マツダがアクセラの後継モデルとして2019年5月24日に国内販売を開始した「マツダ3」が、苦戦を強いられそうだ…という情報が入ってきた。
マツダ3デビュー以来の登録台数を見てみると、2019年6月が1591台、7月3668台となっており、月販目標の2000台を上回る立ち上がりになっている。確かに上回っている…とはいえ、マツダの大黒柱、量販戦略モデルの発売直後の台数だと考えると、いささかもの足りない状況ともいえる(最近の販売戦略モデルは発表前から見込み客に営業をかけて受注を貯めておくことで、発売初期は計画台数の2倍、3倍、4倍が当たり前の世界だけに)。
この苦戦の要因は何か? 流通ジャーナリストとして日々新車ディーラーを回り、「生」の声を届けてくれる遠藤徹氏に伺った。
文:遠藤徹 写真:ベストカー編集部
■先代モデルから約30万円値上げの説明に苦戦
2019年最大の注目車と言われている「マツダ3」だが、販売現場ではなかなか苦戦している、という話が入ってきた。
この苦戦の要因として、首都圏のマツダ店では、
「売りのひとつになっているSKYACTIV-Xがまだ発売になっていないことや、エンジンラインアップの組み換え、クオリティアップ、安全対策強化などで(先代モデルであるアクセラから)大幅に値上げしたことで、商談に時間がかかっているため」
と説明。
従来モデルであるアクセラの消費税込み車両本体価格は182万5200~331万200円だったことに対して、新型のマツダ3は218万1000~362万1400円であり、値上げ幅は31万1200~35万5800円と大幅なアップとなっている。
※マツダ3国内仕様の試乗記…【日本仕様初試乗!!】 マツダ3はクルマ好きを熱くさせられるのか!!?
値引き幅はナビ、ETC付きでアクセラの20万円からマツダ3は10万円程度に引き締まっているので、実質値上げはこれにさらに約10万円がプラスされると考えてよい。
マツダ店各社はこの大幅値上げをカバーするために低金利の残価設定クレジットや残価を高く設定することで毎月の支払額を少なくするような工夫をしている。残価設定クレジットは一般的には実質年率が3.5~5%だが、マツダ車の場合は一律2.9%としている。残価率は3年後55%、5年後40%でトヨタのカローラクラスよりも10ポイント以上も高くしている。ただこうした措置は3~5年後の精算時に高い額が残るわけだから、その時点でリスクが大きくなるというデメリットもある。
■直前になって発売延期となった理由は
また、このマツダ3最大のウリともいえる、SKYACTIV-Xの行方も気になる。
マツダはつい最近になってマツダ3に搭載するSKYACTIVの発売日を2ヶ月程度先送りすると発表した(2019年10月から12月中旬へ変更)。
この理由をマツダは、
「ヨーロッパで関係者と試乗会を開催したところ、走りのよさは極めて好評だった。現地ではオクタン価の高い(日本のハイオク用に近い)ガソリンが使われているので、日本の仕様もハイオク推奨に切り替えることにした。このためのエンジン制御や型式認定取得作業が必要となったから」
と説明している。
もちろん「走行性能にこだわりたい」というマツダの狙いはわかるのだが、販売戦略を考えると、この措置は(特に販売現場やユーザーにとって)かなり難しい判断を迫られることになるだろう。
というのも、SKYACTIV-Xは「16」という高圧縮比と超希薄燃焼の組み合わせでガソリンと空気の混合比を燃やす、いわばディーゼル的な燃焼方式。そのうえ性能向上を果たすためにモーターアシストによるマイルドハイブリッドを付加している。
これによってNAガソリン車よりも50万円以上のコストアップとなる。
さらにこの10月から消費税が10%に引き上げられ、自動車取得税が廃止になり、環境性能割が導入される。EV走行可能なフルハイブリッドやクリーンディーゼルは従来どおり免税だが、SKYACTIV-Xはマイルドハイブリッド扱いとなるため、5万5500円が課税される。そのうえにハイオクだとガソリン代がレギュラーよりリッターあたり約10円程度高くなる。
つまり、ただでさえ車両本体価格に割高感があるのに加えて、諸経費や維持費も高額になる見込みだ、ということだ。
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