ドライブ中に、頭上から光が差し込む開放感が魅力のサンルーフ。1980年代~1990年代には、デートカーや高級車の必須アイテムとされていましたが、2000年代にはいるころには、あまり見かけなくなっていました。ところが最近になってガラス(解放)面積を拡大したパノラマルーフという形で復活し、採用モデルが急増しています。
なぜサンルーフは衰退したのか、そしてパノラマルーフとして復活したのはなぜか。今後の展開とともに考察します。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA、HONDA
バブル景気の後押しで一躍人気装備に
日本で最初にサンルーフを搭載したのは、いまから遡ること55年前の1968年に誕生したホンダの名車「N360」です。この時は手動開閉でしたが、1978年のホンダ「プレリュード」で初めて電動のサンルーフが登場しました。その4年後に登場した2代目プレリュードは、デート用のクルマとして人気となったデートカーの元祖的な存在ですが、同時にサンルーフのパイオイアでもあったのです。
ドライブ中に頭上から明るい光が差し込み、開ければ新鮮な空気を引き込め、開放感を満喫できるサンルーフは、デートカーや高級車だけでなく、当時ブームとなったRVやミニバンにも採用されるなど、1980年代~1990年代前半を代表する人気アイテムに成長。1980年代といえば、バブル景気に向かって日本中が沸き上がっていた時代。「クルマに何でも付けてしまえ」という時代であったことも、サンルーフが人気となった理由でしょう。
ところが、2000年を迎える頃には、状況が一転します。1990年代前半のバブル崩壊の影響や地球環境問題のクローズアップによって、クルマには燃費低減や厳しいコスト低減が要求されるようになり、重量が増えて燃費が悪化し、コストがかかるアイテムだったサンルーフは、徐々に市場から淘汰されたのです。
圧倒的な解放感を演出するパノラマルーフとして復活
いったん下火となったサンルーフですが、最近になってパノラマルーフという形で復活して、採用モデルが急増しています。
サンルーフは、ルーフの一部をくり抜いて、開閉できるガラスをはめ込む機構なので、解放面積の大きさには限界がありました。パノラマルーフにも、開閉機能を持つタイプがありますが、開閉が目的でなく、ルーフと一体感のある構造によって、(その名が表すように)広い景色が見えるよう解放面積をより大きくして、圧倒的な解放感を実現しているのが特徴です。
現行モデルの代表的な採用例としては、トヨタの「ハリアー(2020年)」やプロトタイプが公開されているレクサスのバッテリーEV「RZ」、「カローラクロス(2021年)」や新型「プリウス(2023年)」、そしてホンダの「ヴェゼル(2021年)」、コンパクトバッテリーEV「ホンダe(2020年)」、日産の「アリア(2022年)」など、オプション設定やハイグレードモデルにパノラマルーフが搭載されています。特に、欧州車を含めてバッテリーEVで採用が増えている傾向が顕著です。
人気が低迷していたサンルーフが、なぜここにきて復活しているのでしょうか。その要因として、ガラス技術の進化と商品性の変化の2つが考えられます。
コメント
コメントの使い方