乗用車のMT車に乗る方はよくご存じだろうが、シフトパターンはニュートラルから左上に押せば1速、下におろして2速というのが普通だ。バスをはじめとする大型車は位置は同じだがそこにあるのは2速。では1速はどこにあるのだろうか。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■バスは2速発進が基本!
現在では運転免許を取る人のほとんどがAT限定免許だそうだ。現実問題としてマニュアル車がほとんど売られていないのだから無理もない。バスも現在はほぼAT車しか売られていないが、現在のところ大型免許(二種を含む)にAT限定はない。
よって免許を取得する際にはマニュアルトランスミッションのバスを運転することになるのだが、クラッチを踏んで乗用車のようにレバーを上に倒すとそこにあるのは1速ではなく2速だ。そしてバスは(大型車は)2速で発進するのが普通だ。
1速はどこにあるのかというと、ニュートラルの位置から左に押して下に倒した位置にある。さすがにこの位置では使いにくいが、ほぼ使わないのでこれでよいのだ。
■トルクフルな大型車ならでは
貨物を満載すると車利用総重量が20トンほどにもなる大型トラックや、何十人もの人と荷物を載せて走るバスは、トルクが太くなければ動かすことが困難なので、圧縮率の高いディーゼルエンジンが採用される。最近はダウンサイジングで10リッターを超えるエンジンのバスは珍しくなったものの、少し前まではざらにあった。
そんなに大排気量なエンジンを積んでいるバスは、発進しようとする力が強力なので半クラッチに失敗してもそう簡単にはエンストしない。むしろ車重も軽いがトルクの小さいガソリンエンジンの軽自動車の方がエンストしやすいほど。
そこで通常の発進では十分なトルクを得られるギア比を2速に設定しているので、1速を使用して発進する機会はほとんどない。しかし乗客満載で登り坂での発進が必要な時などのために1速がある。
■乗用車ではダメです!
乗用車でも慣れれば2速発進ができないわけではない。シフトチェンジの回数が減るのでたとえば2-4-6速のようなシフトをすると、疑似的にAT車のようなフィーリングになる。しかし半クラッチの状態が長くなることでクラッチの負担が増し、寿命が短くなるので常用はおススメしない。
乗用車は1速で発進することを前提に設計されているので、ぬかるみや雪道で動力を路面にあまり強いトルクを伝えないほうが発進しやすいなどの特殊な状況でもない限り、2速発進はしないほうが良い。
マニュアルトランスミッションのバスに乗車する機会があれば、運転士が最初に入れるギアは位置こそ乗用車と同じだが、そこは2速なので知っておくとあなたも立派なバスマニアだ。
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