2022年8月23日、新型シエンタが発表・発売された。高剛性シャシーとデザイン一新を軸に、先代よりも魅力を大幅に高めている。特に、初代シエンタを彷彿とさせるような、エクステリアデザインは大きな話題だ。
約7年ぶりにブラッシュアップされたシエンタは、販売目線から見るとどう映るのか。その魅力や進化を考える。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】やさしさ全開!! 随所に工夫が凝らされた新型シエンタをギャラリーでチェック(18枚)画像ギャラリー大幅進化で魅力度アップ! 新型シエンタはココが良い
スタイリッシュなイメージが強い2代目から、3代目は優しさや可愛らしさを感じられるエクステリアデザインになった。大きく開いたフロントグリルとヘッドライトの位置関係は先代と似ているが、トヨタのアイコンだったキーンルックが弱まり、親しみやすさを感じられる。また、クルマの塊感が強く、安心感が高まった。ファミリーカーとしては、重要なポイントだ。
インテリアは落ち着いた雰囲気の中に、多くの機能を詰め込んでいる。収納スペースが多く、大きさやカタチに加えて配置箇所にも工夫を感じた。
あえて目立たないようにした気配り機能にも注目だ。リア乗降用に使うアシストグリップは、グリップをセンターピラーに取り付けるのではなく、内装を波状に成形し、グリップの代わりにしている。フロントドアでもドアトリムの中にグリップ形状を織り込んで、デザイン性を失わずに機能を付加する工夫が見えた。
シエンタのような、ミニバン(プチバン)には、車格以上の装備を求められる。新型シエンタでは、運転席シートバックに設置された、USB端子(タイプC)を見ていても思うが、「あったらいいな」がそろっていることはもちろん、こうした装備に「後付け感」がほとんどない。デザイン段階から「機能」を意識することで、クルマの使いやすさは大きく高まる。
シエンタは、実際に触れて感じてみることで、良さが伝わるクルマだ。先代よりも、クルマの中身が非常に濃くなったという印象を、新型シエンタからは強く感じる。
シエンタのキャラクター維持はどう見える? 販売現場の反応
新型シエンタは、最上級グレードのZが加わり、これまでの2グレードから、Z・G・Xという3グレード体系に変わった。パワートレインは1.5Lダイナミックフォースエンジンのガソリン車と、同エンジンを使用したハイブリッド(HEV)の2種類となる。
HEVには待望の4WD(E-four)が追加されたが、先代モデルのガソリンにあった4WDは、3代目では姿を消すことに。ここは少々残念な部分だ。
スペイン語で7を意味する「Siete(シエテ)」が車名(シエンタ)の由来であり、シエンタは新型においても7という数字にこだわっている。
特にシートアレンジは、ライバルのフリードを意識して、2列目をキャプテンシート(6人乗り)にする可能性がささやかれていたわけだが、3代目でも先代までの2列目ベンチシートを継承し、7人乗りと5人乗りというバリエーションは変えなかった。
ライバルを意識しすぎず、シエンタとしてのキャラクターを突き通した姿勢には、販売現場からも好意的な声が多い。販売現場からの声を反映させた5ナンバーサイズの維持や、E-fourの導入、さらに好評だった初代の雰囲気を3代目に踏襲させるなど、シエンタのターゲットを理解し、ターゲット層へ強く訴求する商品作りは、販売現場での売りやすさを大きく高める。
実際に営業マンからは、「ベンチシートが維持されて良かった」「フリードよりも少し年齢層の若いユーザーが買っていく。フリードの後追いをせず、シエンタでいてくれて安心した」という声があった。
ボディ形状が箱型になり、先代よりも見切りが良くなった点も、販売現場の評価が高い。圧倒的に使いやすくなったことを、ユーザー目線で説明しなければならない営業マンにとって、試乗していて感じられる先代との大きな差は、シエンタの「売り」を話しやすくしてくれるポイントだ。
新型モデルとして、性能を高めるのはもちろんだが、ファミリーユースのクルマでは、営業マンの「説明」や「豆知識」が、意外と商談の出来を左右してくる。さまざまな仕掛けで売りやすくなったシエンタ。商品力のみならず、トヨタの販売力が後押しし、大ヒットは間違いない。
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