都営バスが運行する路線のなかで、とりわけローカルでイイ!とウワサの梅76系統。都営バス最高地点へ行くという触れ込みを併せて持つこの路線の実態を探るべく、現地へ乗りバスに赴いた。
文・写真:中山修一
■山奥まで来るそれはそれは貴重な都バス
梅76系統は、東京都を地図で見て左上のほうにある、多摩地区の青梅市内を走るバス路線で、裏宿町/青梅車庫/JR青梅駅と上成木(かみなりき)の間およそ15kmを結んでいる。
上成木停留所は、埼玉県の県境に程近い山の中に位置している。上成木から先へ行く他のバスはなく、青梅から向かうと「真の終着」と呼べる場所になる。
上成木から埼玉県側の最も近いバス停留所は、国際興業バスの「久林」にあたり、約2.5km離れている。峠道であるが、徒歩を挟んでの乗り継ぎもできなくはない。
■都バスいち“高所にある”停留所
東京都の特に端っこを攻める都営バス梅76系統。公式路線図を開くと、上成木停留所に「都営バス最高地点」との注釈がある。
これはどの方面で最高を示すのか……まず北が真上の地図に横線を引いてみよう。
横線よりも上に他の都バスの停留所がなければ、地図上での最高地点(いわゆる最北端)になる。結果はどうかと言えば、同じ梅76系統の経路で、上成木から2つ先の「高土戸(たかっと)」停留所のほうが上に来る。
では上成木の最高が意味するものとは? 素直に考えれば標高だろう。バス停が置かれている場所は、国土地理院の地図で標高303m程度だ。
この梅76系統、都営バスとしては、地図上で最高の位置に来る停留所を通りつつ、標高的な最高地点に置かれた停留所を目指す、二つの「最高」を持った路線というわけだ。
■バスの時刻に御用心!
住所で書くと青梅市成木7丁目のあたり。埼玉方面への県道/都道53号線と、成木集落へと続く都道202号線のY字分岐から約60m先に敷かれている、勾配のついた短絡路の中間に上成木停留所がある。
短絡路はバス専用で、折り返し場の役割を兼ねている。53号線から短絡路に入り202号線に抜ける流れになっていて、前進だけでY字路に戻れる。乗降レーン兼用のため、停留所は1つしかない。
山奥と言えど東京だし、なにせ都バスだから何も考えずに来られるだろう、と考えたくなるが、そこはローカル路線バスの例に漏れず本数が物凄く少ない。
上成木を出発する便は1日5本で、午前3本午後2本の配分。平日朝8:30の次が11:23発、その後になると18:25までプッツリ途切れる。
11時台に着くよう、青梅から乗ってきたバスで戻るトンボ返りの手法で行く場合、上成木での滞在時間はたったの3分。観光目的で利用するには工夫が要る路線だ。