■なんとあさっての方向を目指して走る!?
各停留所に停車するうちに、最初誰もいなかった車内も空席列のほうが少ないほどまで利用者が増えた。市内中心部を出て松山インター口停留所を過ぎると、高速道路E11 松山自動車道に入る。
12kmほど進み、一旦川内インター停留所を経由すると、あとは高速を70kmほどノンストップでひた走る。
地図で見て今治・松山地方のコブの部分=高縄半島の付け根を突っ切ると、進行方向左側の遠方に瀬戸内海が見えてくる。
高縄半島から先の松山自動車道は、四国連山の麓をフチ取るように敷かれている。一旦香川方面を目指す形になるため、松山自動車道上では高知までの直接な距離はあまり縮まらない。
太平洋側の高知へ行くはずなのに、まったく反対側の瀬戸内海がしばらく続くというのも不思議な気分にさせられるものだ。
とはいえ、高速道路は海岸線から1〜5km以上離れているのと、標高60〜100mくらいの場所にあるため、全体的には山の上の展望台から海を眺めるような感じに近い。
■「フ」の字に描く経路で高知へ
出発点から1時間45分程度進み、愛媛県側の最後の経由地である三島川之江インター停留所を過ぎると、香川県境の約4km手前の川之江ジャンクションでE32 高知自動車道に移る。
香川方向に向かうものの香川県までは入らず、愛媛県→高知県の2県で完結しているのは、国鉄バスの「なんごく号」時代と変わらないわけだ。
いよいよ四国を縦断する形となるため、車窓の景色は左右ともに深い緑色へと変わる。主要トンネル19本、標高440m程度まで上がるヤマの高速道路だ。
車窓の奥の奥まで山々が現れるほか、高い場所に敷かれている道だけに麓までの高低差がまじまじと伝わる。進行方向左側の場合、どちらかといえば平面的パノラマ風景の前半に対して、後半は立体感にあふれる景観が楽しめる。
四国を縦断して高知へ至る鉄道路線にJR土讃線があるが、高知自動車道からは離れており、鉄道と高速道路は経路や景色的に全くの別物と考えて良さそうだ。
距離およそ50km、約1時間で高知自動車道を走り抜け、「なんごくエクスプレス」の旅も終盤に差し掛かる。高速を降りる少し前の標高が高めの区間から、遠くにちょっとだけ太平洋が拝める。
■あの赤い橋まで直行可能
高速道路から一般道に入ると、バスは10分ほどでJR高知駅の北口に置かれている高知駅バスターミナルに到着する。利用便での到着時刻は15:58だ。
松山から高知まで、「なんごくエクスプレス」に途中の休憩停車はない。バスには広めのトイレが付いており、そちら方面の対策はしっかり取られている。
一般的な高速バス車両が使われており、シートピッチ等に窮屈感もなく、リーズナブルな運賃にしては十分すぎるほど快適な乗りバス旅であった。
また、「なんごくエクスプレス」は駅前が終点ではなく、そのまま乗車するとさらに10分・約1km先の「はりまや橋」停留所まで行ける。
どこかの誰かが有り難くない表現を冠詞に使い始めた「例の観光名所」の一つに数えられてしまった、ホンモノのはりまや橋は停留所から170mくらい離れた場所にある。
現物のスケールをどう感じるかは見た人によって違うハズだが、噂だけ聞いてスルーしてしまうのも後々“がっかり”な展開を迎えるかもしれない。高知まで「なんごくエクスプレス」を使ったのなら、そのチャンスを逃す手はない!?
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