【トライアンフ スピードツイン1200/1200 RS 海外試乗インプレ】街もワインディングも支配する新時代のクラシック

【トライアンフ スピードツイン1200/1200 RS 海外試乗インプレ】街もワインディングも支配する新時代のクラシック

 トライアンフのモダンクラシックのなかで最もスポーティなスピードツイン1200がフルモデルチェンジ。スタンダードモデルのほかに、スピードツイン初となるRSバージョンも登場した。モダンクラシック、スピードツイン、レーシングスポーツが織りなすモダンクラシックの新世界を、スペインのマヨルカ島で体感してきた。

 
文/小川 勤
 

スピードツイン初のRS仕様に期待が高まる!

 スピードツイン1200 RSで走り始めると、僕の心は期待と希望に満たされていった。欧州の近代的な街並みにこのスタイルが映えるし、古い街道や海外線に溶け込むのはわかる。でも走り出して少しすると、「早くワインディングを走りたい、コーナーを駆け抜けたい」と、その一心だった。

 そう思ったのはパワフルなエンジンともっと荷重をかけてみたくなるハードなサスペンション、そしてやや前傾かつバックステップが生み出す適度な前傾ポジションがライダーの心をくすぐるからだ。このバイクでもっと走りたい……そんな素直な気持ちを抱かせてくれる。

 スピードツイン1200初となるRSバージョンは、「モダンクラシックスタイルには似合わないのでは?」と思うほど走りを優先したパーツを足まわりに採用。これらのディテールがRSらしさとモダンさをアピール。モダンというよりはサイボーグ感も強く、ある意味その組み合わせは違和感にも見えるし、それはとても新しい融合にも見える。

 しかし、ワインディングに入った瞬間に違和感は消え、この新たな融合を大歓迎している自分がいた。そしてスピードツイン1200 RSは、只々僕をスポーツライディングに没頭させてくれたのだ。このスタイルでここまでスポーティな走りができるなんて!この悦びはとても大きい。

 

トライアンフ スピードツイン1200 スピードツイン1200RS

SPEED TWIN 1200 RS/222万9000円
前後足まわりに機能パーツを奢ったRS。モダンクラシックファミリーのなかで最もスポーティなバイクだ。サスペンションは高荷重寄り。

 

 

トライアンフ スピードツイン1200 スピードツイン1200RS

SPEED TWIN 1200/184万9000〜188万4000円
RSよりもリラックスしたポジションで乗ることができるスタンダード。サスペンションもソフトで馴染みやすいスポーツバイクに仕上がっている。

 

 

トライアンフ スピードツイン1200とスピードツイン1200RSの水冷パラレルツインエンジン

エンジンは、270度クランクを採用した不等間隔爆発の水冷パラレルツインエンジン。従来からカムシャフトやクランクシャフト、ECUなどを変更し、最高出力は100ps/7250rpmから105ps/7750rpmにアップ。新しいユーロ5+規制にも対応する。エンジンのケースを軽くするなど細かな部分も進化。ラジエターの処理も上手い。

 

 
 
 

スピードツイン1200 RSはモダンクラシックでありながら、コーナを鋭く切り取る本格スポーツ

 スピードツイン1200 RSの高性能な足まわりは、ライダーの操作を正確かつタイムラグなくバイクに伝え、それを運動性に転換。荷重移動、スロットル&ブレーキ操作にメリハリをつけるほどに、鋭くカーブをクリアしていく。1200ccの大排気量を感じさせないコンパクトかつスリムな車体は、ほんの少し腰をズラすとライダーと一体感を得やすく、理想のラインをトレースしやすい。

 エンジンはモダンクラシックシリーズのなかで最もパワフルな105ps仕様。前モデルからカムシャフトのプロファイルを変更し、クランクマスを減らしたりすることで高回転型にしている。

 そしてそのエンジンの魅力を最大限に発揮するのは、RSのみに搭載された「スポーツ」モード。これがまさに秀逸。270度クランクが生み出す不等間隔爆発のパルス感が、「スポーツ」モードにすると跳躍するイメージだ。レスポンスが向上し、スロットル操作でサスペンションのピッチングを出せるため、走りにメリハリをつけやすくなる。

 市街地では低い回転を繋ぎながら早めのシフトアップでクラシックを気取る。ワインディングではエンジンを少し回して本格スポーツに変身させる。「スポーツ」モード時のコミュニケーションは明らかにクラシックではないものの、このギャップはとても楽しい。

 オーセンティックなスタイルに新しい技術や高性能機能パーツ、そして最新の電子制御を融合したことで、トライアンフが描くバイク趣味の世界は確実に広がっていた。何よりもモダンクラシックでスポーツするこの新しいカタチは、とてもコンテンポラリーで多くのライダーにフィットすると思うのだ。

 

トライアンフ スピードツイン1200 スピードツイン1200RS

佇むシルエットはクラシック。しかし、走り出すと本格的なスポーツバイクに豹変する。

 

 

トライアンフ スピードツイン1200 スピードツイン1200RS

マヨルカ島のワインディングを良いペースで駆け抜ける。積極的に操るほどに答えてくれるスポーツ性の高さの虜になる。

 

 

トライアンフ スピードツイン1200 スピードツイン1200RS

フロントフォークは伸び側&圧縮側の減衰力とプリロード調整が可能なマルゾッキ製の倒立。キャリパーはブレンボ製モノブロックをラジアルマウント。

 

