ヨンフォアにラッタッタ、CBX400Fほか、俺たちをザワつかせたバイクの名(迷)コピー【ホンダ編】

「G感、BROS.」ブロス プロダクト1/2

 ブロスは、1988年に登場したVツインエンジン搭載のロードスポーツで、650ccのプロダクト1と400ccのプロダクト2があった。

 そのカタログは実に不思議! 表紙にバイクの写真が一切登場せず、いかにも80年代に流行った書体でデッカく「G感、BROS.」とある。

左側がカタログ表紙(右側は広報写真)。G感って何だ(笑)。表紙の英語をよく見ると、「G」は、Gravity、Great、Graphic、Glamorous、Geniusなどを表すらしいが・・・・・・
左側がカタログ表紙(右側は広報写真)。G感って何だ(笑)。表紙の英語をよく見ると、「G」は、Gravity、Great、Graphic、Glamorous、Geniusなどを表すらしいが・・・・・・

 「A感覚とV感覚」なんて本が一部で昔流行ったけど、それを思い出してしまう(笑)。
 さらにカタログを開いていくと、またバイクが登場せず、外国人モデルが見開きでドーン。ここでも大きく「G感、BROS.」と書いてある(このキャッチがどんだけ好きなんだ)。4~5ページ目でようやくバイクが登場するが、余白が多い(笑)。その後も余白多めの白背景で解説が続く。

 カタログは全18ページもあるが、イメージカットに8ページを費やす。バブル期を象徴するファッション誌のようなカタログだ。

 ブロスは、アメリカンであるNV系譲りの狭角60度Vツインを採用。太い低中速と適度なスポーツ性能を持ちつつ、気軽に乗れるバイクだったが、ヒットには至らなかった。

 とはいえ、1989年のカワサキ ゼファーに先駆けて、レーサーレプリカ全盛期に「普通のバイク」を出した意気込みが素晴らしい。ただしG感は結局よくわからない(笑)。

「I am PROSPEC」NSR250R

 2ストレーサーレプリカの真打ちと呼べるモデルこそ、1986年にデビューしたNSR250R。発売以降、人気、実力とも他を圧倒し、多くのライダーを惹き付けた。

 中でも1988年型NSR250R(MC18)「ハチハチNSR」は伝説的な存在。公称45psながら、それ以上と思えるパワーで歴代NSR最強の呼び声も高い。

 そんなハチハチに付けられたキャッチフレーズが「I am PROSPEC」。実は1987年型から採用されてきたが、ドーンと強調されたのはハチハチからだ。同じ時期のVFR400R(NC30)にも使われており、とにかくレースもイケる“プロ仕様”であることをストレートに訴えているのだろう。

初代から約1年でフルチェンジした1988年型NSR250R(MC18)のカタログ。「いま、私と出逢えるライダーは幸福である」などのコピーもあり、ホンダの自信が窺える
初代から約1年でフルチェンジした1988年型NSR250R(MC18)のカタログ。「いま、私と出逢えるライダーは幸福である」などのコピーもあり、ホンダの自信が窺える

 なお、1989年型では「PROSPEC EVOLUTION」、1990年型のMC21は「PROSPEC 90’s」と変化していく。

 筆者も乗った経験があるが、乾燥重量127kgに45psのハイパワーは、現在の250とは全く似ておらず、まさに公道レーサーそのもの。EV時代に復活はありえないが、過激でシビれる乗り物だった。

「夢は、つきない。ここから、始まる。」NR

 1970年代末から、ホンダは世界GPにおいて楕円ピストンの研究開発を進めた。

 これは、4ストロークで2ストローク車に対抗するための技術で、多気筒化と同様の出力を得られるのがメリットだ。楕円ピストンを採用したV型4気筒は1気筒あたり吸気4、排気4バルブで、通常のエンジンの2倍のバルブを装備。夢の技術だったが、開発は困難を極め、耐久性にも問題があった。

 レースでは、最高峰のWGP500に1979年から1982年まで4年間、楕円ピストンのNR500を送り込むも、結局ノーポイントで終わっている。

 しかし、このプロジェクトは「楕円ピストンの市販化」が目的の一つだった。750cc版の耐久レーサーを経て、1992年5月に発売されたのがNRである。

 ご存じの人も多いと思うが、価格は520万円。ホンダのフラッグシップとして位置付けられ、当時、最も高いバイクとして大きな話題になった。大部分のパーツが専用設計で、手造りのカーボン外装など贅沢な装備を満載。しかし発売直後にバブル崩壊が明確になり、限定300台ながら販売は芳しくなかった。

 そんなNRのカタログに踊るコピーが「夢は、つきない。ここから、始まる。」だった。

カタログは四つ折りで、全面を使ったマシン透視図も。ケース入りも豪華カタログも存在した。なお、雑誌広告ではよりシンプルに「果てしない夢。」と謳った<br>
カタログは四つ折りで、全面を使ったマシン透視図も。ケース入りも豪華カタログも存在した。なお、雑誌広告ではよりシンプルに「果てしない夢。」と謳った

 ホンダのスローガンはご存じ「The Power of Dreams」。このスローガンが明確になるのは2000年代だが、NR発売時からホンダは「夢」を会社としてアピールしていた。

 まさにホンダの夢と意地が詰まったバイクこそNR。もう少し早く発売できていれば、もっと事情が変わり、NRの次も“夢”見られたのかもしれない。

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