独創的なホンダ流走りのHV!! 「i-DCD」はなぜ主役になれなかったのか

独創的なホンダ流走りのHV!! 「i-DCD」はなぜ主役になれなかったのか

 ハイブリッドといえばトヨタと双璧なのがホンダだ。ホンダとハイブリッドの歴史は古く、プリウス誕生とほぼ同時期の1999年にインサイトを発売。以後、独自のハイブリッドでトヨタに挑んできた。

 なかでも先代フィットや現在のフリード、ヴェゼルに採用される「i-DCD」。その名のとおり、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせたハイブリッドとあって、切れ味鋭く、ホンダらしい“走りのハイブリッド”として注目を集めた。

 しかし、このi-DCD、新型フィットでは採用されず、今後は新しいハイブリッドシステム「e:HEV」へと置き換えられていく流れとなっている。

 なぜホンダらしい走りのハイブリッドをやめてしまうのか。本稿ではその背景などを解説していくが、それにしてももったいない!

文:松田秀士/写真:編集部、HONDA

【画像ギャラリー】なぜやめてしまうんだ! ホンダらしい「走りにこだわるHV」i-DCDを写真で見る


■ホンダのHVで初めてモーター走行も可能にした「i-DCD」

7速DCT内にモーターを内蔵したというのがポイントだ。デュアルクラッチによりモーターの接続・切断が可能になり、同時に軽量・コンパクト化にもつながった

 ホンダのハイブリッドシステムは、初代インサイトに搭載された「IMA」システムに始まり、先代フィットの「i-DCD」、そして現行フィットやインサイトに搭載される「e:HEV」と大まかに3種類ある。

 このうちIMAはすでに姿を消し、i-DCDもe-HEVに統合されてゆくのは時間の問題とみられている。

 IMAは、フライホイールの役目も果たす薄型ローターに電動モーターを組み込んだシステムで、クランクシャフトを通じてエンジンとモーターは常に回転している。

 このためプリウスに代表されるトヨタTHS式のように、エンジンとセパレートしてモーターだけでの駆動はできなかった。

 そこで登場したのが先代フィットで初採用されたi-DCDだ。こちらはトランスミッションをDCT(デュアルクラッチ)とし、その1速ギア内にモーターを内蔵。

 これによってエンジンに関係なくモーターのみの走行も可能となり、さらにこの1つのモーターで駆動も発電(ブレーキ回生発電&エンジン発電)も行っている。

■フィットが採用するホンダ最新HVの特長は?

現行フリードではi-DCDが採用されている。次期型ではフィット同様e:HEVに置き換えられてしまうのか?(写真は、より走りが楽しめるモデューロX)

 そして、ホンダ最新のハイブリッドとなるe:HEVだ。こちらはエンジンで発電しモーターで駆動する。

 一見、日産のe-POWERに似ているが、大きな違いは100km/h前後の高速域ではモーターからエンジン駆動にスイッチされることだ。つまりe:HEVでは市街地走行など80km/h前後まではEVのようにモーター駆動のみで走行する。

 このためエンジンでの発電と駆動と2つのモーターが必要になる。このためインバーターも2つ必要になりコンパクト化が重要な技術革新となる。

 e:HEVのメリットは環境性能、つまり燃費が良いことだ。先日、インサイトの広報車を1週間程度お借りしたが、まるで燃費走行を意識しないドライブでも平均19.0km/L前後の燃費だった。高燃費に関わらず段付きのないスムーズな加速感は魅力的である。

 と、評論家らしく真面目に革新的な新技術を褒めておこう。

 しかし、我が家には先代フィットハイブリッドがある。先代は1モーターのi-DCDだ。それもより走りに振った「S」ホンダセンシングだ。

 そして、現在フリードハイブリッドの広報車を借りている。フリードに試乗して感じるのは高速道路での快適性だ。

 車格の割に静粛性が高く乗り心地も良好。トランスミッションは7速DCTだから高速でのクルージングに入ったら7速でエンジン回転数も2000rpmオーバーレベルで快適。

 さらに、ホンダセンシングはACC(先行車追従型クルーズコントロール)&LKA(レーンキープアシスト)のADAS(運転支援)も精度が高く、ACCはなんと135km/hまで設定が可能だから最近の120km/h規制高速道路もまったく問題ナシ。

 もちろん、その速度域でLKAも作動する。まぁ、このADAS機能については新しいe:HEVでも同じこと。

次ページは : ■「e:HEV」にはないi-DCDのホンダらしさとは?

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