【新技術】千鳥走行をはじめ、標識やバイクも検知する2眼カメラ式の前方検知システムをAstemoが公開!

【新技術】千鳥走行をはじめ、標識やバイクも検知する2眼カメラ式の前方検知システムをAstemoが公開!

 2眼カメラが立体的に距離を捉え、速度標識や車種まで判別する! そんな賢いバイク用の前方検知システムの研究をAstemoが行っている。既存の追従式クルーズコントロールに使われているのはレーダー式だが、カメラ式には様々なメリットがあるのだ。

 
文/沼尾宏明
 

レーダーでは検知できないモノを判別できるステレオカメラ

 2025年4月より大手自動車部品メーカーの日立Astemoが、社名を「Astemo」に変更した。Astemoは、キャブレターやFIのケーヒン、サスのショーワ、ブレーキのニッシン、日立製作所の自動車部品を手がけてきた日立オートモティブシステムズが統合し、2021年に生まれた日本のメガサプライヤー。このタイミングで、同社がメディア向け技術発表&試乗会の「Astemo Tech Show 2025」を栃木県のテストコースで開催した。

 興味深い技術が多く披露されたので、数回にわたってお伝えしていきたい。今回はその第1回で、ツインカメラを用いた前方検知システムを紹介。従来のバイク用は大部分がレーダー式だが、レーダーでは判別できない白線や速度標識、同一車線を走る前方のバイク、路面の凹凸などをカメラなら検知することが可能だ。

 この二輪ADAS(運転支援システム)は、2022年のEICMAで世界初公開され、2023~2024年のEICMAで進化版を披露。Astemoはサプライヤーとして四輪用にカメラの検知システムを提供しており、この技術を二輪向けに活用したものだ。



今回公開されたのは一体型のステレオカメラ。カメラのほか、大型車向けFI ECUとABSユニットで構成され、アダプティブクルーズコントロールと自動速度制御を実現している。



2023年型タイガー1200のフロント部にADASシステムを搭載したテスト車両。



EICMA2024ではセパレート型のカメラを披露。アフリカツインのフロントカウル左右にカメラをビルトインしていた。組付けを簡素化したほか、脱着可能なカメラレンズ用保護カバーにより、カバーが傷付いても交換できる構造。

 
 
 

オフセットしたバイクを検知し、標識で自動減速も行う

 取材当日は雨天。デモ車を実際に体験する予定だったが、システムに防水処理を施していなかったため、走行は中止になった。そこで急遽、室内で映像を見せてもらった。

 これによると、しっかり千鳥走行でも自動追尾のアダプティブクルーズコントロール(ACC)が作動していた。千鳥走行はマスツーリングなどで使われ、同じ車線にジグザグに並んで前後の距離を詰める走り方。通常のレーダー式ACCではバイクやクルマなどの車種を判別できず、1.5mほど斜めにバイクがオフセットしていると追従ができない。一方Astemoのカメラ式システムでは同一車線内であればオフセットしたバイクを判別。さらに前方にいるバイクの数を認識し、モニターでライダーに通知してくれる。

 また、速度標識を認識。70km/h走行中に50km/hの速度標識があり、自動的に50km/hまで減速していた。これはISA(インテリジェントスピードアシスト=自動速度制御装置)と呼ばれる機能で、無意識のスピード違反を防ぎ、安全性も確保してくれる。「余計なお世話」と思う人もいるだろうが、機能のオンオフが可能になるようだ。

 ACCやISAの自動減速は、前後ブレーキを使用し、違和感のないフィーリングとのこと。さらに電子制御サスが加われば、より快適な減速が可能になる。システムの重量に関しては開発中につき未定だが、操縦安定性に影響を及ぼすほどの重さではないという。



ADAS搭載車両にまたがり、映像でシステムを体験させてもらった。



Astemoが別日に撮影したテスト走行。バイクでの千鳥走行でもしっかりACCが作動し、前車に追従走行していた。



テスト走行の模様。標識を検知して自動減速していた。

 
 

