見た目は小さくても、室内はたっぷり広い。コンパクトトールワゴンに与えられるようなフレーズが、なんとセダンに付けられていた。しかし、その言葉に嘘偽りはなく、ゆとりの室内と取り回しの良いボディを持っている。リーズナブルで燃費がいい、小さなセダンのプラッツ。かつて夢見ていた理想のクルマが、四半世紀前に登場していた。
文/佐々木 亘:写真/トヨタ ほか
■ヴィッツがセダンに? 軽自動車並みの車体で大丈夫か?
プラッツは、ヴィッツとシャシーを共有する、トヨタのコンパクトセダンだ。ヴィッツのボディにトランクルームをプラスしたスタイリングは、尻上がりで可愛らしい。
ボディサイズは、全長4,145mm×全幅1,660mm×全高1,500mmで、ホイールベースは2370mmだ。現行型N-BOXのホイールベースが軽自動車では最も長く2,520mmだから、ホイールベースだけで比較すれば、軽自動車程度のホイールベースしかない、乗用セダンということになる。
それでもトランクを含めないキャビンの大きさは、室内長1,855mm×室内幅1,380mm×室内高1,265mmとそれなりにある。荷室まで含まれた軽自動車の室内長や室内幅とほぼ同じ値だから、そこへトランクが別についてくると考えると、かなり実用性が高いクルマと言えるだろう。
エンジンは、2WD車(FF)に1.5Lと1.0Lを設定、4WD車には1.3Lエンジンを載せる。これで価格は107.1万円~154.8万円と非常にリーズナブルだ。
プラッツは、ボディも価格も小さいが、大きな期待に応える力と収納力を併せ持った、実用セダンのお手本のようなクルマである。
■工夫たっぷりの室内がイイ
小さい・チープなどと思われがちだが、プラッツは見た目よりも室内環境が良い。シートは丸みを帯びた優しい雰囲気を持っているが、座面は長くてクッションも適度に厚い。前席だけでなく、後席に乗っても膝回りの空間や頭上空間には余裕がある。コンパクトカーと考えれば、上々の広さだろう。
ダッシュボードやインパネは、ヴィッツと共用。そのため、プラッツもセンターメーターとなる。スペース効率を十分に吟味したヴィッツと同じだからこそ、前席も窮屈にならず、開放的で使いやすい空間が広がるのだ。
また、空間的なプラッツの大きな利点は、ラゲージルームがある点にあるだろう。後席シートは倒すことができ、長尺のモノも余裕で積めるし、ラゲージルームだけで9インチのゴルフバッグを5つまで積めるというのだから驚きだ。
小さなボディから、次々と荷物が出てくる様は、見ていて気持ちがよく、圧巻である。
■セダン復活のカギはプラッツにあり! 進化は小さくなること
最近は少し人気の落ちているセダン。全長が5mに近づき、ボディ幅も1,800mmを超える大型セダンが多いわけだが、セダンの進化は大きくなるだけではないと筆者は思う。
SUVだってワゴンだってミニバンだって、すべてコンパクトがあるのに、現代ではコンパクトセダンが消えてしまった。プラッツのように小さなボディで、最小回転半径4.3mという取り回しのしやすい小さなセダンが、正常進化を今まで続けていたら、セダンが下火になることも無かったのではないだろうか。
クルマの基本形とも言えるセダンに、まず乗ってもらうことを考えたら、プラッツのように、小さな良いセダンを増やしていくことが必要になる。カローラアクシオよりも少し豪華で、もっと小さいセダンが出てくると、自動車ユーザーがセダンを見る目も変わっていくはず。
プラッツや、後継となったベルタを復活させることが、国内市場のセダン人気を復活させる、重要なカギとなるだろう。
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