 

トライアンフ スピードツイン1200RSのオーリンズ製サスペンション

リヤの2本ショックは伸び側&圧縮側の減衰力とプリロードの調整が可能なオーリンズ製。タイヤは市販品としてはトップクラスのハイグリップを誇る、メッツラー製のスポルテックRR K3。

 

 

トライアンフ スピードツイン1200とスピードツイン1200RSのメーター

メーターはTFT液晶に。ライディングモードはRSが「レイン」「ロード」「スポーツ」。スタンダードが「レイン」「ロード」となる。

 

 

トライアンフ スピードツイン1200RSでワインディングを楽しむ

次のコーナーを想像しながらワインディングを駆け抜けるのが楽しい。モダンクラシックでこんなに夢中になってコーナーを駆ける日が来るなんて!

 

 

トライアンフ スピードツイン1200RSのシフター

スピードツイン 1200 RSはモダンクラシック初のアップ&ダウン対応のシフターも装備。ただしシフトショックが多いこともあり、クラッチ操作を併用するシーンが多かった。

 

 

トライアンフ スピードツイン1200RSのメーターサイド

メーターサイドにはUSB-Cの電源も用意。

 

 
 

もっと気軽にスポーツを楽しみたい方はスタンダードがオススメ

 すっかりRSのポテンシャルに惚れ込んでしまったが、一方でスタンダードのスピードツイン1200も前モデルと比較すると大きくスポーツ性をアップ。RSほど豪華で煌びやかな装備でないから派手さはないが、その中身は激変している。

 今回の試乗会では何度もRSとスタンダードを乗り比べたのだが、スタンダードに乗るたびに気持ちが和らぎ、リラックスしてバイクに挑めた。ハンドルはRSよりもアップライトでステップは前で下。オーソドックスなネイキッドを思わせ、跨った際のサスペンションのストローク量も多め。それが安心感をもたらす。

 コーナリングは自然とリラックスしてアプローチできるため、曲がりたい方向を見るだけでバイクは出口を向き、立ち上がりの体制になっているイメージ。難しさを感じるカーブは皆無。RSはバイクが積極的に曲がろうとするが、スタンダードは常にライダーに主導権がありコントロールしている実感を楽しめる。

 また、ライディングモードは「レイン」「ロード」が選べ、この日は大半を「ロード」で走行。低中速域では鼓動感を堪能しつつ、高速域では穏やかな伸びを味わう。スロットルを開けるのが楽しいし、それがバイクとの対話になり、走るほどに「本当に良いエンジンだなぁ」と実感する。RSは「ロード」にするとサスペンションに硬さを感じたが、スタンダードにそんなフィーリングは全くない。

 

トライアンフ スピードツイン1200

RSと比較するとスタンダードはおとなしいバイクに見えるが、他のモダンクラシックシリーズと比較すると圧倒的にスポーティ!

 

 

トライアンフ スピードツイン1200

よく動く足まわりが、乗り心地や乗りやすさを生み出す。スロットル明け始めも優しく、だからこそトラクションを作りやすい。

 

 RSとスタンダードは見た目は似ているが、まるで別のキャラクターに仕上がっている。ここにトライアンフの上手さがある。多くの方にフィットするのはスタンダードだと思うが、スピードツイン初のRSの新世界を知らないのはあまりにも勿体ないと僕は思うのだ。

 RSが想像以上にスポーティに仕上がっていたため、ここまでお読みいただいた方にはややスパルタンな印象を与えてしまったかもしれない。でも、RSのサスペンションはフルアジャスタブル。高荷重よりのセットアップを少し弱めて、フレンドリーなキャラクターを作り出すのは難しくないことをしっかりとお伝えしておこう。

 トライアンフの血統ともいえるモダンクラシック。探究の末に、その最新形は街もワインディングも支配する新時代のクラシックとなってここにある。スピードツイン1200 RSが拓くスポーツモダンクラシックの未来はとても明るい。

 

トライアンフ スピードツイン1200RS

フロントフォークはマルゾッキ製の倒立。タイヤはメッツラー製のスポルテックM9 RRで、これも穏やかなハンドリングに貢献。

 

 

トライアンフ スピードツイン1200RS

2本ショックはプリロード調整が可能なマルゾッキ製。RSより減衰力も弱めで、曲がりやすい車体姿勢を作りやすい。

 

トライアンフ スピードツイン1200RSの足つき

シート高810mmのRSに身長165cm、体重68kgの筆者が跨った状態。適度な前傾とバックステップの組み合わせで、腰をズラしたフォームも許容してくれる。

 

トライアンフ スピードツイン1200の足つき

シート高805mmのスタンダードに身長165cm、体重68kgの筆者が跨った状態。RSよりハンドルは高く、ステップは前で下。ポジションはとても自然。サスの沈み込み量が多いスタンダードは数値以上に足つきがよく感じる。

 

 

トライアンフ スピードツイン1200 スピードツイン1200RS

トライアンフのモダンクラシックシリーズは急速にラインナップを拡大中。400、900、1200の排気量を持ち、様々なモデルを展開。今シーズンはスピードツイン900もモデルチェンジ。豊富なラインナップを誇るからこそ、スピードツイン1200は思い切ってスポーツに振り切ることができるのだ。

 

スピードツイン1200 RSのカラーは2種類

 

トライアンフ スピードツイン1200RS

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