ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はレクサスLC500コンバーチブル試乗です!(本稿は「ベストカー」2020年12月26日号に掲載した記事の再録版となります)
撮影:茂呂幸正
■とにかくカッコいい。スピンドルグリルの完成形だと思うし、そこはかとなく漂う古くささも魅力
撮影場所に置いてあるレクサスLC500コンバーチブルを見て、心が激しく踊った。
このクルマで銀河の果てまでドライブしたい! 見た瞬間そう思ったのだ。
いいクルマに触れるたびに妄想が膨らむ私だが、さすがに「銀河の果てまで」というのは初めてのこと。
女の子を乗せて軽井沢や鎌倉に行こうなんて、そんなシケたクルマじゃない。口説き文句は「一緒に銀河の果てまで行こうぜ」で決まりだ!
当連載の編集担当者は「エンジンが5Lもあるから税金が大変」だの「ホイールが高そう」だの「道路の段差で下を擦りそう」だの、シケたことばかり言っていたが、0点どころかマイナス1000点!
こんなに素敵なクルマを前にして、自分が買うわけでもないのにおカネの心配ばかりしている。庶民派の視点はベストカーのいいところだが、いくらなんでも器が小さすぎる(笑)。
ここまでまだクルマを外から見ているだけで乗ってもいないが、私はLCコンバーチブルの虜になっている。
とにかくカッコいい。
これこそスピンドルグリルの完成形だと思うし、色もよくインテリアもゴージャス。そこはかとなく漂う古くささも魅力だ。
おそらく、こういうインテリアはもう最後なのだと思う。
これからはiPadのようなモニターが何枚も並ぶインパネが普通になるはずで、この、いい意味でしつこそうなデザインは終わりを告げる寸前。最後の「ゴージャス版オヤジ内装」となりそうで、そこがまたいいのだ。
リアシートはおまけみたいなものだが、手荷物が置けるし、いざとなったら4名が乗れるというのはやはり便利。
そして、何よりも幌を閉めた時のカッコがいいのがまた素晴らしい。オープンカーはクローズ時のデザインこそ重要なのだ。
ただし、唯一テールランプのデザインだけは納得いかない。もっとシンプルなほうが断然よかったのではないかと思う。
■投手の球をいい音で受ける名捕手だ!
話は変わるが、かつて、河野太郎さんが防衛大臣だった頃、国防費を増やしても自衛隊員に使わないと士気が上がらないという趣旨の話をしていたことがある。
隊員の衣食住を充実させたいということで、私はそれを聞いて「なるほどな」と思っていたものだ。
なんのことかというと、自衛隊の将官になるとLCコンバーチブルを支給されるというのはどうだろうという話だ。文字どおり「いつかはLCコンバーチブル」。
もちろん、自衛官だけでなく、医療従事者や消防隊、災害救助隊など国民の安全を守ってくれている人たちすべてを対象にしていい。
とにかく「頑張ればLCコンバーチブルに乗れる」というのは仕事のモチベーションを上げることだろう。こういうクルマはそんな使い方をするべきだ。豊田章男社長もぜひ乗ってほしい。
妄想が止まらなくなったあたりで試乗に出ることにする。V8、5Lエンジンの迫力にまず驚かされたわけだが、しばらく乗っていると、このクルマには「隠し味」があることに気がついた。
運転がうまくなったと思わせるのだ。街中を普通に走っているだけなのに、スポーツドライブしている気分にさせる。
なぜかを分析すると、実際は60km/hでも100km/hくらい出している気分にさせているのである。
その要因は音。どうやらスピーカーから出ている人工的な音らしい。それをギミックと揶揄する人もあるだろうが、私はいいと思う。
トヨタは昔からファンtoドライブとよく言っているメーカーだが、これもそのひとつの手法ということ。キャッチャーがいい音でボールを受けてあげるとピッチャーの気分がのってくるのと同じだ。
多くのスポーツカーはクルマほうから「おまえにおれが乗りこなせるのか?」と挑発してくるものだが、LC500コンバーチブルはフレンドリー。クルマのほうから「楽しくさせてあげますよ」と言ってきてくれる。
もちろん、パワーをフルに使うような運転をすれば別だろうが、街中を普通に走っている時に気持ちを高揚させ、運転がうまくなった気分にさせるのは技術だ。
このあたりもトヨタ(レクサス)のクルマ作りはさすがだな、と思わせる。
今年、新型コロナで落ち込んでいた私を救ってくれた2つの光。ひとつは原ジャイアンツの独走で、もうひとつがこのクルマだ。
似たり寄ったりのSUVばかりが出てくるなか、そんなクルマたちを蹴散らすゴージャスなオープンカー、LC500コンバーチブルが登場したのは嬉しい話である。
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