トヨタ「プリウス」が絶好調だ。2023年1月にフルモデルチェンジをうけ、これまでのどこか野暮ったいイメージから、かっこよく生まれ変わった現行型プリウス。2022年の販売は、年間約32,000台まで減少し、登録車ランキングでもTOP10圏外となっていたが、新型に切り替わった2023年は、その約3倍となる99,000台にまで回復。(2023年は)材料不足の影響が残っていたことを考えれば、今年2024年は、年間10万台超えは達成確実だろう。
「愛車」として愛されるクルマに、を目指した新型プリウス。なにがこれほど評価されているのだろうか。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA
「燃費のいい実用車」から「かっこいいクルマ」へと生まれ変わった
世界初の量産ハイブリッド専用車として、1997年に初代モデルが登場したトヨタ「プリウス」。以降、先代モデルとなる4代目までは、とにかく燃費がよく、クルマのサイズや車内広さもちょうどいい、実用的なクルマとしてユーザーに支持されてきた。
しかしながら昨今は、コンパクトカーからミニバンまで、多くのモデルにハイブリッドモデルが設定されてきていることで、「プリウスでなければならない理由」が薄れてきており、トヨタとしても、一時期は先代プリウスをもって廃止する、といった論議もしていたという。
ただトヨタは、プリウスがこれからの時代もユーザーに選んでもらえるよう、「Hybrid Reborn」をコンセプトに、「一目惚れするデザイン」と「虜にさせる走り」を兼ね備えるエモーショナルなクルマとして生まれ変わらせることを選択。それまでの5ドアハッチセダンのコンセプトを大きく変更して、大きく寝かせたAピラーや、低められた全高、ハンマーヘッド風のフロント周りなど、スタイリッシュなスポーツクーペにもみえるようなデザインとなったほか、過去最大の19インチ大径タイヤホイールを装着したことで、感性に響くエモーショナルなデザインへと進化。街中でみかけると、思わず目がいってしまうほど、「かっこいいクルマ」へと生まれ変わった。
インテリアもまっとうに もちろん燃費のよさはトップクラス
先代までのどことなく浮ついていたインテリアも、先進性こそ薄れたものの、現代風のまっとうなデザインとなった。以前はインパネにあった電制シフターをセンターコンソールへと移動し、新型クラウンとも似た、小型のシフトノブ形状に変更したほか、12.3インチの大型センターディスプレイを装備し(2.0L車のみ)、7インチのTFTメーターはステアリングホイールの奥へと移動。TFTメーターは、表示項目が少ないため若干さみしいようにも感じるが、視線移動が減るので有効だ。なにより、シンプルで清潔感のあるインテリアは、先代プリウスのインテリアが散らかって見えるほど、洗練されている。
そしてもちろん、ハイブリッド車の代名詞「プリウス」として、トップクラスの燃費のよさも兼ね備える。ガソリンタンク容量はわずか43L、カタログ燃費はWLTCモードで32.6km/L(E-Fourは30.7km/L)。実燃費を0.7掛けの22.8km/Lと仮置きしても、1度の給油で900km以上も走行可能ということになる。19インチタイヤのZやGグレードだとWLTCモード燃費は28.6km/Lとやや落ちるが、それでも素晴らしい燃費だ。燃料はもちろんレギュラーガソリンでOK。この経済性は、日本人には大いに響くに違いない。
走りについても、TNGAのGA-Cプラットフォームの出来が優秀で、質感高く素晴らしい。先代までが大切にしてきた高い環境性能をさらに高めたうえで、かっこいいデザインと高い走行性能を与えられたことで、より多くの人に愛されるクルマになった、これが、現行プリウスが売れている理由なのだろう。
コメント
コメントの使い方仕事でプリウスに乗ることがあるけど、Aピラーを寝かせすぎた影響で、当初は乗降で何度も頭をぶつけてしまったし、視界も悪い。特に左側の視界が広範囲で遮られるので、左折時や駐車場からの出庫は毎回ヒヤヒヤする。車の外の人を守るためにも、トヨタには視界の確保をもっと重視していただきたい。