「スリップサイン」が露出したら、タイヤは寿命に達したと判断できますが、高速道路を走るトラックには他にも溝の深さの決まりがあります。また、タイヤの残溝以外にも継続使用が困難となるサインがあります。
安全運航のためにトラックドライバーなら知っておきたいタイヤ寿命の目安を、商用車タイヤのプロが解説します。
文/ハマダユキオ
写真/写真AC(トビラ写真)・ハマダユキオ
(画像はイメージです)
スリップサインだけじゃない残溝の目安
タイヤの使用限度、つまり摩耗して交換する目安は「スリップサイン露出」で残溝が1.6ミリとなります。そのタイヤの1箇所でもスリップサインが出ていれば交換です。当然、交換しなければ車検をパスできません。
この事はトラックドライバーさんのみならず、車両整備担当さんや、その他クルマに関わる方なら周知の事実でしょう。
ただタイヤ交換の目安はこれだけではありません。安全に運行して頂くための交換の目安、サインが他にもあります。
繰り返される値上げによってタイヤの単価も数年前と比べるとかなり上がっています。タイヤをギリギリまで使いたい気持ちはわかりますが、安全を犠牲にするとかえって高くつく場合や、取り返しのつかない事態も考えられなくはありません。
タイヤの摩耗は、ミクロの世界でタイヤの接地部分と路面の突起物が衝突し、粒子の離脱現象が繰り返されることで進行していきます。
路面との衝突というイメージから、やはり制限速度を守り、早めに減速して、充分に減速してから旋回し、ゆっくり加速するという運転がタイヤとして長持ちする良い運転です。これはタイヤだけではなく車両全般に言える事で消耗品の交換サイクルも伸び、経済的で環境負荷も少なくできます。
すり減ったタイヤは何がダメなのかというと、もちろん一番の理由は滑るからです。雨の日などに路面とタイヤの間にできる水の膜は、タイヤに掘られた溝を伝って排水されます。これにより路面とゴムの密着度を上げて、スリップを防ぎ、駆動力・制動力を路面に伝えます。
当然溝が浅いという事は排水する水の量が減るため、排水が間に合わずタイヤと路面の間に水膜が多く発生。結果、駆動力・制動力が伝達し難くなりスリップに至ります。
車両総重量が重いトラック・バス用タイヤには、高速道路を使用する車両に関してスリップサインとは別に使用限度の数値があります。小型トラック・バスは残溝2.4ミリ、大型トラック・バスは3.2ミリが使用の限度になります。
これは道路運送車両法第47条の2、日常点検整備の実務(タイヤの溝の深さ、損傷、異物の有無)に明記されておりますので、点検時に確認してください。使用の限度を超えたタイヤを装着した車両は、高速道路を走行できませんので交換をお願い致します。
「残溝1.6ミリ」はスリップサイン露出が目安となり、タイヤにインジケーターもありますが、高速道路を使用するトラック・バスの使用限度である「3.2ミリ」や「2.4ミリ」は自分で測定するしかありません。
残溝を測定するには「デプスゲージ」という定規を使います。スライドして測定するノギスのようなモノですが、デジタル表示が可能なモノでも、安いものだと1000円程度なので、マイツールにするのもアリですね。