ホンダが2023年の年の瀬に送り込んだ期待のニューモデルがWR-V。ヴェゼルとほぼ同寸の全長ながら1650mmと全高が高く、ボリューム感たっぷりでやたら存在感がある。そして、なんといってもN-BOXカスタムターボの売れ筋グレードよりも安い209万8800円からという価格が魅力的。でも、安いってことは、作りもそれなりってことなんじゃない!? なんて思うかもしれない。ところが実際に見て触って、走らせてみると、WR-Vのバリュー感を実感したのでありました!!
文/梅木智晴(ベストカー編集委員)、写真/平野学
【画像ギャラリー】210万円を切るコンパクトSUVホンダWR-V 「安かろう、悪かろう」……などということはない、その理由とは?(8枚)画像ギャラリーコストは落としているけど、品質は落としていない! 快適装備もフル装備
フロントグリルがドンと大きく、ボンネットフードが高いから、とにかくフロントマスクの存在感が大きい。でも、大きなグリルはブラックアウトされているから嫌味がなく、いわゆる「オラオラ顔」じゃあない。スッキリ薄顔のヴェゼルと対照的。なるほどね、全幅が1790㎜とヴェゼルと同寸、全長だってヴェゼルの4330mmに対し5mm短いだけのWR-Vを敢えて日本市場に投入したホンダの狙いが見えてきた。そう、ヴェゼルとは異なった、もっとワイルドな、存在感なあるSUVが欲しい、というニーズに応えるモデルなのだ。
そして価格設定。WR-Vは直列4気筒1.5リッターガソリンエンジン搭載のFFモデルのみとすることで価格を抑えた。e:HEV中心のラインナップとするヴェゼルとはハッキリと棲み分けをしたのだ。ハイブリッドが必要ならばヴェゼルをお勧めします、という割り切りだ。また、グレードを3タイプに絞ることで開発工数を減らすことが可能となり、コストが圧縮できたという。
そう、WR-Vのコストダウンは車両そのものの品質にはまったく関係のない「開発工数低減」や「部品の共用化」など、さまざまな角度から盛り込まれているのであった。タイを開発拠点としてインドで生産をし、インドを中心としたアジア圏でも販売するというホンダのグローバル戦略での開発もコスト圧縮に寄与している。こうして実現したのが209万8800円をボトムとする価格設定なのだ。
この「X」グレードにも最新バージョンのホンダセンシングは標準装備だし、LEDヘッドライトだって上級グレード同様標準装備。内装では上級グレードのプライムスムース&ファブリックのコンビシートに対しフルファブリックシートになり、ステアリングは本革巻きではなくウレタンになるのだが、けっしてチープな印象ではない。センターディスプレイやオートエアコンなども上級グレード同様標準装備で、安全装備、快適装備は基本的に3グレードすべて共通だ。
見て、触って、座って、改めて質感の高さを実感する!!
だいたいの場合、パッと見た第一印象で品質の善し悪しというものはわかるものだ。外装だったらパネルのチリ合わせや樹脂パーツの成形精度、塗装の質、取り付け精度など。これらが「イマイチ」だと、パッと見た時にクルマ全体がチープに見えるのだ。WR-Vはその佇まいが凛として美しく見えた。細部を見ていくと、やはり仕上げのよさが見えてくる。ドアの開け閉めも節度感があっていい。軽い力で“バスッ”と精度よくドアが閉まり、ビビり音などは皆無だ。ドア周囲には厚みのあるウエザーストリップが貼られている。こうした立て付けにもチープ感がまったくないのがうれしい。
インテリアも同様。インパネやドアトリムは、さすがにソフトフェイシアではないものの、樹脂パネルはペラペラなんてことはなく、ほどよい厚みと弾力のある素材で手触りは悪くない。中間のZグレード以上ならステアリングやシフトノブは本革巻きだ。そしてこのあたりはコスト圧縮のたまなのだろうが、パーキングブレーキは最近のクルマにしては珍しく電動(EPB)ではなくレバー式となる。しかし別に不便は感じない。またシフトレバーはコンベンショナルなフロアタイプだが、これも誤操作の心配が少なく、むしろ好印象だ。
そしてシートがいいのだ。特別なシートということはないのだが、座面の形状やクッション厚みなどが適切でスッと身体がホールドされる。後席は座面長、背もたれ高さともにしっかりとサイズを取っているため腿が浮いたりすることはなく、長時間のドライブでも疲労は少ないだろう。
とまあ、いいことばかりを書いていると、「ホントか?」と訝しく思われるかもしれないが、我々も取材前は「お安く売るインド生産のクルマだろ?」と、粗さがしをしてやろうくらいの気持ちで取材に臨んだのでありました。今どき生産国による品質差などないことはわかっているけれど、どうしてもそんな風に考えてしまいがち。と、そのうえでの評価なので、とにかく信用していただくしかありません! それほど驚きの連発だったということです。
さらに驚いたのが走りの質感なのだが、それはまた続編をお楽しみに!
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コメント
コメントの使い方パワートレインや足回りは安く、快適装備や内外装にしっかりお金を掛ける。
軽と同じ手法で、N-boxで戦い勝ち続けてきたホンダならではの車の作り方だと思います。
後からe:Hevが投入されたとしても、シビックやフィット同様に差額が大きいでしょうから、安いガソリン版買った人も後悔しにくいのでは。