溝があっても交換！？バイク初心者が意外と知らない「タイヤの寿命」を知る方法

2025年8月26日 / バイクコメントする

前後２輪だけで走るバイクの場合、タイヤは安全で安定した走行をするためにとても重要なパーツ。摩耗が進むなどで寿命が近づいたら交換は必須ですが、交換の目安は、よく「製造年月から3～5年」とか「走行距離1万～2万km」などといわれます。でも、実際は、バイクの走り方や保管環境など、さまざまな要因により変わってくるため、一概に何キロで交換とか、何年で変えるべきとはいえないのです。
では、一体、バイク用タイヤはどんな時に交換すべきなのでしょうか？　キーになるのは、日常的な点検により、常に現在のタイヤの状態を知ること。ここでは、バイク初心者などが意外と知らない、タイヤの寿命などに関する基本的なチェック方法などを紹介しましょう。

文/平塚直樹

摩耗の限界が分かるスリップサイン

　バイクのタイヤが寿命となる要因には、大きく分けて以下の3つがあります。

1，トレッド（タイヤ表面）の摩耗が限界
2，タイヤの材質劣化
3，走行中のアクシデントによるパンクなどの破損

　これらのうち、とくに1と2は、常にタイヤをチェックし、現在どんな状態なのかを確認することで交換時期も分かります。

　まず、1のトレッド（タイヤ表面）の摩耗が限界か否かは、「スリップサイン」を確認します。

スリップサインとは、タイヤの溝に設けられた隆起部分

　スリップサインとは、タイヤの溝に設けられた隆起部分のことで、残り溝の深さを示す目安です。ご存じの通り、タイヤはすり減ると溝がなくなり、グリップ力など本来の性能が発揮できなくなります。そして、もしタイヤ表面にスリップサインが現れたら、残りの溝の深さが0.8㎜（道路運送車両法に定められているバイク用タイヤの最低の溝深さ）に達したことを示します。そうなったら、そのタイヤの摩耗は限界となっているのです。

　スリップサインが、タイヤのどの位置にあるのかは、サイドウォール（タイヤ側面）にあるマークを見れば分かります。マークは｢▲」印を使うことが一般的で、タイヤサイズによっても異なりますが、通常は４～６か所に配置されています。なお、これもタイヤサイズによって変わりますが、｢▲」マークの代わりに文字の「TWI」が刻印されているケースもあります。

スリップサインの位置はサイドウォール（タイヤ側面）にある｢▲」マークで分かる

　スリップサインは、前後タイヤのどこか１か所でも現れたら、そのまま走行するのは危険なので、新品タイヤに交換しましょう。また、交換時期についても、スリップサインが出てから交換するのではなく、表面に現れる前に交換する方がいいでしょう。「もう少し走ると出てくるな」といったタイミングで交換する方が、限界に達する前だから安全だといえます。

　冒頭でも述べたように、バイクにとってタイヤは安全に走るために非常に重要なパーツ。くれぐれも、早め早めの交換を心掛けましょう。

スリップサインがタイヤ表面に出る前に交換したい

●溝があっても寿命の場合もある

　タイヤにスリップサインが出ておらず、溝も十分にある場合でも、交換すべき状態となることもあります。それが、上記2の「タイヤの材質劣化」です。

　たとえば、タイヤの経年劣化などにより、トレッドやサイドウォールにひび割れなどがある場合です。

ひび割れなどがあるタイヤも交換すべき

　当然ですが、タイヤはゴム製品です。製造して年月が経つと、ゴムが硬くなり、ひび割れなども起こります。こうした状態で走行をすると、走行中にバーストすることもあるから非常に危険なのです。

　また、もし、ひび割れなどがなくても、たとえば、10年間タイヤを変えていないというのも御法度。これも、同様にゴムが硬くなっているため、グリップ力が低下している可能性が高いからです。とくに、こうした状態で雨天時など滑りやすい路面を走ると、転倒のリスクがかなり高くなるので危険です。

　ほかにも、タイヤのトレッド面やサイドウォールにタイヤ内部構造のコードに達している外傷、ゴム割れがあったりするのも危険。そういった場合も、タイヤ損傷発生につながる恐れがあるので、新品タイヤに交換しましょう。

