■LED普及前の行き先表示
ところで、LEDが普及する前の行き先表示はどうなっていたのだろうか。これはもちろん、各国各都市によって異なるので、参考程度とお考え頂ければと思う。
LEDが普及する前は、幕以外に金属やプラスチックのプレートによる表示もあった。金属プレートというと、筆者の地元で馴染みのある東急バスは、1970年代途中まで側面に幕を持たず、黄色い行き先表示板を掲げていた。
表示板の採用は、コストが理由という話をきいたことがあるが、他の事業者が表示幕を採用するなか、東急バスだけが板を掲げていたのが子供心に強く印象に残っていた。
■日本では珍しい「マグサイン式」
イタリアのミラノ市交通局は、行き先表示器に板を差し込み、それを表示するスタイルだった。この表示板は裏と表に起終点が表記されている。
終点に到着すると回転させるだけで折り返しの表示にできるというものだった。数字は黒と赤があり、赤い数字(と行き先)は、途中止まりで車庫へ向かう表示となっている。
日本でも過渡期には、マグサイン式が導入されたことがあったらしい。以前の筆者の記事で、京浜急行電鉄バス(当時)初のノンステップバス(三菱エアロスター)に、見たこともない表示装置がごく短期間だけ設置され、すぐに幕式へ交換されてしまったということをご紹介したが、読者からマグサイン式だったのではないか、という情報が寄せられた。
マグサイン式は、ドット状に配された色の付いた丸い球が、磁石の力でくるりと反転して文字を表示するというもので、何も表示されていない時は黒く、表示させると黄色い文字が浮かび上がるというものだった。
縦横ドットの数をあまり多くできないため、漢字のような細かい表示には不向きで、日本ではほとんど採用例がなかったのではないかと思うが、アルファベットと数字なら表記がしやすく、ヨーロッパや北米などでは比較的多くの都市で採用されていた。
しかし、劣化すると正しく表示されなくなるなど、信頼性に乏しい部分があり、LEDの普及で徐々に姿を消しつつある。
空港や駅で見かけた反転フラップ式(俗称で言うパタパタ表示)を採用した例もあったが、やはり普及はしなかった。逆にこうした試行錯誤の末にようやく、LEDという決定版が誕生したと言えるのかもしれない。
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