ホンダのF1復帰に寄せる思い 記憶に残るロータリー タクシー会社で働く読者の方に【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】

ホンダのF1復帰に寄せる思い 記憶に残るロータリー タクシー会社で働く読者の方に【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】

 2014年11月に逝去した自動車評論家、徳大寺 有恒。ベストカーが今あるのも氏の活躍があってこそだが、ここでは2013年の本誌企画「俺と疾れ!!」をご紹介する。(本稿は『ベストカー』2013年8月10日号に掲載したものを再編集したものです/著作権上の観点から質問いただいた方の文面は非掲載とし、それに合わせて適宜修正しています)。

■ホンダF1に期待したい

RA271…ホンダの第1期F1参戦は当初ロータスへのエンジン供給の予定だったが、ロータスのキャンセルでフルコンストラクター参戦を決定。1964年に参戦した写真のRA271(28号車)は横置きのV12、1.5Lを搭載した。当時のドライバーはロニー・バックナム
RA271…ホンダの第1期F1参戦は当初ロータスへのエンジン供給の予定だったが、ロータスのキャンセルでフルコンストラクター参戦を決定。1964年に参戦した写真のRA271(28号車)は横置きのV12、1.5Lを搭載した。当時のドライバーはロニー・バックナム

 少し前になるが、ホンダがF1に復帰すると発表した。このコーナーに送られたお便りにも答えたが、今一度取り上げておきたい。

 久しぶりのビッグニュースに私も記者会見に出席したが、会場でも期待のほどが伝わってくるようだった。

 ホンダの最初のF1レースは1964年のニュルブルクリンクで行なわれたドイツGPでロニー・バックナムがドライバーだった。この年のホンダは一度も完走できず、翌年リッチー・ギンサーがメキシコGPで優勝した時は私も「やった」という思いだった。

 今回の参戦はエンジンだけでシャシーはマクラーレンによるものだ。

 ホンダは高回転エンジンが得意でこの点では他チームにも負けない。エンジンのみの参加は賢明で、マクラーレンとなら過去にも組んだ経験があり、いいチームになると思う。いずれ日本人ドライバーにもチャンスがめぐってくるかもしれない。

 もちろん来年からテストを始めなければならないが、テストドライバーが誰になるのかにも注目だ。いずれにしてもF1のシートが少し近くなったといえそうだ。

 今のところホンダだけだが、やがてはトヨタなども復帰を考えるかもしれない。2015年からレギュレーションが変更され、エネルギー回生システムが勝負を分けるといわれるだけに、その分野ではハイブリッド技術に長けたトヨタが技術の蓄積をもっているからだ。

 F1は技術もすごいが、金も相当かかるから、この点でも、ホンダ以外のメーカーというと国内メーカーではさしあたりトヨタだけだろう。

 エンジンはターボとなり、ホンダはターボの技術もあるから期待できる。

 ただし、トヨタはむしろスポーツカーによるエンジンが得意だ。ル・マンでハイブリッドを投入し、残念ながらアウディの後塵を拝しているが、ハイブリッドシステム自体は負けていないのかもしれない。

 トヨタはF1のオーガナイザーにとって大いに魅力的だと思うが、トヨタ自身がどう考えているかわからない。

 ただし、私が思うに、どちらかといえば、F1のようなショートヒートはホンダのほうが強く、ル・マンのようなエンデューロレースはトヨタのほうが得意だと思う。

 むろんそれでいいのだ。F1とル・マンの勝者、どちらが偉いとはいえない。どちらも立派な勝者だからだ。それぞれの長所を生かし、日本の自動車工業の力を示してもらいたいと思う。

 ホンダもトヨタもそのほかのメーカーも必要なのは“人”である。これを真剣に考えていないと日本の自動車メーカーはちと危ない。モータースポーツは技術を育てる場であり、若い技術者が得がたい経験をできる場でもある。

 技術者だけではない、日本人ドライバーの育成も大きな課題だ。ホンダはぜひ日本人ドライバーを育ててほしい。もちろんホンダはF1を開催する鈴鹿サーキットを所有するから、日本人ドライバーは商業的にも欲しいところだろう。

 再来年のF1の鈴鹿ラウンドが見に来る人でいっぱいになり、日本人ドライバーが日章旗を掲げて走る姿が見られることを期待したい。

 いずれにしてもF1という自動車レース最高の舞台に日本メーカーがチャレンジするということはうれしいことだ。

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