　なお、こうした状態に関して、もしよくわからない場合は、タイヤに詳しいバイクショップやタイヤ販売店に相談することをおすすめします。

●もし走行中にパンクしたら？

　そして、上記3のような「走行中のアクシデントによるパンクなどの破損」。これは、タイヤに問題がなくても、道路に落ちていた釘など尖ったものを踏んでしまったことで、走行中に突然パンクしてしまったようなケースです。

道路に落ちていた釘など尖ったものを踏んでしまい、パンクするケースもある

　最近のタイヤはチューブレスタイヤが増えてきたので、走行中に尖ったものを踏んでパンクしても、応急パンク修理キットなどを携行していれば、その場で修理を施すことも可能です。

　ただし、この場合、ある程度の走行はできるようになったとしても、それはあくまで「応急処置」。パンクの状態にもよりますが、確実に安全なのかは分からないため、そのまま乗り続けるのは危険です。できるだけ早急に最寄りのバイクショップやタイヤ交換ができる店にいき、専門家にチェックしてもらいましょう。

　そして、専門家が見て大丈夫と言わない限り交換する方が安全です。これも寿命と考えた方がいいですね。

応急パンク修理キットを使っての修理は、あくまで応急処置と考えたい

　なお、パンク修理キットを持っていない、もしくはタイヤの破損状態がひどくパンク修理キットの応急処置でも走行不可などの場合は、JAFや任意保険に付帯しているロードサービスなどを呼んで、レスキューしてもらう必要があります。そういったケースでも、できるだけ早く最寄りのバイクショップやタイヤ交換ができる店にいき、専門家にチェックしてもらい、必要ならばタイヤを交換すべきことは同様です。

日常点検を習慣づけよう！

　走行中に釘などが刺さり突然パンクしてしまった場合を除き、タイヤにスリップサインが出てないかとか、ひび割れや傷がないのかなどを知るためには、日頃からタイヤの状態をチェックする日常点検が大切です。

　できれば、毎回走る前にチェックする方がベター。また、タイヤの空気圧が適正値になっているか否かも、こまめにチェックしたいですね。適正なタイヤ空気圧で走行しないと、トレッドの特定場所に偏摩耗が発生する異常摩耗になることがあるからです。

　ちなみに、タイヤの空気圧は、規定値より低すぎても、高すぎても危険です。空気圧が低い場合はトレッドのショルダー部の摩耗が早く進行しますし、高いとトレッドセンター部の摩耗進行が早くなり、いずれも異常摩耗を起こしやすくなります。そして、これらの要因により、走行中にタイヤがパンク、もしくは破裂してバーストする危険性があるのです。先に述べたような釘など尖ったものを踏んだ場合と違い、こうしたことは事前の点検で防げるもの。ぜひ実践することをおすすめします。

タイヤの空気圧は、規定値より低すぎても、高すぎても危険

　また、タイヤの空気圧は、その日の天候や気温などによっても変化します。そのため、これも可能なら、走行前に毎回チェックし、その日の状況にマッチした適正空気圧にした方が安心です。

　なお、愛車のタイヤ空気圧適正値は、取り扱い説明書を見るか、チェーンケースなどに貼られているシールにも書いてあるので、そこを見れば分かります。バイクのタイプや排気量などによって適正空気圧は違います。また、モデルによっては、２人乗りをする場合に空気圧を上げるように指定されていることもあります。愛車の空気圧にはどんな規定値や条件があるのかなどを必ず事前に確認し、こまめにチェックすることをおすすめします。

タイヤ空気圧の適正値は、チェーンケースなどに貼られているシールにも書いてある

タイヤに優しいバイク保管法

　タイヤの寿命を伸ばすには、バイクの保管方法にも注意するといいでしょう。できれば、ガレージなどに屋内保管をする方が、雨風や直射日光を避けられるため、タイヤだけでなく、バイクの塗装なども長持ちさせやすいですね。

　ただし、もし、屋外にしか駐車できない場合は、バイクカバーを掛けておくことをおすすめします。特に、タイヤは、太陽光に含まれる紫外線や熱の影響を受けやすいもの。そのため、紫外線を長い期間浴びたり、高温になったアスファルトの上にずっと置いておくと、ゴムの劣化が進んでしまい、前述したひび割れなどを起こしやすくなります。