DCTとは、一連の変速操作を自動化するホンダ独自のAT(オートマチック・トランスミッション)機構のことです。2016年に、CRF1100Lアフリカツインへ初搭載し、その後、レブル1100やNC750Xなど、さまざまなモデルに展開。NT1100にもDCT仕様があり、ホーク11はMT車だけですが、基本は同じエンジンなので、DCT仕様を設定することは比較的に容易だといえます。
ちなみに、DCTでは、クラッチレバーだけでなく、シフトペダルによる変速操作も基本的には不要。ホンダE-クラッチが、機能オン時に変速操作を行う際も、シフトペダルのアップ/ダウンが必要な点とは異なります。
吉田氏によれば、これらモデルにも、もちろん「技術的にはホンダE-クラッチの搭載は可能」。でも、DCTがあるのに、「わざわざホンダE-クラッチ搭載車を作るのはどうか」といいます。つまり、あまりニーズがないのでは? といった感じでしょうか。
余談ですが、もし、市場のニーズが高まるなどで、これらモデルにもホンダE-クラッチが採用されるとすれば、吉田氏は「DCTに勝ったことになる」といいます。
「どうせ作るなら、(他メーカーだけでなく)同じホンダのシステムにも勝つ」。吉田氏は、こうした気概を持ってホンダE-クラッチの開発を進めたといいます。ホンダは、昔から、例えば「直4対V4」など、同じ社内の技術者同士も競い合うことで、テクノロジーや販売シェアを伸ばしてきたメーカー。まさに、ホンダ伝統の「技術屋魂」から生まれたのが、このシステムだということですね。
次の搭載車は1000ccのネイキッドモデル?
ともあれ、スーパースポーツや、ツアラーでもアフリカツイン系エンジン搭載車には、すぐにホンダE-クラッチが採用される可能性は低そうです。では、次期搭載車は、どんなモデルになる可能性があるのでしょうか?
これに対し、10年もの歳月をかけて開発を手掛け、まさにホンダE-クラッチの生みの親といえる先述の小野氏は、「あくまで個人的な要望」と断りながら、「1000ccのネイキッドに搭載したい」といいます。
理由は、まず、開発中のテスト車両にも、「トップエンドといえる1000ccのバイクを使った」こと。これは、大排気量バイクの方が、技術的にも難しいことで、あえて選んだのだそうです。
また、小野氏は、「個人的に、サーキットをガンガンに走るよりも、ツーリングを楽しむ方が好きなタイプ」なのだとか。そのため、街乗りからワインディング、高速道路など、幅広いシーンでより快適な走りができるモデル、なかでも「ネイキッドの魅力を向上させるために、ホンダE-クラッチを装着したい」といいます。
1000ccのネイキッドモデル……。となると、思い出すのは、CB650Rの兄貴分となるCB1000R。もしくは、ひょっとすると、2024年のモーターサイクルショー(大阪・東京・名古屋)で国内初披露され、近く発売も期待されるCB1000ホーネットという線もありそうです。
これらモデルは、あくまで、開発者である小野氏の希望なので、実際に投入があるのかは不明ですが、期待したいところではありますね。
デザインも進化したCB650RとCBR650R
ちなみに、新型CB650RやCBR650Rは、ホンダE-クラッチの搭載以外でも、スタイリングを刷新したことも大きな変更点のひとつ。初期型CBR650Rオーナーである筆者的には、このあたりも気になります。
デザインについて、CB650R/CBR650R開発責任者の筒井則吉氏は、「(両モデル共に)シリーズの統一性を持たせながら、よりスポーティなフォルムになることを目指した」といいます。
つまり、基本的には、CB650RはCB1000RやCB250R、CB125Rとのリレーションを実施。CBR650Rは、CBR1000RR-RやCBR600RR、CBR400RやCBR250RRといった、シリーズ内の他モデルとデザイン的なイメージを同じにしながらも、それぞれ独自のフォルムを持たせたことが特徴なのだそうです。
そのため、例えば、CB650Rは、1眼ヘッドライトのデザインをスラント形状に変更。また、シュラウドは、上質な金属質感としたコンパクトな面形状のデザインを採用しています。
一方、CBR650Rでは、2眼ヘッドライトやカウリングなどのデザインを変更。加えて、CB650RとCBR650Rのいずれも、テールカウルのデザインに、先端を細くした跳ね上げ形状を採用。これにより、両モデルのリアビューは、かなりシャープな雰囲気となっています。
特に、CB650Rは、ほかの排気量のCBモデルが、台形フォルムのリヤデザインを採用していますから、かなり独自性を持つ感じがします。また、筆者的には、CBR650Rのリアカウルはとっても好印象。できれば、愛車にも付けたいところですが、新型はシートレール後端の形状も変わっているため、簡単に付け替えることは難しそうで残念です。
ほかにも、新型のCB650RやCBR650Rには、より見やすくなった5インチフルカラーTFTメーターを搭載。スマートフォンとの連携で音楽再生やナビなどのアプリ操作を可能とするホンダロードシンク(Honda RoadSync)なども採用し、利便性もかなりアップしているのも注目点です。
なお、両モデルは、ホンダE-クラッチ未搭載のスタンダード仕様も用意。価格(税込み)は、CB650Rが、スタンダード車103万4000円、E-クラッチ搭載車108万9000円。CB650Rでは、スタンダード車103万4000円、E-クラッチ搭載車108万9000円です。
特に、両モデルのE-クラッチ搭載車が、今後、どのような売れ行きを見せるかは気になるところ。たくさん売れれば、きっとホンダとしても、ほかのモデルにも採用しやすくなるでしょうからね。
ともあれ、ホンダE-クラッチは、初心者からベテランまで、幅広いライダーがライディングをより楽しめる新機構だけに、できるだけ多くの人に、その乗り味を体感してもらいたいものです。
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/380267/
E-クラッチはCB650R/CBR650Rになぜ採用? 次の搭載車はCB1000ホーネット?【画像ギャラリー】
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