現在は超精密なバーチャル上でシミュレーションを実施中

 既に基本的な制御プログラムはできており、現在はバーチャル空間でのシミュレーションを実施中。交差点やコーナー、対向車、歩行者、駐車車両、路面、天候など現実に起こりえるシチュエーションは天文学的だが、これを実際にテストするのは膨大な時間と手間がかかるし、危険性もある。これを物理計算された超精密なバーチャル上で検証することで、開発スピードと安全性を担保できる。このシミュレーションの存在は非常に重要だ。

 四輪では既にこうしたシミュレーションは普及しているが、二輪では珍しい。Astemoでは日立製作所が四輪で培った技術を投入し、二輪用にソフトを作り直した。これにブレーキ、スロットル、サスの制御を組み合わせることで、トータルでの車体制御を実現しようとしている。まさに四社が合併したメリットが活かされているのだ。

 なお将来的には、ユーザーのカメラで得たデータを集約して、それを通して学習させ、通信でアップデートしていく構想もあるという。

[インタビュー〕カメラはバンクにも強い、後方向けや電子ミラーも検討

 既存の二輪用ACCなどに採用されているのは大多数がミリ波レーダー。BMWやドゥカティ、ヤマハが導入しているのもレーダーでドイツのボッシュ製システムが採用されている。

 一方、Astemoが採用した二眼式ステレオカメラの検知システムはどんなメリットがあるのかインタビューしてみた。



インタビューに答えてくださった鈴木克昌氏(グローバル設計統括本部 統括本部長)、佐々木朋春氏(グローバル設計統括本部 副統括本部長)、櫻井辰佳氏(MC事業部 営業戦略本部 本部長 兼 CS BU グローバル営業本部 本部長)。※写真左から

 スタッフによると「実はレーダーにしかできないことはあまりなく、カメラにしかできないことがたくさんあります。より安全、快適を提供するために必要なシステムであろうということで、我々はカメラに注目しています」という。

 白線や標識を検出したりすることはカメラにしかできないし、バンク角にもカメラは強い。レーダーは角度がつくと追従しているターゲットを見失いがち。クルマでは問題なくても、バイクは車体がバンクすると一般的なレーダーでは15°程度で前走車をロストしてしまうという。一方、カメラはバンク角30°程度でも追従が可能。バイク向けのシステムと言えるのだ。

 なお、レーダーの利点は遠くまで届くということ。100km/h以上で走る場合は遠くまで届くレーダーの方が有利という。カメラは画素数を上げれば遠くまで検知できるが、視野が狭くなり、横のクルマが見えなかったり、コストが上がってしまう。

 レーダーは豪雨や雪にも強いが、カメラはレンズ表面に水滴がつくと検知に影響が出てしまう。クルマはフロントガラス内側にカメラを収めてワイパーで拭くなどの手法が取れるが、バイクの場合はそうもいかない。バイク用では、天候に対する耐性や、搭載するためのレイアウトなどを課題として取り組んでいるそうだ。

 これらの状況から「カメラとレーダーそれぞれの特徴があるため、補いながら使うのが今はベスト」。とはいえ近頃はコストが上昇しているため、四輪でもカメラだけのシステムが増えており、カメラでできることも増加している印象という。

 さらに将来的には後方向けのカメラ検知システムも検討。ブラインドスポット検知や電子ミラー、ドラレコとしての活用といった意見も届いていると話す。

トータル制御が重要になる今後、ますます四社合併の成果が活きそう

 ――取材を通じて、四社合併の成果が着々と現れていると感じた。今までバイクに関しては、日立製作所によるシナジーを把握できなかった感があるが、ADAS実用化にあたって日立が持っていたバーチャルシミュレーションの技術は重要。ブレーキ、サス、スロットルが協調し、電子的に統合制御する技術は今後さらに必要性を増していく。

 Astemoの開発者陣も「アステモならでは、と言っていただけるような技術を出していきます」と話す。四社が合併してることのアドバンテージはますます大きくなっていくだろう。

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/bikenews/468402/

【新技術】千鳥走行をはじめ、標識やバイクも検知する2眼カメラ式の前方検知システムをAstemoが公開!【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/468402/468411/

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