商談・値引きといった昔からの商文化が残っている自動車販売。オンラインショッピングのような手軽さはなく。店同士を比較し、競わせ、大きな値引きを勝ち取るのが昔からのクルマの買い方だが、最近のトレンドは「スピード」が値下げのカギを握っているようだ。
文/佐々木 亘、写真:TOYOTA
■時間と労力をかける面倒な買い回りはするべきではない
時を10年もさかのぼれば、新車購入時に買い回りをするのは当たり前のことだった。
わざわざ系列の違うお店を探し、同じクルマを買うと伝えて見積もりを出させる。
「あっちは20万引くと言っているが、こちらはどうなんだ?」とさらなる値引きを迫り、あっちとこっちを入れ替えながら、より安く買えるお店を探していた。
他メーカーのクルマまで含めると、買い回り店舗の数が5~10になることも。
もちろん1日では回り切れず、契約を結ぶまで何か月もかかるということもザラにあった。
こうした商文化は、自動車販売に色濃く残っているのだが、最近は買う側も売る側も、こうした面倒で時間のかかる方法を嫌う傾向にある。
なるべく簡潔に、時間をかけずに安く買う。すなわち決定までのスピードが大事であり、結果的にお得で無駄のない、ベストな買い方となっているらしい。
■時間をかけすぎると買う側にはデメリットしか生まれない
かつては、商談を長期戦に持ち込んで大きな値引きを勝ち取るという手法が流行ったが、今では時間をかければかけるほど、買い手には不利な条件が並んでしまう。
まず、新しいクルマが届かないというデメリット、これが意外と大きい。最近のクルマはオーダーから納車まで3か月~半年待つのは当たり前になった。
中には年単位、それも2年や3年待つクルマもある。その一瞬を逃したら、注文すら受けてもらえなくなるクルマもある。
たった1日決定を延ばすだけで、何か月もクルマの到着が遅れるなんてこともあるのだ。
さらに時間をかけると、営業マンの熱意を奪う。買い回りしていたお店が、同一系列のお店で、情報が共有されることもあるだろう。
すると「この人はいくつもお店を買い回りしている。面倒なことに巻き込まれる前に、違うお客様へアプローチしよう」と売り手側が離れていってしまうのだ。
商談に時間をかければかけるほど、大幅値引きが出る可能性は低くなる。営業マンの気持ちと鉄は熱いうちに打った方が良い。
最近では買うと決めたら、一息に押し切ってしまった方が、購入条件が良くなる傾向にある。
昔ながらの時間のかかる商談は、営業マン・ユーザーともにデメリットしか生まず、誰も望んでいない結果が待っているだけだ。
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