2010年代は北海道の鉄道が大きく変わる節目だった。なかでもJR日高本線は、不可抗力が元で大部分を失う結果へと繋がった悲運の路線だ。今回はそんな日高本線をディーゼルカーに代わって結び続けた、列車代行バスの時代を振り返ってみる。
文・写真:中山修一
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■絶景で知られた長〜いローカル線
JR日高本線は、北海道の海の玄関口を擁する苫小牧と、日高地方を太平洋沿い南東方向に進んだ、昆布やイチゴなどが特産品に並ぶ様似を結んでいた、全線非電化の鉄道線だ。
延長146.5kmと、終点から先に他のレールが続かない盲腸線としては屈指の長さを誇った。2011年頃のダイヤで上下12本ずつの列車が出ており、苫小牧〜様似の全区間を通しで走る列車は上り6本・下り5本あった。
29の駅を3時間ちょっとで繋いだ日高本線は、海岸線ギリギリに線路の敷かれた区間がいくつもあり、車窓から見える景色が非常に見事なことで知られ、日本有数の絶景路線に数えられるほどだった。
■突如やってきた曲がり角
1937年の全通から長きにわたって親しまれた日高本線に、あらぬ転機が訪れたのは2015年の1月だった。
苫小牧から約67.5km地点の、海岸線沿いの線路の盛土13m分が、同月7〜8日にかけて通過した低気圧による高波にさらわれ、流されてしまったのだ。
これにより30.5km地点の鵡川〜146.5km地点の様似までが不通となったが、始めのうちはレールまで影響は及ばず、車両の物理的な通過は可能だったため、1月27日に苫小牧〜鵡川間と、82.1km地点の静内〜様似間で運転を再開した。
ところがすぐに車両が通れなくほど盛土の流出が進行し、わずか1ヶ月ほどで静内〜様似間の運転が再び休止となった。その後9月12日に台風17号の影響で新たに線路が損壊。
2016年8月23日の台風9号、31日の台風10号でも海沿い区間の線路が次々と被害を受けた。復旧と将来的な災害対策の費用を試算したところ、100億円以上かかる見込みとなった。
日高本線は元々利用者が少ない赤字線の一つであり、運賃収入に対して工事費や維持費などの負担が大きくなりすぎるなど諸条件が重なり、こうして2016年12月21日に、復旧を断念する旨がJR北海道から発表された。