4代目ハリアー試乗プレイバック 完璧すぎ&幸せすぎて怖くなる!!?【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】

4代目ハリアー試乗プレイバック 完璧すぎ&幸せすぎて怖くなる!!?【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】

 ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はトヨタ 4代目ハリアー(2020年-)試乗です!(本稿は「ベストカー」2020年9月26日号に掲載した記事の再録版となります)

撮影:西尾タクト

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■新しくなるごとに魅力を増していくハリアー

トヨタ ハリアーGハイブリッド(400万円・FF・電気式無段変速)。これが4代目となるハリアーは直4の2Lガソリンと2.5Lハイブリッドの2種類のパワーユニットを設定
トヨタ ハリアーGハイブリッド(400万円・FF・電気式無段変速)。これが4代目となるハリアーは直4の2Lガソリンと2.5Lハイブリッドの2種類のパワーユニットを設定

「最新のポルシェが最良のポルシェだ」というクルマ界の有名な格言があるが、ハリアーにも同じことが言える。

 クルマは不思議なもので、新しければ絶対にいいというわけでもない。

「先代のほうがよかった」「初代が一番だった」などというのはよくある話だが、ハリアーに関しては新しくなるごとに魅力を増しているのが凄い。

 1997年に初代が登場して以来、もう23年が経過するというのに、いつも山の手の高級住宅街に住んでいそうな匂いをさせている。カタチを変えながら根っこのところは変わらないというのはなかなかできることではない。

 撮影場所で4代目新型ハリアーを見た瞬間「いいね!」と思った。第一印象は満点に近い。

 初代からアメリカンなイメージを持っていたが、さらに磨きがかかっている。家のなかで靴を履いていそうな雰囲気。ベンツやレクサスのSUVよりも上品でハイソな感覚があるとも思う。

内装色はブラックよりも明るい色が似合うだろう。そして、ちゃんとそんな色も用意されている。「G」と「Z」に設定される「レザーパッケージ」は本革シートと調光式パノラマルーフがセットで装備
内装色はブラックよりも明るい色が似合うだろう。そして、ちゃんとそんな色も用意されている。「G」と「Z」に設定される「レザーパッケージ」は本革シートと調光式パノラマルーフがセットで装備

 室内に入っても好印象は変わらない。クーペ的なデザインなのにリアシートは頭の部分も含めて充分なスペースがあるし、シートもいい姿勢で座れる。

 今回の試乗車の内装色はブラックで「ちょっと重いな」と思ったが、明るめのグレーや茶色の設定もあるとのことで、そこもスキがない。

 まったくもって優等生なクルマである。売れている理由がよくわかる。ふつうに考えて「買い」としか言いようがない。

 試乗車はハイブリッドのFF車で価格は400万円だったが、2Lのガソリンエンジン車なら299万円からあるというのは驚異的。この雰囲気が好きなら買って間違いはない。

 おそらく、家族や恋人とディーラーにいって展示車を見るだけで幸せな気持ちになれるだろう。

 それは住宅展示場のモデルルームに似ている。これを手に入れることでどんな楽しい日々が待っているのか、そんな想像が膨らむのだ。

 クルマを買う楽しみのひとつは未来を想像できることだ。いいクルマは必ず想像が膨らむし、ハリアーもそんなクルマのひとつである。

流行りのクーペタイプを採用したデザイン。ハリアーらしさを残しながら、新しさを主張している。試乗車はオプション込みで約456万円だったが、最もリーズナブルな2Lガソリン「S」のFF車は299万円の安さが魅力
流行りのクーペタイプを採用したデザイン。ハリアーらしさを残しながら、新しさを主張している。試乗車はオプション込みで約456万円だったが、最もリーズナブルな2Lガソリン「S」のFF車は299万円の安さが魅力
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■俺のクルマ人生はハリアーで終わるのか、という心配

ハイブリッドは車重が1700kg近くあるためか、走りは「ちょっと重い」という印象だった。安い2Lガソリンで充分かもしれない
ハイブリッドは車重が1700kg近くあるためか、走りは「ちょっと重い」という印象だった。安い2Lガソリンで充分かもしれない

 走りはどうだったか。

 2.5Lのハイブリッド車は少し重い感じがした。それが高級車の乗り味と言われればそうかもしれないが、普段小さくて軽いクルマに乗っている人は少々違和感を抱くかもしれない。

「走りが凄くいい!」というわけでもないが、もちろん、不満があるわけでもない。

 第一印象から試乗まで、ハリアーの好印象はずっと続いたわけだが、一方、クルマとはなんと複雑な商品なのだろうかと考えさせられた。

 私のような変態的なクルマ好きにとって、ハリアーはあまりにもマトモすぎるのだ。

運転もしやすいし、ハリアーは自信を持って薦められるクルマだ。欲しい人は迷う必要はない!
運転もしやすいし、ハリアーは自信を持って薦められるクルマだ。欲しい人は迷う必要はない!

 ここから述べることは、ふつうの人には参考にならないし、言いがかりに近いという自覚もあることを先に言っておく。

 ハリアーは悪いところがなさすぎて、自分のほしいクルマの対象にならない。隣家のクルマ、つまり「他人事」のように思えてしまうのだ。

 なぜなのか?

 ハリアーは作り手の狙いを完璧にパッケージしたクルマだ。その「型にハマった感じ」が私には合わないように思えるのだ。

 料理で言えば、前菜からデザートまですべて決まっているコースメニュー。こちらが相手に合わせなければならない。

 また、ハリアーは「家庭的な女性」に近いとも言える。そういう女性を好む男は多いだろうが、小悪魔的に男を振り回す女性も魅力がある。

 ハリアーは家庭的で、しかも上品さもあるのだから人気が出るのもわかる。でも、それだけでは物足りない人がいるのも事実なのだ。

 ハリアーは長く乗れるクルマだ。数年で買い換える種類のクルマではないだろう。だからこそ、長く乗っていると「俺のクルマ人生はハリアーで終わるのか」と心配になりそうな予感がするのである。

 おでんを食べながら、時にはガリガリ君をかじりながら、100円のコンビニコーヒー、たまには150円のカフェラテも飲みながら、20年も30年も月に2回ベストカーを読み続けてきた私が「ハリアーでアガっていいのだろうか?」という葛藤が生まれる。

 ユーチューブで「ハリアーを買いました!」とやったらどんなコメントが待っているだろう。

「テリーよかったね」なのか「テリーおまえもか」なのか。とにかく私には「何かが違う」のである。

 ただし友人、知人には自信をもって薦められる。本当のことを言うと、こんな面倒なことを考えずに素直に買える自分でありたいとさえ思う。

 私はクルマに関しては完全に傾奇者(かぶきもの)だ。「ふつうのいいクルマ」を素直に喜べない変態である。そんな男に、新型ハリアーはまぶしすぎるのだ。

●テリー伊藤 今回のつぶやき

 ハリアーは作り手の意思をパッケージした高級コース料理のようなクルマだった。最高だが、型にはまる怖さを感じる……。

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