これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、トヨタ屈指のレアモデル、オリジンについて紹介していこう。
文/フォッケウルフ、写真/トヨタ
■ただのレトロ調ではないトヨタ渾身のメモリアルカー
「ノスタルジックな造形美と最先端のドライブフィーリングを一度に味わうことができれば……」
これは、トヨタの国内自動車生産累計1億台達成の記念事業の一環として、同社の歴史を象徴する初代クラウンをモチーフに作り上げられた記念車「オリジン」のカタログに記述されていた一節である。
オリジンは2000年に特別記念モデルとして誕生した。こうしたクルマの場合、メーカーの売れ筋車種をベースにした特別仕様車を仕立てるというのが通例だが、オリジンは“1億台達成”という大きな節目にふさわしい手の込んだ作り込みがなされている。
レトロ調とか、過去の名車をリバイバルしたようなクルマは数あれど、オリジンは車両のコンセプトや製造工程など、すべてにおいてそれまでのレトロカーとは違っていた。なによりトヨタが長年にわたって培い、伝承してきた「匠の技」と最新自動車技術の融合を図っているところが、オリジンの見どころのひとつだ。
コンパクトセダン「プログレ」のプラットフォームと主要コンポーネンツを用いているが、センチュリーの生産を行っている関東自動車の熟練工による入念な工作と組付けが行われるなど、随所にクラフトマンの「技」を感じさせる卓越した仕上がりを特徴としている。
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