー選手権で大活躍。その戦闘力の高さはMの名を再び世界に知らしめることとなりました。いっぽうでこの年、M社はE28系5シリーズにM88型をまるっと押し込んだM5も発表。
市場では、BMWといえばなんかすごいエンジンを積んだバカッ速の箱グルマ屋さんというイメージが増強されることになります。その後、3シリーズベースのM3はBMWのモータースポーツ活動の基軸として、M5は究極のBMWを体現する最上級サルーンとしての立ち位置を固めていくわけです。
現在、BMWのラインナップにおいてMの名を配するモデルはかなり多岐にわたっています。そのうち、一番カジュアルなのはMスポーツ系。エアロエフェクトを意識したエクステリアやスポーツシートなどを配するインテリア、大径タイヤに軽く固められたアシなどを持つ、どちらかといえばコスメティック寄りのパッケージで、ほぼ全ての銘柄に用意されています。
次いでMパフォーマンス系。こちらはMスポーツ系よりも更に動的なトータルバランスを意識したパッケージで、M550iやM50iといった、グレード名の冠にMを配する車名で区別されます。
そして頂点に位置するのがM系。既存銘柄がベースとはいえ、M社がエンジンやシャシーをはじめとしたメカニズム関係をトータルプロデュースする究極のBMWスポーツです。車名は各シリーズ名+Mと至ってシンプル。M3やX5Mなどと表されます。現在、日本のBMWではM3、M4、M5、M8、X3M、X4M、X5M、X6Mと8の銘柄がラインナップされています。
と、ここで、一生に一度はMシリーズに乗るべきか? というお題について。もしMシリーズを示すものが頂点のM系だとすれば、僕の答えはほぼノーです。
コメント
コメントの使い方