甘く見てはいけない [クルマ]の運転

甘く見てはいけない [クルマ]の運転

 75歳になると、免許更新時に「認知機能検査」を受けなければならない。「なんだよ! 年寄りをバカにして!」と憤慨されるかたもいるかもしれないが、実は「運転」というのは実に複雑な作業を同時進行で行っているのだ。今回は「脳と運転」の驚きの関係性をご紹介するとともに、運転に対する考えをもう一度見直していこう。

※本稿は2024年7月のものです
文:楠田圭子/写真:トヨタ、日産、ホンダ、ベストカー編集部、AdobeStock(トップ画像=buritora@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2024年8月26日号

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■若者でも高齢者でも「運転」できるって実はスゴいこと!

75歳から受けなければならない「認知機能検査」がけっこう難しい(xiaosan@AdobeStock)
75歳から受けなければならない「認知機能検査」がけっこう難しい(xiaosan@AdobeStock)

 「75歳からの大きな壁」。それは運転免許更新時、75歳から受けなければならない「認知機能検査」。これがけっこう難しい。その突破には日頃からの「脳活」が一番!とベストカー本誌でもお伝えしたが、ここでは「脳と運転」の驚きの関係性を紹介しよう。

■脳の専門医はこう語る

クルマ運転時の「脳の作業区分」(イラスト/rirafuku)
クルマ運転時の「脳の作業区分」(イラスト/rirafuku)

 脳神経内科専門医・塚本 浩先生は「クルマの運転中は常に脳がフル稼働しています」と話す。もう少し具体的なところを塚本先生に語っていただいた。

*   *   *

 上に図解がありますが、脳はそれぞれの役割を持ついくつかの部位から成り立っています。それらがうまく連携して働かないと脳は正常に機能しません。

 例えば、運転中に赤信号で止まる時。まずは目から入った視覚情報を後頭葉という部位が受け取ります。この時点ではあくまでも赤い色と認識しただけです。

 その情報は前頭葉に送られ、前頭葉のなかにある前頭前野という部位が「赤信号なので止まらなくてはならない」と判断します。

 さらに、同じ前頭葉にある運動野が足にブレーキを踏めと指令を出し、最終的にクルマが止まる……という仕組みです。

 「赤信号だから止まる」という単純なような行為ですら、多くの部位を同時に働かさなくてはならないのです。

*   *   *

 高齢になっても脳の各部位を正常に働かせないと、安全運転ができなくなる、という。そのためのひとつの策が脳活。日頃から脳活を行えば、認知機能検査に役立つはず!

■塚本先生からのアドバイス「高齢者には、脳に優しいシンプル機能のクルマもオススメです!」

アイオニック5Nのインパネ。これはスイッチ類が多すぎる
アイオニック5Nのインパネ。これはスイッチ類が多すぎる

 上で脳のはたらきについて教えていただいた専門医・塚本先生に、高齢者のクルマ選びについて独自見解を語っていただいた。

 私のクリニックを受診する高齢の方の多くは「クルマに乗らなくては生活ができない」と訴えてきます。そんな方によくアドバイスするのが、「最新の多機能なクルマに乗らない」ということです。

 最近のクルマにはたくさんのスイッチがあり、ディスプレイにもさまざまな情報が表示されます。それらは便利な反面、衰えはじめた脳にとっては少々過酷……。

 目や耳から情報を入れすぎると脳はパンクして運転脳が正常に働かなくなり、操作ミスの危険が高まります。高齢になったらなおさらです。

 例えば、ディスプレイに情報が表示されたり、音声が流れたりするたびに気をとられて注意力が散漫になります。すると、アクセルとブレーキの踏み間違いなどの重要な操作ミスが起きやすくなります。

 そういったこともあり、高齢者には「シンプル機能のクルマ」をおすすめしたいです。現行モデルはもちろん、ひと世代前のクルマでもいいと思います。

 また、クルマ選びの際のポイントとして、「アクセルペダルとブレーキペダルに足を置いてみて、“しっくりくる”と感じるクルマを選ぶ」ことが大切です。

 運転脳が低下するとペダルの踏み替えのスピードが遅くなるため、足が無理なく動かせる位置にペダルがあることは、アクセルとブレーキの踏み間違いを防ぐうえで必須となります。

 また、自動でブレーキが作動するような安全機能が搭載されたサポカー(安全運転サポート車)も大きな助けになります。

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