1981年にデビューしたVWの3BOX型4ドアセダン、サンタナ。なんとこのサンタナは1984年、日産座間工場でノックダウン生産され、日産ディーラーやヤナセで販売されていた。きっと50代以上のクルマ好きのおじさんにとっては「そんなクルマあったな」と思い出すに違いない。さて、そのVWサンタナは新車当時、どのように評価されていたのだろうか?
※本企画はベストカー1984年4月号のVWサンタナ試乗記事(執筆は徳大寺有恒氏)から抜粋したものです
文:徳大寺有恒、ベストカーWeb編集部/写真:ベストカー、日産自動車
■日産座間工場で組み立てられたVWサンタナ
VWサンタナのスタイルは、さほどよいとは思えないけど、やはりVWの匂いは強い。シンプルなフロントエンドにVWのマークが入ると″ああ、フオルクスワーゲンだナ″と納得させられる。
まあ、言ってみれば、これが伝統というやつだろうか。サイドピューは6ライトサルーンスタイルで、ヨーロッパ車にしてはオーパーハングが長いようだ。これは…13インチホイールを使っているせいかもしれない。このクラスのクルマで13インチというのはチト残念な気がする。しかし、そのホイール自身のデザインはとてもいいとは思うけれど。
後ろへ向かうとこれは前や横より平几だ。ヨーロッパ車としては1690mmとやや狭い幅をカバーすべく、横一線に並んだコンビネーションランプが目立つ。この日産製のVWサンタナには″日産″や″NISSAN″の文字はどこにも見当たらないい。徹頭徹尾VW印でおしているのである(アルミホイールとグラス類にだけ日産のマークが刻印されているだけ)。
もともと、VWと日産が提携し、VWサンタナを日本で作ると発表されたとき、私は率直にいってそのことがどんなメリットを生むのかよくわからなかった。少なくとも現在、日本のマーケットでVWサンタナの占める場所はないように思えた。
この件は今回の試乗で、VWサンタナが従来の国産車とは明らかに一線を画す乗用車であり、多くの国産車に強烈な刺激を与えるという点で有効であるとは認めたのだが……。
私が思うまでもなく、日産自身ですら、このクルマのポジショニングに苦慮したにちがいない。そして、その結果、VWサンタナをごくごく忠実に作ることにより、外国車的イメージで売ることを考えたのではないだろうか。
結果として、そのことはVWサンタナを日本においては個性的なクルマに仕立て上げることに成功している。VWサンタナは、日産で組み立てられた西ドイツ車であり、そのドライブフィールは西ドイツ版にかざりなく近い。
■ボディは3ボックスセダンのみ
VWサンタナのポディサイズは全長4545mm、全幅1690mm、全高1395mm、ホイールベース2550mm、トレッド前1410mm、後1420mmであり、ウェイトは最上級の200Xi5(5速)で1150㎏である。純粋の国産車でこのサイズに近いものはシグマ、アスカ、カムリ/ビスタなどのいわゆるJカーカテゴリーである。
VWサンタナの価格は1800Liの192万円から2000Xi5の242万円まで。この価格帯でライパルを探すとマークII/チェイサー/クレスタ、ローレル、スカイラインという国産の2Lカーがリストアップされるだろう。
とにかく、ライパルと思われるクルマたちは、FFのJカーカテゴリーのクルマと、日本固有の高級2Lカークラスあたりなのであろう。
VWサンタナは基本的に3種のエンジンを持つ。すなわち、2L5気筒、1.8L4気筒、1.6L4気筒、そして1.6L4気筒ターボディーゼルである。
この3種のエンジン(当然すべて西ドイツ製である)と2種のトランスミッション、そしてひとつのポディがその構成のすべてである。
ガソリンエンジンは2L、1.8LともにKジェトロニックでこれは日本では珍しい。テスト当日はスケジュールの関係で2.5Lと1.8Lのみしか試乗できなかったことをはじめにおことわりしておきたい。
最も高級なクラス筒の2L、5気筒のXi5からテストをはじめた。トランスミッションはマニュアル5速だが、とにかく高いレシオの5速で、これに4.999という低いファイナルを組み合わせている。レシオは1=2.846、2=1.523、3=0.939、4=0.657、5=0.536という飛びきりの高さを持つ。とにかくサード以外はオーバードライブレシオなのだ。
この種のレシオは速度制限のないアウトパーンのクルージングにはとてもいい。150km/hぐらいでも静かで、かつ経済的なロングドライプが可能だ。
日本版VWサンタナのオーバーオールレシオは1=13.95、2=7.46、3=4.60、4=3.22、5=2.63とそれでも相当な高さである。
BMW3シリーズとも異なる高さを与えるというのはさすが走りを忘れない西ドイツ車といえる。Xi-5はこの高いレシオにもかかわらず、スムーズにかつ相当力強く走る。
フォルクスワーゲン、アウディ社のエンジンはほとんどがバスタブ型燃焼室を持つ。そしてカムを駆動する、いわゆる直打ち式カム駆動を採る。このため、回転の上りがスムーズでアッという間に吹けあがるのだ。
この2L、5気筒エンジンは基本的にはアウディ100/200、クアトロなどに使われている2144㏄の縮小版である。日本版は110ps/5600rpm、15.5kgm/4400rpm(いずれもJIS規格)を発生する。1150㎏のウエイトに110psだが、数字以上によく走りのはVWファミリー車すべてに共通するいいところ。
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