10月24日日本で初めてとなる既存の商用水素ステーションを使っての液体水素充填実証試験が行われ成功した。液体水素の充填が一般的な水素ステーションで可能になれば、FCVには気体水素、水素エンジン車には液体水素と両方が使えることになり、水素エンジン車の開発と市販への後押しにもつながる!
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部
■サーキットを飛び出した水素エンジンの挑戦
脱炭素社会の主役は水素エネルギーと言われる。水素は燃焼してもCO2を発生せず、大きなエネルギーを生むからだ。太陽光や風力など再生可能エネルギーで水素を作り、水素をエネルギーにすることができれば、脱炭素社会に大きく近づくことになる。
日本は2050年までに温室効果ガス排出ゼロにする目標を掲げているが、水素エネルギーの普及は進んでいない。
水素インフラの問題や法律の整備が進んでいないことなどがその理由としてあげられるが、それを言い訳にするよりもとにかくやってみようと「意志ある情熱と行動」を謳い2021年に始まったのが水素エンジンカローラでのスーパー耐久シリーズへの参戦だ。
「水素は危ない」というイメージを覆すために豊田章男社長自らがステアリングを握り、2023年からは液体水素エンジン車両での参戦もはたしている。
愛知県刈谷市にある「イワタニ水素ステーション刈谷」は日本初のコンビニ併設型の水素ステーションだ。ここで液体水素エンジンカローラに液体水素を充填する実証実験が行われた。
【画像ギャラリー】サーキットを飛び出した水素エンジンカローラ!! 水素インフラもマルチパスウェイへ!(5枚)画像ギャラリー■水素ステーションの多くは液体水素で貯蔵している
我々が水素エネルギーを最も身近に感じられるのが、水素ステーションだろう。水素ステーションの多く(イワタニの場合約80%)は液体水素で貯蔵し、液体水素を水素ガスに変え、高圧でミライやクラウンなどのFCVに充填している。5㎏の水素ガスを充填するのに約3分というのが最新の急速充填だ。
なぜ水素ステーションの多くが液体水素で貯蔵しているかといえば、気体水素は大量輸送や大量貯蔵には向かないからだ。水素ガスは液体水素に比べると800倍の体積となるからだ。
トレーラーで運ぶ際も液体水素なら水素ガスに比べ最大12倍もの水素を一度に運べるなど、液体水素の貯蔵は大きなメリットがある。
トヨタのGR車両開発部の伊東直昭主査は「先日のジャパンモビリティショーで水素エンジンカローラを展示しましたが、液体水素は魅力的だが、水素ステーションをまた新たに作らなければならないのではないか? という質問を多くの方からいただきました。
今回の液体水素の実証実験では、既存の水素ステーションでFCVには水素ガス、水素エンジン車には液体水素がそれぞれ供給できることをお見せしたいと思いました。脱炭素にはクルマだけでなくインフラもマルチパスウェイという考え方です」と今回の実証実験の意味を教えてくれた。
補助金こそあるが整備するのに4億円ともいわれる水素ステーションを簡単に整備することは難しい。水素ステーションをいかに効率よく使い、水素エネルギーを普及させることができるか? が水素社会実現の課題となる。
そのためにはFCVだけでなく、水素エンジン車両の開発と市販化も待たれるところで、今回の実証実験はトヨタの決意の表れとみることもできる。ちなみに今回は実証実験ということでゆっくりと87%までの充填だったが、サーキットでは150Lタンクを1分で充填しているという。
今回の実証実験を視察に訪れた愛知県の大村秀章知事は「液体水素を既存の水素ステーションで充填できるようになれば、将来の液体水素自動車の普及に大いに期待ができるし、今回の実証実験の流れが全国に展開されていくことを期待したい」と述べた。
サーキットを飛び出した水素エンジンカローラの挑戦が大きなうねりになっていくことを期待したい。
【画像ギャラリー】サーキットを飛び出した水素エンジンカローラ!! 水素インフラもマルチパスウェイへ!(5枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方